都市伝説ガ ウマレマシタ

鞠目

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聞いた人

嫌な話

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 今日の授業が全て終わった。なんとか睡魔との戦いに負けることなく乗り切ることができた私。字が汚くてノートが所々読めないのは我慢しよう。
 帰りに直美と一緒にコンビニに向かう。もちろん約束通りプリンとシュークリームを買ってもらうため。持って帰るか悩んだけど、一緒にイートインで食べることにした。
「本当に二つ選んだよこの子」
「だって直美がいいって言ったじゃん」
「そうだけど、少しは遠慮しなさいよ。しかも二つとも高いやつを選ぶなんて」
「へへー自分じゃ買えないなあと思って」
「こいつ。まあいいけど。私にも少し分けなさいよ」
「いいよー、どうぞどうぞ」
 お菓子を食べていると近所の私立高校の制服を着た女の子が二人、隣のテーブルに座った。二人ともお菓子を持っているのに何故か深刻そうな顔をしている。どっちか失恋でもしたのかな。別に盗み聞きをするつもりはなかったけれど、二人の会話が聞こえてきた。

「ねえ、やっぱあれおかしくない? だってゆりが事故にあった時、事故を見た人はゆりの後ろには誰もいなかったって言ってるんだよ?」
「だから何かに躓いたんじゃないの?」
「信号待ちで躓くとかそんな事ありえる? 赤信号で突然飛び出すなんてまずないし、私にはゆりが何もないとこで躓くなんて考えられないんだけど」
「そうかな?」
「そうだって、きっとこれもパトロ……」
「もうやめよ? この話をするの。なんだかこの話をしてると怖くなっちゃう」
「ごめん……」
「考えすぎだって。さっきゆりの意識が戻ったって連絡があったんだし、明日お見舞いに行った時に聞いてみようよ」
「そ、そうね」
「なんか食欲なくなっちゃった。お菓子やっぱり持って帰ってもいい?」
「あ、いいよ。もう今日は帰る?」
「……そうね、そうしよう」
 二人は結局お菓子を食べることなくコンビニを出て行った。

 今の会話、本当だろうか? パトロール男ってただの都市伝説じゃないの? 気になって直美を見てみると顔が固まっている。私のプリンを食べようとしていたみたいだけど、プラスチックスプーンですくったプリンが口に入れる手前で止まっている。
「直美?」
「……え? 何? あっ、ごめん」
 直美ははっとして慌ててプリンを口に入れた。こんな直美を今まで見たことがない。
「直美、大丈夫? なんか変だよ?」
「え、うん大丈夫。大丈夫。でも、ただの都市伝説だと思ってたからちょっと気になって……」
 そう言って直美は俯いてしまった。
「そうだよね、今の会話がもし本当だったらと思うと……」
「そう、今まで怖い話って自分には関係ないと思ってたから怖くなかったの」
「え、直美にも怖いことあるんだ」
 私はふと思ったことをそのまま口に出してしまった。
「そりゃあるわよ。えりこは私をなんだと思ってるの?」
 直美は呆れた顔で私を見つめた。でもほんの少し口が笑っている。
「だって、直美は怖いの平気だと思ってたから」
 私はずっとそう思ってた。だから直美が怖いって言い出すから本気でびっくりしたんだ。
「まあね。でも今回のは本当にダメかも。ごめんね、えりこに話すんじゃなかった」
 直美が申し訳なさそうに言った。
「大丈夫! 私はお菓子を買ってもらったから」
 私はそう言って胸を張った。
「え、なにそれウケるんですけど」
 私は本当のことを言っただけなのに笑われてしまった。笑われたのは不本意だったけれど、直美の顔に少し明るさが戻ったのでほっとした。私たちはそのあと今日の学校の話を五分ほどして家に帰ることにした。
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