25日のスローライフ

ヒムネ

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生きたい国民

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「――反対はんたーいっ!」
 私は今日、羽嵐先生達のボランティアを休ませてもらい総合デパート周辺にやって来ました。
「国民を見殺しにする気かぁぁーっ!!」
 それはネットで今日『地球に人を置き去り反対デモ』を見るためでした。
「国民を見殺しにする政治家を許すなぁーっ!!」
「許すなぁーっ!」
 国民を見捨てた政治家への怒りが伝わってきます。私は、政治に興味があるわけではないのですが、もっと他の人の意見や言葉を聞きたくなって
このデモならと思い来てみたんです。
 自転車を総合デパートに置いてデモ隊を後ろから歩いて付いて行くことにしたのですが、声からは空を越え宇宙に住む政治家に届けと言っているようでした。数分後、デモ隊の『国民を見殺しにする政治を許すな』の看板が付いた車で止まり一人のお爺さんがデモ隊車の上に立ちマイクを握りました。
「わしには、娘も、孫もいます。嫁は先に行っちまったが娘には、生まれたての女の子の赤ちゃんがいるんです」
「赤ちゃん……」
「普通だったら、『娘が大きくなるまで生きる』とか『一緒に遊びたい』とか『皆んなで育てよう』とか言っているはずなのに……どうしてっ、
娘や孫が残り8日で死ななきゃならないんだっ! わしは老い先短いからいいっ、でもっ……でもせめて娘と孫だけは、宇宙に上げてもらえないでしょうかっ、お願いしますよ、税金は国民のお金でしょ? 国民の血税ですよね? それがなんで政治家の宇宙船に使われて、娘や孫に使われないんだっ、ふざけるなよぉっ!!」
「「そうだっ、そうだーっ!」」
 お爺さんの顔は怒りに満ちていてもすぐ、悲しそうな顔になりました。その表情を見ると何故か眉尻を下げて下を向いてしまいました。きっと怒りや憎しみよりも、娘や孫を助けてほしいという気持ちが大きいに違いありません。私には娘や孫は居ないけど、自分より若い子が亡くなると考えると、何とも言えない哀しい気分になります。

 次は、女性の方にマイクを交代、握りました。するとすぐに大きな怒りの声を上げました。
「わたしはぁーっ、地球と共に死ぬことを了承してませぇぇーんっ、なのにどーしてっ、公式の政府のサイトでっ、あたし達は地球との最後を選んだなんて……ウソつくなぁぁぁっ、そんなこと言ってねぇぇぇっ、んな暇あったらっ、さっさと宇宙船の一つや二つ、飛ばせやぁぁぁーっ!!」
 そんなサイトがあることは私は知りませんでしたのですぐに確認。すると『地球と共に最後を選んだ人達』という数年前にインタビューをしたと思われる画像がありました。
「みなさんも一緒にっ、とーばーせっ!」
「「とーばーせっ」」
「とーばーせっ!」
「「とーばーせっ」」
 女性の方は鼓舞するように促すと皆んなは掛け声を合わせて『飛ばせ』コールになりました。自己主張と自分の意思を語る勇気はすごいと思いました。それと、死んでたまるかの様な闘志のようなものも……。

 このあとも私はジッと他の方の意見を黙って見守って聞いていました。主張はそれぞれだけど、やっぱり最後は皆んな生きたい、未来がほしいと言っています。私は何となく自転車を引いて歩きたくなりました。それは頭の中を整理したかったから。
「……わたしは……わたしは、死にたいわけじゃ……ない……はず……」
 なにか、主張していた人の言葉を思い出すと胸がギュッとなります……。

「――ただいま」
「一花、おかえり……どうだった?」
「わからない」
「あら」
「だから、一人で部屋で考えてみようと思うの」
「そっ、わかったわ」
 今日のデモはネットに動画があったのでそれを見たりして、どうして自分の中のこの何とも言えない気持ちがあるのか答えを探すように見直しました。そうしているうちに机に寝そべって夢の中へ行ってしまった私でした……。

「おはよう……あれ、お母さん?」
 お母さんの姿のないリビング。どうして部屋やトイレを探すも見当たりません。
「どうして……」
 気になって外を覗けば人の気配がありませんでした。変だと思い外に出ても誰もいません……。

「どーひへ……はっ!」
 どうやら夢だったようです。ついでに袖にゆだれが、ため息をついてお母さんのいるリビングに向かいました。すると、準備して疲れたのかテーブルにうつ伏せのお母さん。
「お母さん、大丈夫?」
「……一花、ゴメンね、ぐすっ」
「えっ、お母さんなにが?」
「あなたを救えなくて、うっうっ」
 お母さんも、地球最後の病エイジに掛かってしまいました。

 残りは7日……。
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