6 / 53
二人の後輩
しおりを挟む
「――また、学校に来ちゃった」
私は終校していた朱雀高等学校に来ていました。実は昨日、メモワールで働いていたときに自宅に二人の女子高生が訪ねてきたとお母さんから聞きました……。
それは夜食の時。
「えっ、女子高生が? おかしいなあ、もう学校は終校なのに」
「そうなの、それでねどうやら朱雀高校の生徒に何か頼みたいことがあるっぽかったわ」
「なんて言われたの?」
「内容は分からないけど、もし一花が帰ったら今日自分達が来たことを伝えてほしいって、それで出来れば協力してほしいみたいよ……」
――協力なんて、私に何が出来るか分からないけど困っているなら助けてあげたい。そう思って朱雀高校の門に入ってみました。
「う~ん、殺風景ですね~」
そこには誰も居らず私一人だけ、何だか風と木々の音だけがして、寂しい気持ち。
とりあえず学校の中に入ってみようとしたら微かに音がしました。
その音は徐々に大きくなり……。
こっちに近づいて来ているような……。
しかし途中で音が消えて、私はなんだろうと周りを見ました。
「なんでしょう……あのーっ」
「あっ、居るっ!」
「ホントだっ、来てくれたっ!」
声が聞こえて階段の方から女子高生二人が安心したのか嬉しそうに降りてきました。
「あっ、あのっ、朱雀高の方ですよね」
「はい、朱雀高校3年1組の後光一花です」
ポニーテールの女の子に笑顔で自己紹介すると、もう一人のショートカットの女の子と顔を合わせて喜んでいました。
「自己紹介遅れました、私は1年1組の大桃彩吹です」
「同じく1年1組の木下恵です」
なんと二人は私の朱雀高校の後輩だったんです。なんていうか、年齢のせいでしょうかまだ中学生の感じがあるようでとても可愛らしい。
「うわ~、後光先輩おっとりしてカワイイ」
「うん、カワイイよね」
「カッ、カワイイって……二人とも、先輩をからかわないの、それでどうしたんですか?」
「後光先輩っ!」
「私達に力をかしてくださいっ!」
真剣な表情で大変なことなのでしょう。でもせっかくの後輩ちゃんが助けを求めているので私は迷うことなく頷きました。
1年の廊下、そこは私が2年前に通っていた廊下で懐かしい。学校の入り口を入って左へずっと進んでいくと1年1組の教室に着きました。私は扉の前でツバを飲んで落ち着いて開けます。
「失礼します」
「大桃さんに木下さんっ、もうここには来ないでって言ったでしょっ!」
「……3日ぶりですが、こんにちは羽嵐先生」
「あっ、あなたはっ、3年1組の後光さんっ……」
「やっぱり私と恵リンを怒ってる」
「あたしたちじゃダメみたいよ彩吹」
教室の先生用テーブルの椅子に座っているのは紅 羽嵐先生でした。
「2人に聞きました」
「……」
「学校が終校したあと、ずっとここに入るって」
「……私と恵リンが、終校の次の日に学校で二人で遊んでたら人影が見えて、一緒に行ってみたら羽嵐先生がいて……」
「あたしたちが、どうしてここにいるのか聞いたら……帰れって怒られて」
「……りなさい」
「羽嵐先生?」
「帰りなさいっ!!」
怒った羽嵐先生は扉を閉めてしまいました。今度はさらに鍵まで閉めてしまったのです。
「羽嵐先生どうして……」
私の知っている羽嵐先生は明るく元気で優しい先生でした。だからこんな事になって正直困惑しています。
「はぁ~、やっぱり後光先輩でもダメだったか~」
「どうしよう」
「う~ん」
こんな何の事情も知らずに追い返されて帰るのはもう無理です。関わってしまったからには羽嵐先生がとても心配になってしまいました。だから何か出来れば……。
「後光先輩、あたしたちどうすれば~……」
「恵リンさん……そうだっ、二人ともちょっと無理なお願いかもしれませんが頼みます」
――懐かしい教室。とはいってもまだ三日前なのよね……一人ひとり生徒はみな違って輝いて見えていたあの頃がもう懐かしく思えてしまう。教師になって最初は大変だったけど楽しかった。生徒を卒業させていくのはこの上ないあたしの心の栄養だった……。
「に~……後光先輩、どうですか」
「もうちょっとです……見えました!」
私が二人にお願いしたのは背中に乗って扉の上にある窓から羽嵐先生を覗くこと。
「先生……」
悲しそうな羽嵐先生の目、とても元気だったとは思えないほどのぼっーっとそこに居るのに居ないかのような無の表情。
「一体どうすれば……」
「う~っ……もう、ダメ、です、先輩」
「えっ、キャァァッ!」
大桃さんと木下さんが力尽きて、持ち上げられていた私もろともその場で崩れてしまいました。
「痛たたた~……二人ともごめんなさい」
「わ、私たちこそ」
「ごめんさ~い」
「はやく帰りなさいっ!!」
「羽嵐先生……あたしたち先生のために……」
「やっぱり、無理なのかも」
そんなことはありません。っと言いたかったれど、私もどうしてあげれば良いか、なにか羽嵐先生の気持ちを動かす何かがあれば……。
「もしかして……」
「後光先輩?」
「木下さん、大桃さん、用意してもらいたいものがあるので一度自宅に帰りましょう」
ポカンとする二人に事情を説明して羽嵐先生のためにも私たちは自宅に戻りました。
私は終校していた朱雀高等学校に来ていました。実は昨日、メモワールで働いていたときに自宅に二人の女子高生が訪ねてきたとお母さんから聞きました……。
それは夜食の時。
「えっ、女子高生が? おかしいなあ、もう学校は終校なのに」
「そうなの、それでねどうやら朱雀高校の生徒に何か頼みたいことがあるっぽかったわ」
「なんて言われたの?」
「内容は分からないけど、もし一花が帰ったら今日自分達が来たことを伝えてほしいって、それで出来れば協力してほしいみたいよ……」
――協力なんて、私に何が出来るか分からないけど困っているなら助けてあげたい。そう思って朱雀高校の門に入ってみました。
「う~ん、殺風景ですね~」
そこには誰も居らず私一人だけ、何だか風と木々の音だけがして、寂しい気持ち。
とりあえず学校の中に入ってみようとしたら微かに音がしました。
その音は徐々に大きくなり……。
こっちに近づいて来ているような……。
しかし途中で音が消えて、私はなんだろうと周りを見ました。
「なんでしょう……あのーっ」
「あっ、居るっ!」
「ホントだっ、来てくれたっ!」
声が聞こえて階段の方から女子高生二人が安心したのか嬉しそうに降りてきました。
「あっ、あのっ、朱雀高の方ですよね」
「はい、朱雀高校3年1組の後光一花です」
ポニーテールの女の子に笑顔で自己紹介すると、もう一人のショートカットの女の子と顔を合わせて喜んでいました。
「自己紹介遅れました、私は1年1組の大桃彩吹です」
「同じく1年1組の木下恵です」
なんと二人は私の朱雀高校の後輩だったんです。なんていうか、年齢のせいでしょうかまだ中学生の感じがあるようでとても可愛らしい。
「うわ~、後光先輩おっとりしてカワイイ」
「うん、カワイイよね」
「カッ、カワイイって……二人とも、先輩をからかわないの、それでどうしたんですか?」
「後光先輩っ!」
「私達に力をかしてくださいっ!」
真剣な表情で大変なことなのでしょう。でもせっかくの後輩ちゃんが助けを求めているので私は迷うことなく頷きました。
1年の廊下、そこは私が2年前に通っていた廊下で懐かしい。学校の入り口を入って左へずっと進んでいくと1年1組の教室に着きました。私は扉の前でツバを飲んで落ち着いて開けます。
「失礼します」
「大桃さんに木下さんっ、もうここには来ないでって言ったでしょっ!」
「……3日ぶりですが、こんにちは羽嵐先生」
「あっ、あなたはっ、3年1組の後光さんっ……」
「やっぱり私と恵リンを怒ってる」
「あたしたちじゃダメみたいよ彩吹」
教室の先生用テーブルの椅子に座っているのは紅 羽嵐先生でした。
「2人に聞きました」
「……」
「学校が終校したあと、ずっとここに入るって」
「……私と恵リンが、終校の次の日に学校で二人で遊んでたら人影が見えて、一緒に行ってみたら羽嵐先生がいて……」
「あたしたちが、どうしてここにいるのか聞いたら……帰れって怒られて」
「……りなさい」
「羽嵐先生?」
「帰りなさいっ!!」
怒った羽嵐先生は扉を閉めてしまいました。今度はさらに鍵まで閉めてしまったのです。
「羽嵐先生どうして……」
私の知っている羽嵐先生は明るく元気で優しい先生でした。だからこんな事になって正直困惑しています。
「はぁ~、やっぱり後光先輩でもダメだったか~」
「どうしよう」
「う~ん」
こんな何の事情も知らずに追い返されて帰るのはもう無理です。関わってしまったからには羽嵐先生がとても心配になってしまいました。だから何か出来れば……。
「後光先輩、あたしたちどうすれば~……」
「恵リンさん……そうだっ、二人ともちょっと無理なお願いかもしれませんが頼みます」
――懐かしい教室。とはいってもまだ三日前なのよね……一人ひとり生徒はみな違って輝いて見えていたあの頃がもう懐かしく思えてしまう。教師になって最初は大変だったけど楽しかった。生徒を卒業させていくのはこの上ないあたしの心の栄養だった……。
「に~……後光先輩、どうですか」
「もうちょっとです……見えました!」
私が二人にお願いしたのは背中に乗って扉の上にある窓から羽嵐先生を覗くこと。
「先生……」
悲しそうな羽嵐先生の目、とても元気だったとは思えないほどのぼっーっとそこに居るのに居ないかのような無の表情。
「一体どうすれば……」
「う~っ……もう、ダメ、です、先輩」
「えっ、キャァァッ!」
大桃さんと木下さんが力尽きて、持ち上げられていた私もろともその場で崩れてしまいました。
「痛たたた~……二人ともごめんなさい」
「わ、私たちこそ」
「ごめんさ~い」
「はやく帰りなさいっ!!」
「羽嵐先生……あたしたち先生のために……」
「やっぱり、無理なのかも」
そんなことはありません。っと言いたかったれど、私もどうしてあげれば良いか、なにか羽嵐先生の気持ちを動かす何かがあれば……。
「もしかして……」
「後光先輩?」
「木下さん、大桃さん、用意してもらいたいものがあるので一度自宅に帰りましょう」
ポカンとする二人に事情を説明して羽嵐先生のためにも私たちは自宅に戻りました。
0
あなたにおすすめの小説
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~
秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。
五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。
都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。
見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――!
久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――?
謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。
※カクヨムにも先行で投稿しています
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる