都市伝説ガ ウマレマシタ

鞠目

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拡散した人

来ない返事

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 だるい授業が全て終わり、私とえりこはコンビニに直行した。えりこのプリンとシュークリーム、私の分のエクレアを買ってイートインコーナーで食べていると、女の子が二人隣のテーブルにやってきた。見覚えのある制服だった。たぶんゆりちゃん先輩と同じ制服だ。
 何気なく聞いていた二人の会話の中に聞き覚えのある名前が出てきた。私は咄嗟にプリンを食べる手を止めた。今、ゆりって言った? えっ嘘、ゆりちゃん先輩が怪我? 意識が戻った? 何それ?
 会話の内容を考えるとどう考えてもパトロール男に襲われたようにしか思えない。私は顔から血の気が引くのがわかった。

「……直美?」
「……え? なに? ……あっ、ごめん」
 私ははっとして口の前で止まっていたプリンを食べた。やばい、私、自分が思っている以上に態度に出ちゃってる。いつの間にか都市伝説が本当のことにしか思えなくなっていた。
 その後えりこと何を話したのかあまり覚えていない。話をしていても頭の中は別の事をずっと考えていた。ゆりちゃん先輩に連絡したい。でも、もしこれで後ろから突き飛ばされたとか言われたらどうしよう。確認するのが怖い。
 悩んだ結果連絡するのをやめた。明後日のバイトで聞けばいいや。きっと人違いだと思う。よく考えたらゆりって名前は珍しくない。バイトに行けばゆりちゃん先輩はいつも通り笑っているだろう。きっとそうだ。そうに決まってる。私はそう信じることにした。

 家に帰っても何もやる気になれなかった。だらだらとスマホを見て過ごして、お母さんに晩ご飯ができたと呼ばれて、食べて、自分の部屋に戻ってまたスマホを見て、お風呂に入って、またスマホを見て。気がつけば二十二時を過ぎていた。
 早めに寝ようかとも思ったけど、明日提出の数学の宿題があることを思い出した。ああ面倒くさい。サボろうかな……でも前回忘れて行って怒られたな……頑張るか。そんなことを思いながらベッドから起き上がり勉強机の前に座る。
 ノートを開いたものの宿題の範囲をメモし忘れていた。再びサボりたくなったけど、なんとか踏みとどまってえりこにメッセージを送って聞いた。たぶんそろそろ塾が終わって帰る頃だろう。ちょっと待っていたら返事が来た。今コンビニにいるらしい。
 こんな時間にコンビニって、怖がりとか言いながらえりこ全然怖がってないじゃん。お菓子奢ってなんだか損した気分。今、私の方が怖がっている。そんなことを考えていたらまたえりこからメッセージが届いた。

『聞いて聞いて! 歩きスマホがダメなら立ち止まればいいんじゃん! 気づいた私すごくない?』

 思わず笑ってしまった。いやいや、それで助かるならみんなそうしてるって。えりこはたまにすごく天然なことを言う。そこがまたかわいい。神様は不公平だ。私にもこんなかわいさがあったらなと思う。
 えりこからのメッセージを見て怖がっていた自分が馬鹿らしくなった。私の考え過ぎみたい。えりこを見習わないと。明日は私がお菓子を買ってもらおうかな。理由は何がいいかな……
 私はそんなことを考えながら宿題の範囲の連絡が来るのを待った。とりあえずえりこの回避法に対してなんて返事をしよう。いい返事が浮かばずなかなか返信ができなかった。
 しばらく考えた結果『何そのアイデア! えりこ神かよ!』と送った。これならきっと喜んでくれる気がする。喜んでいるところが簡単に想像できる。なんて返事来るかな、楽しみだな。てか、宿題の範囲早く教えてほしい。



 この日、えりこから再び連絡が来ることはなかった。
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