~マザー·ガーディアン~

ヒムネ

文字の大きさ
9 / 63

   あの雪の日 【後編】

しおりを挟む
 しかし、待てどLINEは来ず、来たのはお昼を過ぎて午後一時の三時間後のことだった。
「もういいかも」
「分かったよ」
 とりあえずまた三十分かけ蝶々駅に着くが、
「電車動いてないけど······まさかっ!」
 嫌な予感がしてLINE電話をする。

「もしもしっ、隅野さん!」

「もしもし」声も息切れ、やっぱり、

「隅野さんっ、今どこっ!」

「あ、バレちゃった?」

「どこなのっ!」

「もう着くと思うんだけど――線路たどってるから」
 線路が見えているということは、自身も上りの線路方面に走った······。
 
 するとそこに大雪の中、フードを被りザクザクと雪を踏みしめて歩いていたのは、

「隅野さん?」

「道長君、エヘヘッ来ちゃった」

「どうしてこんな······」

「会いたいから」
 
 大雪で、しかも四時間もかけて――このあとすぐに、お店で温かい物を食べて自分の家でくつろいで貰った······。
 
 ――あの出来事は衝撃だった。大雪で辛かったはずなのに、手足も冷たく疲れてるはずだというのに彼女は笑顔で笑っていたんだ。
 その笑顔でオレは、改めて未来に彼女に惚れ直した······。

「だから未来は何がなんでもやるよ。それをオレは信じる」
「······フンッ」
「また来るよ」
 オレは言いたいことを伝えて社長室を後にする······。

「どんなに思っても通じない事だってあるのさ······」

「――未来さん、終了にしましょう」
「ふ~、わかったわ」
 こうして家に帰った後の夜、
「徹、あたし早めに眠るわ」
「どうして?」
「えっ······と、何となく~」
「うん、分かったよ、お休み」
「お休み~」

「未来、明日どうか無事でいてくれ」
 彼はシワを寄せ小声で彼女の無事を祈るのだった·······。

「――緊張していますか?」
「······少し」
 私は霞さんのスタッフとスカイカーで移動していた。それは会社に着いた時――。

「おはようございます」
「······今日の事だが、早速スカイカーに乗って、ここから静岡の下田公園に行ってもらう。そこでマザー・ガーディアンに乗り待機、以上だ」
 要件を言い社長室を出ようとした霞さんに、
「あの、今日は頑張りましょうね」
「······ああ」
 やっぱり振り向いてはくれなかった。それでも私には、今日のことを徹や愛に話してないから絶対に成功させないと······。
 
 色々と考えていると、静岡に着いた。空は雲に覆われ、風は少し強い。私はスマホで下田公園について調べてみた。
「下田公園は花の名所で、毎年六月にあじさい祭りがあるか~、来年くらい家族で行けたらな~」
 妄想していたら、
「未来さん、こっちです」
「あ、は~い」
 スタッフが十二人位いて、その内八人の方はマザー・ガーディアンの組み立て、あとの四人の方はパソコンをしている。そして霞さんの姿も、
「あ······う~ん」
 お義母さんと言えば怒られるし、でも何かないと、

「······しゃ、社長」
 私もテストパイロットということで社長と決めた。

「私は何をすればいいですか?」
「食事と薬」
「分かりました」
 時間も十一時過ぎで昼食と思うと、
「未来さん、お食事はこちらです」
 車内で食事を取りながらLINEが届いてないか確認して、薬を飲む······。
 十一時半に食事と薬を終えると、車内でスーツに着替えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

処理中です...