心傷ついた受験生と妖精マキ、そんな二人がお互いを想い合い立ち直る妖精物語

ヒムネ

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夜空を観ながらさようなら

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「落ち着いたほうがいいっか、妖精ってホント役に立たないんだね」


 好戦的な言葉、相手を傷つけるには十分であろう。だが黒い妖精のマキは動揺せず、


「······そうね、ほんとに」


 暗くつぶやく。嫌われるつもりで言ったのに、このときふり向いた洸介こうすけは妖精が少し気になりだした。


「君もなにか訳ありそうだね」


「それは······」


「いや、なにも話さなくていいよ興味もないし知ったところで」


 言いたいことをいい立ち上がると、


「君の言うとおり


「え······うん、それがいいと思う」


 すると彼はテレビを台に戻してゲームをやり始め、マキにも「やる?」と訪ねてきたので黙ってコントローラーを受け取り一緒にやった。

 次の日も彼はゲームやウォーキング、サイクリングなどもしてその度にマキも付いていくという妙な関係になり、それは3日間つづいていく······。

「妖精って君の他にもいるの?」

「うん、いる」

「ふ~ん、ああ~話さなくていいよ興味ないから」

 洸介は部屋の窓から空を見上げ、

「3日前とは違っていい気持ちだ」

 同時にマキは彼の横顔を見るとなにか覚悟が決まったように感じた。

「よかった、立ちなおって」

「へ~、舌打ちする君でもそう思ってくれるんだね」

「······これでも、妖精だから」

「よく見るとマキってカワイイね」

「な、何言ってるのよ」

「アハハハッ、顔赤くなった」

「も、もうーっ!」

 洸介の性格は3日前とは違ってマキを褒めたりと別人のように明るくなった。
 そんな日に0時をこえて夜中の3時になる頃ベッドから起き上がる人の姿が、

 静かに、なるべく音を立てずに家を出る。


「――ふう」


 夜中ということもありほとんど車も通らない橋の上に立っていたのは洸介だった。


 橋の下を見るとたくさんの石、当たったら痛そうと怖くなるからと足を震わせ夜空を見上げると、


「もう、もういいんだ······」


 自分に言い聞かす。


「こんなに辛い思いをしても誰も助けてはくれない、時間はまわってる」


 でもそもそも落ちた自分が一番悪いんだ、受験くらいで落ちた自分が。


 どうせまた受けたって落ちるに決まってる、そうなったらまた怒られてイヤミを言われて責められるなんて、こんな人生はもう嫌なんだと最後の目を閉じた。


 世の中の見え方は人によって違う、


 洸介にとっての現し世は地獄にしか感じず。


 そして、


 彼は黙って橋の上からその身を捧げる。


『さようなら』


 ガシッ、


「ん? うわあぁぁぁあー!」


「うっ、くくぅう~っ」


「マ、マキッ!」


 飛び降りた洸介を下から支えたのはどこから現れたのかマキだった。


「ど、どうして」


「う、うぅう~」


 徐々に降下していったが、


「もう······だめ、キャアァァァッ」
「うわあぁぁぁっ」


 ボコンッ、2人は地面に落ちてマキは洸介の下敷きとなってしまう。

「マ、マキッ、大丈夫っ、マキッ!」

「う、痛ー」

 起き上がったマキの左まぶたは殴られたあとの様に膨れところどころ青あざができていた。


「よかったマキ······って、なんで邪魔したんだよっ、僕の今世紀最後の勇気を!」


「今世紀最後の勇気? 死のうとしたクセに笑わせないでよっ! あたしを褒めたりして、見えみえなのよあんたの嘘なんか」


 冷静になって邪魔されたことを怒こるはずが、いつもと違う彼女の言動に彼も頭にきて、


「妖精なんかに受験に落ちた僕の気持ちのなにがわかるんだよっ、ふざけんなよっ!」


「その気持ちをすべて捨てようとしたヤツが背負ってるみたいに言わないでっ!」


「なんだとーっ、このーっ!」


「いたっ、なにすんのよっ!」


 頬を引っ張り合い、妖精の羽を引っ張り、洸介の鼻を指で釣り上げたり、つねったりと夜中の人間と妖精の奇妙なケンカが5分ほど続いた······。


 互いに疲れ、腕を止めると2人で黙って河川敷の草むらに体育座りをする。


「はぁ~、僕はどうすればいいのかな」


 茂みにに石を投げる。


「······自分のいきたい道を、いきなさい」


「いきたい道って、そんな簡単に」


「簡単じゃないわよ、かんたんじゃないけど、その方が生きてることが少しは楽しくなるんじゃないかしら」


「楽しく······か」


「生きてると楽しいことばかりじゃないことはあるわ、だから自分を生きやすくすることは必要だと思う」


 勉強ばかりの必死な毎日で楽しいなんて微塵も考えたこともなかった洸介、ここで気になっていたことを聞くことにした。


「どうしてマキは、いつもそんな哀しい目をしてるんだ?」


「え······それは」自分に向く彼の目は純粋な若者の目、マキも目を閉じ静かに口を動かした。


「べつに言いたくなければ」


「自殺、しちゃったの、あたしが見えた子が」


「え、自、殺······」
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