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温かいラーメン
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「これは走ってる最中に転んでしまって、ドジッてしまいました」
スカートからも見える左の膝から出ている血、でもこのとき私は絆創膏を持っていなかったので仕方ありません。でも、良いことが置きました。それは、怪我を見た佐藤さんは諦めたようにその場から逃げなかったんです。なので私は佐藤さんに目の前まで歩きました。
「君~、どうして怪我をしてまで、オレを追いかけてきたの?」
「ラーメンも、ですけど~………元気にしてあげたいんです、東店長さんを」
「元気って……」
「私、ラーメン屋に入って少ししか知り合ってないけど、東店長さんの悲しい顔を見てたらなんか、この先の人生が勿体ないって、思ったんです」
下を向いた佐藤さんはも何やら考えているように感じました。
「そう、だけど……」
「どうして、お店を出たんですか?」
「そっ、それは……はぁ~っ」
私の膝を見て目を閉じてため息をした佐藤さんは、語ることにしたようです。
「オレは、前科持ちなんだよ」
「えっ、何か悪い事を?」
「そう、去年からオレは……」
佐藤さんはいつまでも働かず親の元で暮らしていたのを父親に怒られ、我慢が出来なくなって手を出してしまい暴力沙汰となり暴行罪として逮捕されたと言っていました。
「釈放されたあと何にもやる気が起きなかった……でも、残りの人生は短いってふと考えてたら、人の役に立ちたくなって……」
「それで東店長さんのお店で働いたんですね」
「ああ……でも、東店長やその奥さんは……とても」
「とても?」
「とても優しくてよ」
「はあ? 良いことじゃないですか」
すると佐藤さんの目から涙が流れていました。
「オレみたいなどうしようもない奴に……スゲー、優しく教えてくれて……こんな気持ち生まれて初めてで……オレがそこに居ちゃいけないんだと思っ……て」
「そんなこと、ないですよ佐藤さん」
「キミ」
「後光一花です」
「後光ちゃん」
「それに前科持ちって聞いて驚きましたが、私は今の佐藤さんと出会ってそんな事する人には見えませんでしたよ」
「でも、オレは……」
「私も両親に迷惑ばかりかけてきたと思います。でも、だからこそ残りの短い人生をめいいっぱい前向きに生きることが恩返しだと思います。それを東店長さんや奥さんだってきっと望んでます」
「……」
「だから、ラーメン屋さんに戻りましょ、佐藤さん……」
「――あんた、ホントに店開かないの」
「そんな気分じゃねぇんだよ」
「戻りました」
私が店の扉を開くとどうしたんだと言うようなお二方の顔、でもその顔が驚きと笑顔に変わっていきました。
「……店長」
「佐藤っ、おまえ……嬢ちゃんが連れてきたのかい」
「はい、説得してわかってくれました」
「店長……ごめんなさい」
お店に入るとすぐ佐藤さんは頭を下げました。
「……」
「オレ……東店長や奥さんの優しさが嬉しくて……だから自分の様な前科持ちにはここに居る資格が無いって勝手に思って出ていってしまって」
「……優しさが嬉しいから出ていっただと、そんな勝手な妄想で仕事をほったらかしにしやがって」
「すいませんっ、東店長っ!」
「謝ったからには、この二時間弱の店を畳んだ時間、みっちり働いてもらうぜ、佐藤っ!」
「店長……はい」
すると奥さんは黙ってお店の看板を出して、なんと、その場で再店したんです。厨房に向かう東店長と佐藤さん、それを良かったという笑みの奥さん。
「ありがとうね……名前はなんていうの?」
「奥さん、私は後光一花です」
「後光ちゃんにはなんてお礼を言ったりいいか……そうだっ、ラーメンあたしが奢ってあげるわよ」
「え、そんな」
「いいのよ、何がいい?」
「ありがとうございます奥さん……わたし醤油ラーメンと……あの、もう一つお願いがあるんです」
――午後も3時過ぎておやつの時間だったけどラーメン屋『源氏』に人が押し寄せていました。
「店長っ、こっちは醤油の最中ですー!」
「どっちかが終わりしだい味噌󠄀をやるぞっ!」
「はいっ!」
帰ってきた佐藤さんと東さんの厨房は大忙し。それを見守っていた店長の奥さんも注文で大変です。
「また注文が入ったのね、醤油二つっ、チャーシュー多めっ!」
「おうよっ!」
「またお客様よ後光ちゃん」
「はい、いらっしゃいませ~♪」
私はというと醤油ラーメンをおごってもらった後、佐藤さんや店長を見ていて温かい絆を感じてそんなお店に手伝いたくなってわがままなお願いをして1日ラーメン屋『源氏』で働かせてもらうことになったのです。
「その白衣、似合ってるわよ後光ちゃん」
「紗夜さんが貸してくれたおかげです」
このあと両親にスマホで夜まで働くのを伝えて、なんとお店の終わる11時まで頑張ってしまいました。
「――はあ~……バテました~」
「よく働いたわよ後光ちゃん!」
「ラーメン屋さんって、お客さんがたくさん来るとこんなに大変なんですね」
「まあこういう時は滅多にねえけどな、後光ちゃんのおかげだよ」
東店長さんも紗夜さんも、疲れているのに達成感を感じてるのかニッコリで私も笑顔で返しました。
「はい、後光ちゃん」
「佐藤さん、これ」
「今日の分の給料だよ」
「え、でも、そんなつもりじゃ……」
「気にすることはねえ、しっかり働いた者に給料を払うだけの話しだ」
「店長さん……はい、ありがとうございました」
「……ほんとうは、後光ちゃんが良ければ店で働いてほしいが、いろいろ行くんだろ?」
「すいません」
「謝ることはねえ、若いうちにたくさん経験つんでラーメン食いたくなったらうちの店来ればいい」
「はい、そう言ってくれて嬉しいです」
「後光ちゃ……いや、後光さん、君のおかげで大切な自分の場所に帰ってこれた。ありがとう……」
こうして私は家族に迎えに来てもらってラーメン屋『源氏』を出た。とても、とても温かく、いつまでもそこに居たくなるような優しい人たちがそこにはいました。またいつか、食べに行こう。
――残り24日。
スカートからも見える左の膝から出ている血、でもこのとき私は絆創膏を持っていなかったので仕方ありません。でも、良いことが置きました。それは、怪我を見た佐藤さんは諦めたようにその場から逃げなかったんです。なので私は佐藤さんに目の前まで歩きました。
「君~、どうして怪我をしてまで、オレを追いかけてきたの?」
「ラーメンも、ですけど~………元気にしてあげたいんです、東店長さんを」
「元気って……」
「私、ラーメン屋に入って少ししか知り合ってないけど、東店長さんの悲しい顔を見てたらなんか、この先の人生が勿体ないって、思ったんです」
下を向いた佐藤さんはも何やら考えているように感じました。
「そう、だけど……」
「どうして、お店を出たんですか?」
「そっ、それは……はぁ~っ」
私の膝を見て目を閉じてため息をした佐藤さんは、語ることにしたようです。
「オレは、前科持ちなんだよ」
「えっ、何か悪い事を?」
「そう、去年からオレは……」
佐藤さんはいつまでも働かず親の元で暮らしていたのを父親に怒られ、我慢が出来なくなって手を出してしまい暴力沙汰となり暴行罪として逮捕されたと言っていました。
「釈放されたあと何にもやる気が起きなかった……でも、残りの人生は短いってふと考えてたら、人の役に立ちたくなって……」
「それで東店長さんのお店で働いたんですね」
「ああ……でも、東店長やその奥さんは……とても」
「とても?」
「とても優しくてよ」
「はあ? 良いことじゃないですか」
すると佐藤さんの目から涙が流れていました。
「オレみたいなどうしようもない奴に……スゲー、優しく教えてくれて……こんな気持ち生まれて初めてで……オレがそこに居ちゃいけないんだと思っ……て」
「そんなこと、ないですよ佐藤さん」
「キミ」
「後光一花です」
「後光ちゃん」
「それに前科持ちって聞いて驚きましたが、私は今の佐藤さんと出会ってそんな事する人には見えませんでしたよ」
「でも、オレは……」
「私も両親に迷惑ばかりかけてきたと思います。でも、だからこそ残りの短い人生をめいいっぱい前向きに生きることが恩返しだと思います。それを東店長さんや奥さんだってきっと望んでます」
「……」
「だから、ラーメン屋さんに戻りましょ、佐藤さん……」
「――あんた、ホントに店開かないの」
「そんな気分じゃねぇんだよ」
「戻りました」
私が店の扉を開くとどうしたんだと言うようなお二方の顔、でもその顔が驚きと笑顔に変わっていきました。
「……店長」
「佐藤っ、おまえ……嬢ちゃんが連れてきたのかい」
「はい、説得してわかってくれました」
「店長……ごめんなさい」
お店に入るとすぐ佐藤さんは頭を下げました。
「……」
「オレ……東店長や奥さんの優しさが嬉しくて……だから自分の様な前科持ちにはここに居る資格が無いって勝手に思って出ていってしまって」
「……優しさが嬉しいから出ていっただと、そんな勝手な妄想で仕事をほったらかしにしやがって」
「すいませんっ、東店長っ!」
「謝ったからには、この二時間弱の店を畳んだ時間、みっちり働いてもらうぜ、佐藤っ!」
「店長……はい」
すると奥さんは黙ってお店の看板を出して、なんと、その場で再店したんです。厨房に向かう東店長と佐藤さん、それを良かったという笑みの奥さん。
「ありがとうね……名前はなんていうの?」
「奥さん、私は後光一花です」
「後光ちゃんにはなんてお礼を言ったりいいか……そうだっ、ラーメンあたしが奢ってあげるわよ」
「え、そんな」
「いいのよ、何がいい?」
「ありがとうございます奥さん……わたし醤油ラーメンと……あの、もう一つお願いがあるんです」
――午後も3時過ぎておやつの時間だったけどラーメン屋『源氏』に人が押し寄せていました。
「店長っ、こっちは醤油の最中ですー!」
「どっちかが終わりしだい味噌󠄀をやるぞっ!」
「はいっ!」
帰ってきた佐藤さんと東さんの厨房は大忙し。それを見守っていた店長の奥さんも注文で大変です。
「また注文が入ったのね、醤油二つっ、チャーシュー多めっ!」
「おうよっ!」
「またお客様よ後光ちゃん」
「はい、いらっしゃいませ~♪」
私はというと醤油ラーメンをおごってもらった後、佐藤さんや店長を見ていて温かい絆を感じてそんなお店に手伝いたくなってわがままなお願いをして1日ラーメン屋『源氏』で働かせてもらうことになったのです。
「その白衣、似合ってるわよ後光ちゃん」
「紗夜さんが貸してくれたおかげです」
このあと両親にスマホで夜まで働くのを伝えて、なんとお店の終わる11時まで頑張ってしまいました。
「――はあ~……バテました~」
「よく働いたわよ後光ちゃん!」
「ラーメン屋さんって、お客さんがたくさん来るとこんなに大変なんですね」
「まあこういう時は滅多にねえけどな、後光ちゃんのおかげだよ」
東店長さんも紗夜さんも、疲れているのに達成感を感じてるのかニッコリで私も笑顔で返しました。
「はい、後光ちゃん」
「佐藤さん、これ」
「今日の分の給料だよ」
「え、でも、そんなつもりじゃ……」
「気にすることはねえ、しっかり働いた者に給料を払うだけの話しだ」
「店長さん……はい、ありがとうございました」
「……ほんとうは、後光ちゃんが良ければ店で働いてほしいが、いろいろ行くんだろ?」
「すいません」
「謝ることはねえ、若いうちにたくさん経験つんでラーメン食いたくなったらうちの店来ればいい」
「はい、そう言ってくれて嬉しいです」
「後光ちゃ……いや、後光さん、君のおかげで大切な自分の場所に帰ってこれた。ありがとう……」
こうして私は家族に迎えに来てもらってラーメン屋『源氏』を出た。とても、とても温かく、いつまでもそこに居たくなるような優しい人たちがそこにはいました。またいつか、食べに行こう。
――残り24日。
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