3 / 25
聞いた人
嫌な話
しおりを挟む
今日の授業が全て終わった。なんとか睡魔との戦いに負けることなく乗り切ることができた私。字が汚くてノートが所々読めないのは我慢しよう。
帰りに直美と一緒にコンビニに向かう。もちろん約束通りプリンとシュークリームを買ってもらうため。持って帰るか悩んだけど、一緒にイートインで食べることにした。
「本当に二つ選んだよこの子」
「だって直美がいいって言ったじゃん」
「そうだけど、少しは遠慮しなさいよ。しかも二つとも高いやつを選ぶなんて」
「へへー自分じゃ買えないなあと思って」
「こいつ。まあいいけど。私にも少し分けなさいよ」
「いいよー、どうぞどうぞ」
お菓子を食べていると近所の私立高校の制服を着た女の子が二人、隣のテーブルに座った。二人ともお菓子を持っているのに何故か深刻そうな顔をしている。どっちか失恋でもしたのかな。別に盗み聞きをするつもりはなかったけれど、二人の会話が聞こえてきた。
「ねえ、やっぱあれおかしくない? だってゆりが事故にあった時、事故を見た人はゆりの後ろには誰もいなかったって言ってるんだよ?」
「だから何かに躓いたんじゃないの?」
「信号待ちで躓くとかそんな事ありえる? 赤信号で突然飛び出すなんてまずないし、私にはゆりが何もないとこで躓くなんて考えられないんだけど」
「そうかな?」
「そうだって、きっとこれもパトロ……」
「もうやめよ? この話をするの。なんだかこの話をしてると怖くなっちゃう」
「ごめん……」
「考えすぎだって。さっきゆりの意識が戻ったって連絡があったんだし、明日お見舞いに行った時に聞いてみようよ」
「そ、そうね」
「なんか食欲なくなっちゃった。お菓子やっぱり持って帰ってもいい?」
「あ、いいよ。もう今日は帰る?」
「……そうね、そうしよう」
二人は結局お菓子を食べることなくコンビニを出て行った。
今の会話、本当だろうか? パトロール男ってただの都市伝説じゃないの? 気になって直美を見てみると顔が固まっている。私のプリンを食べようとしていたみたいだけど、プラスチックスプーンですくったプリンが口に入れる手前で止まっている。
「直美?」
「……え? 何? あっ、ごめん」
直美ははっとして慌ててプリンを口に入れた。こんな直美を今まで見たことがない。
「直美、大丈夫? なんか変だよ?」
「え、うん大丈夫。大丈夫。でも、ただの都市伝説だと思ってたからちょっと気になって……」
そう言って直美は俯いてしまった。
「そうだよね、今の会話がもし本当だったらと思うと……」
「そう、今まで怖い話って自分には関係ないと思ってたから怖くなかったの」
「え、直美にも怖いことあるんだ」
私はふと思ったことをそのまま口に出してしまった。
「そりゃあるわよ。えりこは私をなんだと思ってるの?」
直美は呆れた顔で私を見つめた。でもほんの少し口が笑っている。
「だって、直美は怖いの平気だと思ってたから」
私はずっとそう思ってた。だから直美が怖いって言い出すから本気でびっくりしたんだ。
「まあね。でも今回のは本当にダメかも。ごめんね、えりこに話すんじゃなかった」
直美が申し訳なさそうに言った。
「大丈夫! 私はお菓子を買ってもらったから」
私はそう言って胸を張った。
「え、なにそれウケるんですけど」
私は本当のことを言っただけなのに笑われてしまった。笑われたのは不本意だったけれど、直美の顔に少し明るさが戻ったのでほっとした。私たちはそのあと今日の学校の話を五分ほどして家に帰ることにした。
帰りに直美と一緒にコンビニに向かう。もちろん約束通りプリンとシュークリームを買ってもらうため。持って帰るか悩んだけど、一緒にイートインで食べることにした。
「本当に二つ選んだよこの子」
「だって直美がいいって言ったじゃん」
「そうだけど、少しは遠慮しなさいよ。しかも二つとも高いやつを選ぶなんて」
「へへー自分じゃ買えないなあと思って」
「こいつ。まあいいけど。私にも少し分けなさいよ」
「いいよー、どうぞどうぞ」
お菓子を食べていると近所の私立高校の制服を着た女の子が二人、隣のテーブルに座った。二人ともお菓子を持っているのに何故か深刻そうな顔をしている。どっちか失恋でもしたのかな。別に盗み聞きをするつもりはなかったけれど、二人の会話が聞こえてきた。
「ねえ、やっぱあれおかしくない? だってゆりが事故にあった時、事故を見た人はゆりの後ろには誰もいなかったって言ってるんだよ?」
「だから何かに躓いたんじゃないの?」
「信号待ちで躓くとかそんな事ありえる? 赤信号で突然飛び出すなんてまずないし、私にはゆりが何もないとこで躓くなんて考えられないんだけど」
「そうかな?」
「そうだって、きっとこれもパトロ……」
「もうやめよ? この話をするの。なんだかこの話をしてると怖くなっちゃう」
「ごめん……」
「考えすぎだって。さっきゆりの意識が戻ったって連絡があったんだし、明日お見舞いに行った時に聞いてみようよ」
「そ、そうね」
「なんか食欲なくなっちゃった。お菓子やっぱり持って帰ってもいい?」
「あ、いいよ。もう今日は帰る?」
「……そうね、そうしよう」
二人は結局お菓子を食べることなくコンビニを出て行った。
今の会話、本当だろうか? パトロール男ってただの都市伝説じゃないの? 気になって直美を見てみると顔が固まっている。私のプリンを食べようとしていたみたいだけど、プラスチックスプーンですくったプリンが口に入れる手前で止まっている。
「直美?」
「……え? 何? あっ、ごめん」
直美ははっとして慌ててプリンを口に入れた。こんな直美を今まで見たことがない。
「直美、大丈夫? なんか変だよ?」
「え、うん大丈夫。大丈夫。でも、ただの都市伝説だと思ってたからちょっと気になって……」
そう言って直美は俯いてしまった。
「そうだよね、今の会話がもし本当だったらと思うと……」
「そう、今まで怖い話って自分には関係ないと思ってたから怖くなかったの」
「え、直美にも怖いことあるんだ」
私はふと思ったことをそのまま口に出してしまった。
「そりゃあるわよ。えりこは私をなんだと思ってるの?」
直美は呆れた顔で私を見つめた。でもほんの少し口が笑っている。
「だって、直美は怖いの平気だと思ってたから」
私はずっとそう思ってた。だから直美が怖いって言い出すから本気でびっくりしたんだ。
「まあね。でも今回のは本当にダメかも。ごめんね、えりこに話すんじゃなかった」
直美が申し訳なさそうに言った。
「大丈夫! 私はお菓子を買ってもらったから」
私はそう言って胸を張った。
「え、なにそれウケるんですけど」
私は本当のことを言っただけなのに笑われてしまった。笑われたのは不本意だったけれど、直美の顔に少し明るさが戻ったのでほっとした。私たちはそのあと今日の学校の話を五分ほどして家に帰ることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/15:『ちいさなむし』の章を追加。2025/12/22の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/14:『さむいしゃわー』の章を追加。2025/12/21の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる