25日のスローライフ

ヒムネ

文字の大きさ
9 / 53

お礼の炒飯

しおりを挟む
「どうしてここに?」
「はい、実は~……昨日の後光先輩の、その、羽嵐先生を元気にした事が感動して……どんな生活をしてるのか興味が出てきて、付いていこうと思って8時くらいから待ってました」
「まあ、朝から待ってたなんて」
 今の時間は9時過ぎ、秋とはいえ早朝は冷えるのに待っていたなんて驚きです。
「そうだったんですか……う~ん」
「ダメですか、後光先輩」
 私は色々な経験や人達に会いたいと思って外に出ていることが大桃さんの為になるかは分かりませんが昨日一緒に羽嵐先生を助けた縁もあります。何より大桃さんは良い人です。
「いえ、では一緒に行きましょう」
「やったあ、ありがとうございます。早速ですが後光先輩、どこに向かうんですか?」
「はい、これからデパートに行こうと思います――」

 自宅から自転車で20分くらいの所に総合デパートがあって、買い物を始めます。
「後光先輩は、デパートによく来るんですか?」
「いえあまり、一ヶ月に2回くらいしか来ないですね」
「へ?」
「あったこれにしよう……いつも料理はお母さんがしてくれるから、だからお買い物もお母さんがするのが自然で」
「そうですね、私もしないから母さんが買い物してるし」
「大変ですよね」
「何がですか?」
「こうやって毎日まいにち、料理を考えて買い物をして」
「はい、そう思います」
「あっ……料理を決めていても予定が変わったりもして……はい」
「なんですか、あっ」
 たとえメニューを決めていても私が大桃さんに渡したのは三割引の長ねぎです。このように買い物とは突然の値引きが発生したら、きっとお母さんはメニューを変えようか迷うに違いありません。
「今日は長ねぎが安いんですかね」
「いえ、この商品だけでした。だから早いもの勝ちですね。さあ行きましょう」
「……こんなにたくさんの野菜を見てると頭が混乱します」
 このあともお母さんの大変さを思いながら私は卵など具材を買っていきました。荷物を持ってくれた大桃さんは自転車のカゴに入れて一緒に帰ります。
「ちょっと待っててね」
 卵が割れないように、買い物バッグの上の方に置いて気をつけて帰りました……。

「――お邪魔します」
「どうぞ大桃さん」
「後光先輩すいません、私まで」
「遠慮しないであがってください」
「はい」
 緊張している様子の大桃さんに私が笑顔を送ると、不安が解けたのか自然と頬があがってリビングのテーブル椅子に座ってもらいました。
「お家、自然な感じで綺麗だなあ~」
「なるべく家族でお掃除してるんです」
「えっ、お母さんだけじゃないの!?」
「はい、だってお母さん一人だけだと大変だからなるべくは」
「そうなんですね~……私は母さんまかせだ」
 お掃除話しをしていたら、罪悪感からかしょんぼりする大桃さんに私はご飯を作ってあげることにしました。
「そんなっ、悪いですよ」
 グ~ッ、とお腹はなんて正直なんでしょう。
「買い物を付き合ってくれたお礼ですよ」
「すいませ~ん」
「では、炒飯を作ります」
「はい」

 まず炊いてあるご飯を器に入れてそこに卵一つと切って細かくしたウインナーをご飯とかき混ぜます。
「先輩、炒飯じゃ?」
「そう、炒飯ですよ」
 今度はその器専用の蓋を被せてレンジで3分ほど待ちます。
「えっ、えっ、これで炒飯できるの?」
「フフッ」
 大桃さんが信じられないという目をしているのを見ていて楽しんでるうちにチンッと音がなりました。
「このあとに炒飯の元を入れてかき混ぜれば出来上がりです」
 かき混ぜる時は私はやっぱりステンレス製のスプーンが良いです。プラスチックだと混ぜている間に折れてしまいますので。
「器の上に今度はお皿を乗せてひっくり返せばっ……はい、出来上がりです」
「あ、ありがとうございます、いただきます」
 緊張しているのか恐るおそる食べようとしているのか、口に入れて味を確認している様な感じでこっちまで緊張してしまいます。
「あっ、炒飯だ。しかもカニチャーだっ!」
 安心したのかパクパク食べる大桃さん、安心した私もお腹が空いたので一緒に美味しくカニ炒飯を食べました。

「――ごちそうさまでした」
「ご馳走様でした」
「私、炒飯は炒めて作ることしか知らなかったな~」
「まあ正しくは炒めてはないんですけどね」
「でもこの器も珍しいですね、どこで買ったんですか?」
「フフッ、それはね100円ショップです」
「ええっ、後光先輩100均好きなんだ~」
「これは、台所の下のシンクキャビネットに入れてあったのを私が使ったんですけどね」
 そんな話に興味を持って質問したり、聞いてくれたりする大桃さんに何だか私は嬉しくなってきました。
「ところで後光先輩、このあとはもう外には出ないんですか?」
「フフッ、いいえ、外に行きます。付いてきますか?」
「はいっ、やったー!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。 五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。 都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。 見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――! 久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――? 謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。 ※カクヨムにも先行で投稿しています

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...