25日のスローライフ

ヒムネ

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俯く少年

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「――そんなことはありません。希望を持ってください」
「ありがとうお嬢ちゃん」
「いーえ」
 私は今日も朱雀高校のボランティアで並んでいる患者さんに話しかけていました。昨日で100人くらいと言っていたのが今日はその倍以上の人が来ているように見えます。一番先でカウセリングをしている緑先生には、もう話しかける余裕もなさそうです。
 昨日よりもボランティアの学生も参加していて私も朝から話しかけていますがやはり人手不足を感じます。
 そんなことを考えて話しを終えて患者さんの行列から離れた時でした。入り口から少年が行列を真剣でちょっと寂しそうな顔で見ていたので、話しかけてみました。
「あの~、どうしました」
「あっ、いえっ、すごいっ、行列だなって思って」
「そうですね、この方々は皆んな患者さんなんです」
「患者さんですか」
「はい、皆んな心に傷や不安を感じている方々なんですよ」
「地球が亡くなるせいですか、あっ、オレっ、宇津木拓夢うつぎたくむです」
「私は後光一花です、そうですね」
「やっぱり……」
 俯いて悲しそうな顔をしている宇津木くん一体どうしたのでしょうか。
「宇津木くん」
「オレじゃ……」
「宇津木くん……少しお話しましょうか」
「えっ……」
 何かに悩んでいるようなので、入り口から少し離れた体育館の角で彼と話してみることにしました。

「どうして、患者さんをみていたんですか?」
「それは……ただ、行列が見えたから」
 宇津木くんはまだ緊張している様子だったので別の話をすることにしました。
「行列といえば~……よく美味しいお店に出来ますね」
「え?」
「宇津木くんは美味しいお店の行列とかスマートフォンで見たりしないですか?」
「ゆ、有名なお店の動画は見たことあります……すごい、行列、だった」
「そうですよね~、私も行列に並ぶのは好きではないんですが、美味しそうなお菓子とかケーキとかあると並ぶか迷うんです」
「後光さんは、並ぶ派なんですか?」
「う~ん、並ぶ派ですね」
「えっ、すげっ、オレは無理です」
「やっぱり、美味しそうなお菓子やケーキとかだと並んでも食べたくなるんですよ~、宇津木くんはそうじゃないんですか?」
「オッ、オレはっ、ラーメンとかも味よりも量がいいし、ケーキとかお菓子もあまり~……」
「じゃあ美味しいラーメンで量が多かったら?」
「えっ、迷うな~、でも、やっぱ並びたくないかな~、へへ」
 少しの話をして宇津木くんの笑顔が見れました。緊張も最初の時よりも和らいだようで何よりです。
「話しやすく、なりましたか?」
「え、そうですね、はい!」
「じゃあどうして見ていたのか教えてください」
「実は……その……ここだけの話し、オレも、何かの役に立ちたいんです」
「えっ」
「でもっ、どうしても勇気が持てなくて、ただジッと見ていることしかできなくて……」
 私は言葉を失いました。でも、この驚きは嬉しさのおどろきです。
「じゃっ、じゃあっ、一緒に協力してくださいっ、お願いします!」
「えっ、でっ、でもオレなにも……」
「今は人手足りなくて、一人でも多くの手を借りたいところなんです」
「良いんですか?」
「はっ……」
 私はこの時、と言うところを自分で止めました。そして頭の中で良いことを思いついてしまったのでした。
「後光さん?」
「お手伝いよろしくお願いします」
「はい」
「あと、お友だちはいますか?」
「へっ?」

「――こっちで並んで、押さないでくださいね……ふぅ~、どんどん増えてくるわね」
「羽嵐先生!」
「後光さん、どうしたの?」
 必死な羽嵐先生も汗を描きながらも声を張って誘導していました。
「その子は?」
「はい、先ほど会った宇津木拓夢くんです」
「そう、こんにちは」
「こ、こんにちは」
「それで羽嵐先生、わたし少しの間ここを離れていいですか?」
「う~ん、今離れられるとキツイのが正直なところだけど、どうしたの?」
「ちょっと、人手を増やそうと考えてて……まだ確定はないんですが」
「そうか~、人手はほしいけど、後光さんも抜けられるとね~」
 たしかに先程よりも更に人が多くなっているのが分かります。それだけじゃなく、気がつけば患者の方が座ってボランティアの人と話してる姿も多くなってきています。
「やっぱりこのまま残って」
「後光さん」
「えっ!?」
「やっぱりいた!」
「まっ、茉莉さん!」
 困っている時に頼りになる方が来てくれました。
「あたしも連絡きて、今日来たんだけど」
「あなたは加藤さん!」
「お久しぶりです羽嵐先生」
「あのっ、茉莉さんっ、私の代わりをお願いします!」
「なんか分からないけど、後光さんにはお世話になってるし、良いわよ」
「ありがとう茉莉さん、行きましょう宇津木くん」
「はっ、はいっ!」
 善は急げ、です……。
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