〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ロング―

円卓の間

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  ――去年12の月も終わりに差し掛かる週、オブスーン大陸の南にはローズ城があり毎年それぞれの国の王と王女が集まる討議が行われていた。だが、今年は異例で12の椅子に全て王女という類を見ない出来事で始まろうとしていたのだ。


「我が国へ、お、お集まり頂きましてありがとうございます」


 緑髪のチュリン王女は緊張しながらも、


「少しわたくしのお話させて頂きますと、今年の10の月の半ば、私の母で王女のクロム·ピス·タリアが亡くなったため私が急遽王女になり日も浅く至らぬところもあると思いますが温かく見守って頂けたら幸いです」


 彼女の挨拶から始まった円卓の間による討議、それは本来国々による資源や交易または紛争による被害等を話し合い、次の年をより良い方向へと導くため、なのだが今回は皆張り詰めた空気だった。


「私から話そう」


 最初に声を出したのは雰囲気が勇ましいビスカ城の赤髪の王女ガーネット、


「皆も気に掛けているだろうが、今年はチュリン王女の母タリア前王女が亡くなり、去年はラバーグ城とムース城、一昨年には我が国の母とゴルドバ城、ニゲラニ城、ターキシム城と亡くなった。これは私の記憶では7年前から何故か起こり始めた」


 その出来事に皆彼女に注目しまた思い返す。


「これはもはや偶然では無い······」


 周りが次の言葉を待つ中1人の王女は、


「はっきり言ったらどうだ?」


 挑発するように言うのはニゲラニ城の赤紫髪のバイオレット王女だった。
 様子を見るガーネットにバイオレット王女が立ち上がり、


「そう、これは偶然などではない、新たな神を決める聖戦なのだ!」


 彼女の異様な信仰する雰囲気に場の空気が彼女に支配されていくような感覚に陥る者も。


「クイーン·ザ·セレブレイド、その神の称号を手にするためのな!」


 ロベリーやチュリンなどが詳しく知らないような顔をしていると、それを察してかべオレ城のオレンジ髪で最高齢オネリア王女は円卓のテーブルを見ながら、


「クイーン·ザ·セレブレイド、100年以上もの歴史を持つクイーン教から伝わり大陸の国を創ったとも言われ、聖書には最期の二人が決着をつけたとき夜空から天の光が降り注ぎ最後に生き残った女性は神の啓示を受け皆に争いを静めさせ長きに渡る戦いに終止符を打った、と書かれています」


 へ~、と言いそうな顔のチュリンに対し最後辺りの言葉にはロベリーにもうる覚えがあった。


「その通りだオネリア王女、これは」


「ちょっと待って下さい、話を飛躍しないで頂きたい」


 異論を唱えたのはターキシム城の青髪のレスタ王女。

「私の父と母も戦争で亡くなった。戦争が悪いのであって神様などとは関係ない。それに、そもそもその戦争を昔から仕掛けて来たのは貴女の国やビスカ、ゴルドバ城ではないか」


「フンッ」


「だがターキシムとてムース城と土地をめぐり争い、結果、両者の王女が亡くなったではないか」


 ガーネットが異論を投げかける。


「ガーネット、それは母が······」


「自国の事は谷に上げるとはな。我が国は代々戦争し勝利を収めてきた。私はそれを誇りに思っている」


 まるで戦争を肯定するかのようなバイオレット。


 互いが目を合わせ悪い空気になるもチュリンはどうすれば良いのか分からず困っていると、


「落ち着いて下さい」


 言葉にしたのはギトス城の、同じく最高齢の紫髪のシリカ王女は、


「過去をせめぎ合っても何にもなりません」


 ではどうするのだと問うガーネットに答えられないシリカ及びまだ言葉を交わさない王女達。


「戦うしかあるまい」


 危険な一言を口にしたのは余裕なのか笑みを浮かべているプレナ王女だった。


「私もクイーン·ザ·セレブレイドの事は熟知している。ここに全ての12の王女が座っているのも、もはや宿命」


「い、いや、それは······」


 プレナの意見に内心反対の気持ちが咄嗟に口から出てしまったロベリー。


「ロベリー王女、なにか」


「そ、その戦争による、解決は」


 恐る恐る言葉を口にする彼女に、


「持っとしっかりと御自分の意見をおっしゃられたらどうですか、ロベリー王女?」


 プレナの迫力に負けるロベリーは下を向き口を出せずにいると、


「プレナ王女、少し言葉をお優しく」


 チュリンがロベリーを庇うと今度は彼女に、


「では変わりにチュリン王女がお答えに?」


「い、いえ、そういうわけでは······」


 彼女も下を向いて畏縮してしまい、情けないと言わんばかりに溜息を付くプレナ。


わたくしは」


 それまで黙っていたデルサージ城の青緑髪のオメラ王女が口を開き皆の目線が向く、


「失礼ながら申し上げます。私は、争いの種になる物は好みません。例え神様であったとしても民を傷付ける様な行為そのものに私はとても賛同出来ません」


 プレナの目を見ても奥せずに答える。全く動じずピンと姿勢を正す彼女に年が同じ位とはとても思えないと心の中で助けられたロベリーとチュリンは感心した。


「私もオメラ王女に賛同するわ」


 ゴルドバ城の黄色髪のベルディが笑顔で賛同するとバイオレットが敵意を出して、


「貴様良くもおめおめと」


 矛先が向かれたベルディは目を閉じ、


「父のした事は謝っても謝りきれません。ですが私は父の様に争いを起こすような事は致しません」


「フンッ、どうだかな、ベルディ王女もその血を受継いでいる。信用なるかどうか」


 黙り込むベルディ、そんな怨念めいた空気の中で口を出そうとしない他2人にガーネットが、レンプル城のダスティピンク髪のベラに意見を問う。


「先程から黙っているベラ王女にもなにか意見はないか?」


 名指しされても無表情の彼女は、


「宗教に興味はない。だが争うのは私も賛同出来ない」


 最後にとムース城の水色髪のエマリン王女にも問う
が、場の空気をわきまえず1人顔も見ずに知らんぷりをする彼女は知れっと、


「どうでも良いですわ」


「なにっ!」


「早く終わらしてくれませんか? わたくしつまらなさ過ぎて死にそうですの」


 余りにも無礼で王女の貫禄の欠片1つないエマリンに流石のガーネットも「わるかったよ」と呆れ顔で話を切る。


 とにかくとオネリアは、


「我々が争わなければ戦争は起きません。それを国民も望んでいます」


 ふんっ、と素っ気無い態度のガーネット、バイオレット、プレナ王女達。
 熟年のオネリア、シリカ王女が平和を求めるも『聖戦こそが真の正義』と話は絡み合わずレスタ、ベルディも反対に加わる。
 一方で口を出せないロベリーにチュリン王女、黙って聞くオメラ、ベラ王女、興味が全くないエマリン王女と混沌とし話も平行線に終わってしまった。


 皆が望む平和という未来への蒼穹が、まるで妖雲に日は隠れ雷鳴と陰霖に変わっていく······。



 討議が終わったあと、大階段を降りながらロベリーは自分が特に発言出来なかった事で自身にはまだまだ王女の自覚が足りないと落ち込んでいた。


 すると大階段を降り終えた先に、


「終わったわね、ロベリー」


「チュリン」


 手を握り合う2人は幼い頃から親しい親友同士、ランク城とローズ城の未来のためにと2人の両親は積極的に交流を深め会わせていたのだ。


「話、纏まらなかったわね」


「ええ、私も緊張してしまって······意見も述べられなくて」


「私もよ、チュリン」


 反省する両者2人のもとに、


「2人ともお疲れ様です。大変でしたわね」


 にこやかに話すオネリア王女に一緒に挨拶を返す。


「何事も経験ですから、元気になさって」


 包み込むような優しさに自然と安心感を感じた。更にそこにシリカ王女も降りてきて挨拶を交わすと、


「オネリア、残念ながらまた争いが起こるかも知れませんね」


「シリカ······」


 親しく話す2人に聞くと彼女達もまた親友同士とのこと。


「2人を見てると若い頃の私達を思い出すわね、オネリア」


「ええ、私もそう思ってたわ」


 このあとも4人は会話が弾み円卓の間より短くも有意義な時間を過ごす。


 それと同時に新たな戦の予感も感じて······。


 ――この1週間後、ラバーグ城とランク城の戦争が起きる――。
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