~マザー·ガーディアン~

ヒムネ

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        嘘

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「はい、お母さん」
 食堂のバイキングで食事を渡しても口を利いてくれない。無理もない、マザー·ガーディアンに乗っていた事をずっと黙ってたし、完全に私が悪い。何か最近嘘も多い気がする反省しないと······。
 私達は無口のまま食べ終わり、
「ねえお母さん、お母さんってばっ!」
 ダメだ、いくら言っても首を横に向く。もれなく苦戦中の時、

「未来~」

 おどおどしている愛が、
「もう終わった?」
「え、愛ちゃん?」
「おばさーん、お久しぶりですー」
「あなたもここで働いてたのっ?」
「はい、最近ですけど」
「そうなの~······ふんっ」
 私の方を見るとすぐそっぽを向く、
「お母さ~ん」
「え、何、未来もケンカしてるの?」
「あのね」
「この子があたしに嘘付いたのよ」
「えっ、お母さんにもっ?」

「にもって、ま~さ~かっ」

 愛の目が細くなって、

「私も未来に、普通の仕事って嘘つかれたんですよ~」

「ちょ、ちょっと愛~」
「も~、未来っ!」
 このあと愛の食事に付き合いながら、隣でお母さんにガミガミ怒られた。

「――このあと、おばさんはどうするの?」
「う~ん······」
「ねえ」
「何よ、未来っ」
 お母さんはまだ怒ってる。
「私もトレーニング室に行くんだけど······」
「何よ、早く言いなさい」
「この会社を見学してみてよ」
「えー、でも~」
 徹のお母さんとはケンカしてたけど、その姿が全てじゃない、この会社はAIとか、子供を預けたりとか、ロボットとかほかにも色々あるの。たしかにきつい事言われたりするけど、多分、お母さんがあたしのこと好きなように、徹のお母さんも徹が大好きなのだと説得を試みた。
「だからってー」
「ここでお母さんを納得させられると思ってないの、とにかく自分の目で確認してみて」

「偉いわっ、未来、見直したよ」

「······分かったわよ、見学してみるわ」
「じゃあ仕事終わったらオフィスでね、お母さん」
「うん」
 こうして一旦お母さんと別れた······。

 トレーニング室に戻ると、
「どうでしたか?」
「あ、チャイルド、何とか落ち着いたけど、まだまだこれからよ」
 大変だけど、自分で蒔いた種だから自業自得。
「お母さんとは、そんなに大変なんですか?」
「私はまだお母さんらしい事してないけど色々あると思うわ」
「そうですか」
 チャイルドは何かプライベートの事が気になり始めてるのか最近良く質問してくるような、そう思いながらも訓練をする······。

 その頃、保健室の生月先生に会ったお母さんは挨拶をして椅子に座り心配事を話していた。
「――そうですか~。未来さんは、無鉄砲な所ありますからね~」
「ホント困るわ、私に似て、フフッ」
「フフッ、そうだ、もし時間がありましたら三階に行ってみてはいかがですか?」
「はあ、何故?」
「三階はベビールームになっていて、赤ちゃんや幼いお子さんが沢山いますから見てみたらどうですか?」
「はあ」
 お母さんは、意外というか、とても自分と会った時の霞さんがやるような事じゃないと内心驚いていたのだった······。

 時間をもて余すくらいならと、三階のベビールームに行ってみる。
 エレベーターをすぐ降りた目の前に大部屋があり、
「ここね、失礼します」
 入ると、言われたと通り沢山の赤ちゃんや子供、先生達がいた。
「どうしました?」
「あの、生月先生に言われて来てみたの」
「あーそうですか」
「どうせ時間がありますので手伝いますよ」
「えーっ、ありがとうございます~」
「大変だものね~」
「はい~」
 お母さんは私が帰るまでベビールームでお世話をする事にした······。
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