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第二章 襲い掛かる魔の手
第二十三話 招集
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月が暗黒の宙に浮いている。
青白く大きな月だ。
限りなく満月に近い。
それはひっそりと息づきながら夜の闇を支配している。
薄暗い屋敷内。
色白で優美な指先に包まれたワイングラス。
その中で血のような葡萄酒が波打っている。
「……そうか。そういうことが起きたのだな。まあ、いつ起きてもおかしくはないことではあったが」
フラウムから報告を受けたセフィロスは、表情一つ変えなかった。
薄暗いライトの光はその秀麗な顔に陰影をつけている。
「……申し訳ございません。ことを荒立てるなと言われていたのに。ボクとしたことが……あの娘がまさかボクの邪魔をしてくるとは思わなくて……」
赤い唇からこぼれる言葉の端がわずかに震えていた。
いつも浮かべている笑顔はなく、顔色の青白さがいつもより増している。
「ふむ。しかし、お前のお陰で少し分かったことがある。失策ではない」
「分かったことですか……?」
美少年は赤銅色の頭をひょこりと傾げた。
瑞々しい煌めきを持つ瞳。
その中にある金紅石が一際輝いた。
「ルフスを手に入れるにはあの娘が障害となっているということだ」
「やはり、あの小娘が……あの時さっさと片付けておけば良かったかしら?」
色っぽい声と共に、黒装束の妖艶な美女が姿を表した。
青く深い色彩を持つエメラルドグリーンの瞳。
色白でつるりとした陶器のような肌。
ぽってりとして艷やかな赤い唇。
腰まで緩やかに波打つキャラメル色の髪。
彼女はたわわに実った二つの膨らみの下で、程よくくびれた腰に手をあてている。
膝上十五センチのスカートの裾からすらりと伸びた色白の太腿が眩しい。
「いや。片付けるというより利用すべきだ」
「つまり餌にするということ?」
ウィリディスの問いに、美青年は口元に薄っすら笑みを浮かべる。
「ああ。どうやらあの娘、やはりただの人間ではなさそうだ。どうやら以前に比べ少し厄介な存在になりつつあるような気がしてならぬ」
「どういうところが厄介なの?」
「フラウムの“金雷刃”をその身に受けて死ななかったところだ」
「え……あの小娘を坊やの金雷刃で仕留められなかったということ?」
ウィリディスは息を飲んだ。
フラウムの“金雷刃”はただ物を貫き通す武器ではない。魂をその身から引き剥がし、内蔵をも深く傷付ける刃だ。仮に止血が上手く出来ても魂が身に戻れず、生命を落とす。だから、金雷刃の攻撃を受けた人間で死を免れたものは一人もいなかった。
しかし、ただ一人の例外が茉莉だった。
彼女は今問題なく生きている。
「……まさか」
フラウムがぴくりと勘付いた。
それを受けてセフィロスは大きく頷く。
長いまつ毛を瞬かせつつ、話しを続けた。
深く濃い群青色の中に咲く矢車菊が静かに煌めきを帯びている。
「ああ。そのまさかだ。あの芍薬姫が復活して彼女に接触してきた可能性が高い」
芍薬姫は吸血鬼、特にランカスター族の吸血鬼にとって天敵だ。かつて彼らの一族の者が一人、彼女の血によって生命を落としている。しかし、その時彼女自身肉体を失い、表舞台から数百年もの間姿を消していたのも紛れもない事実だ。
「あの芍薬姫が奴らの味方についたら、我々はひとたまりもないですね……」
やや怖気付いたのか、表情を固くする美少年。
それを尻目に緑のキャッツアイを持つ美女はため息を一つついた。
「ただ、現在彼女は昔と異なり実体がないわよ。坊や。地上において彼女一人では何も出来ない筈」
「だから奴らに接触してきた訳ですか」
「要は、彼女の力を発現させないようにすれば良いんじゃないかしら? 多分色々な方法がある筈よ」
ウィリディスの指摘に対し、プラチナブロンドの美青年は真珠色の犬歯を覗かせる。
「うむ。私は私で対応策を考えている。……彼等がそろそろ到着する頃合いだ」
言い終わるか否か位のタイミングでドアをノックする音が聞こえた。
雑用をこなす部下の一人が顔を覗かせ、セフィロスを見かけて声をかける。
「セフィロス様。ロセウス様とウィオラ様がお見えになりました」
「うむ。通せ」
続いて野太い声とやや低い女の声が響いてきた。
「呼んだか? セフィロス」
「私もお呼びかしら? セフィロス」
二人は部屋の中に入って来た。
声の主は背まで伸ばしたうねりのあるアッシュブロンドを持つ男と、黒いショートボブの女だった。男は黒装束の襟元を広げ胸元を大きく寛げており、やや発達した腹筋や大胸筋をも惜しげなく晒している。その瞳はややたれ気味でシェリー酒のような色合いだ。顎には無精髭を生やしており、ワイルドな風貌である。一方女は色白な小顔とスレンダーな肢体を黒のスタンドカラースーツに包んでおり、露出が殆どない。
ルックスだけを言えば非常に対象的な二人である。共に唇から牙が見える。
女のそれはぬらぬらと血に濡れていた。道中“狩り”をしてきたのだろうか。赤い舌をちろりとだし、それをきれいに舐め取った。ごくりと嚥下する音が部屋中に響き渡る。
「ああ。ロセウス。ウィオラ。二人共久し振りだな。息災だったか?」
「ええ、お陰様で」
ウィオラはウインクしながら答えた。
長いまつ毛が艶々している。
フラウムは二人の客人に愛想良く笑顔を振りまいた。
「ロセウス兄さん、ウィオラ姐さん、お久し振りです」
「あらぁフラウムじゃないの。久し振り。元気にしてた?」
「おお。ちびか。元気そうだな」
二人共まるで弟に再開したような雰囲気である。先程までやや緊張していた空気が若干緩んだ。ロセウスはウィリディスのつま先からつんと上を向いた双丘、頭へと舐めるように眺め、口笛を吹く。
「相変わらず色っぽいなウィリディス。今度一晩どうだ?」
ロセウスのこれは挨拶言葉のようなものなので、ウィリディスはまともに相手をしない。
「折角だけど生憎、忙しくてあなたの肉体美を堪能する暇はないわ」
傍にいたウィオラも一緒に乗っかっる。
「ロセウス。彼女は普段セフィロスのサポートで忙しいんだから、からかうのはあんまりだわ。ねぇウィリディス。因みに私は筋肉に興味ないから端から狙い下げね」
二人の美女に総スカンを食らったロセウスはやれやれとセフィロスに話しをふった。
「ところでセフィロス要件は? 俺達が呼ばれると言うことは、余程のことか? あんたが手に負えぬとは珍しいな」
ロセウスは両腕を曲げ、ダブルバイセップス・フロントのポージングをしながら訊ねた。袖から露出している上腕二頭筋がさり気なく強調されている。ちらっとみえる腹筋をつつきながらフラウムが「凄いですねぇ」と傍で喜んでいる。それを横目で見て満更でもない顔をした。
「ああ。その通りだ。今の私達だけでは厳しい事情があるのでな。是非ともお前達の力を借りたい。それで招集した」
「……内容次第だな」
ロセウスは両腕を前に出し、モスト・マスキュラーのポージングをしながらセフィロスが話し出すのを待っている。
「我々は今人間どもの手に落ちたルフスを取り戻そうとしている」
「あのルフスが? たかが人間風情に?」
ロセウスは無精ひげの生えた顎を指先で掻いた。彼が考え事をしている際の癖である。
「事情はわたくしから簡潔に説明するわ」
ウィリディスが今までの仔細を簡潔に説明した。
復活したルフスはまだ吸血鬼としては不完全であること。
彼は何故か人間の高校生と常に行動を共にし、彼らから離れようとしないこと。
その人間の仲間に“芍薬姫”が接触し、彼等が“芍薬姫の力”を手に入れた可能性が高く、油断出来なくなったこと。
二人は頷きながらそれらの話しを聞いていた。
「ロセウス。お前は奴らの“力”を抑え込んで欲しい。ウィオラ。お前は芍薬神の加護にある娘を捕らえよ。方法はお前達に一任する」
「ほう……それはそれは。興味深い。この俺に抑え込めないものは今のところはないからな。ついでに破壊してしまうかもしれんが」
ロセウスはオレンジ、イエロー、ピンク、ブラウン、とまるで芳香なシェリー酒のような美しいグラデーションを持つ瞳を輝かせた。
「私はその生意気そうな小娘をかっさらえば良い訳ね。お安い御用だわ。ただ傷一つ付けずに提供出来るか保証は出来ないけど」
ウィオラは紫色のアイシャドウを引いた一重の切れ長の目元を細めた。左目の目元に泣きぼくろが一つある。
長いまつ毛に彩られた葡萄の果汁を思わせる色鮮やかな紫色の瞳に怪しい光が灯る。
紫色のルージュに舌舐めずりをする音が響いた。
「お前達がことを運びやすいよう、私も一手打っておく。それから合図するから暫く待機しておいて欲しい」
「「了解」」
ウィリディスは二人の客人を部屋に案内するよう雑用係の部下に指示した。
案内に従った二人が部屋からあっという間に姿を消す。
それを見届けた後、彼女はぱちんと手を鳴らした。
「さあて! 人段落したら何かお腹空いてきた。ねぇ坊や、わたくしと一緒に“狩り”に行かない?」
「そうですね。お供します。ちょっと安心したからか、ボクもお腹が空きました」
美女と美少年は二匹の蝙蝠へと姿を変え、あっという間に窓から外に飛び出して行った。大きな月に羽ばたく二匹が点のように見える。
屋敷内に一人残ったセフィロスはワイングラスを傾け、中身をゆっくりと喉に流し込んだ。
静かに一つため息をつく。
まるで美女の血を全て吸い付くしたように満足げな表情をしている。
その様子を月は窓の外から静かに見ていた。
青白く大きな月だ。
限りなく満月に近い。
それはひっそりと息づきながら夜の闇を支配している。
薄暗い屋敷内。
色白で優美な指先に包まれたワイングラス。
その中で血のような葡萄酒が波打っている。
「……そうか。そういうことが起きたのだな。まあ、いつ起きてもおかしくはないことではあったが」
フラウムから報告を受けたセフィロスは、表情一つ変えなかった。
薄暗いライトの光はその秀麗な顔に陰影をつけている。
「……申し訳ございません。ことを荒立てるなと言われていたのに。ボクとしたことが……あの娘がまさかボクの邪魔をしてくるとは思わなくて……」
赤い唇からこぼれる言葉の端がわずかに震えていた。
いつも浮かべている笑顔はなく、顔色の青白さがいつもより増している。
「ふむ。しかし、お前のお陰で少し分かったことがある。失策ではない」
「分かったことですか……?」
美少年は赤銅色の頭をひょこりと傾げた。
瑞々しい煌めきを持つ瞳。
その中にある金紅石が一際輝いた。
「ルフスを手に入れるにはあの娘が障害となっているということだ」
「やはり、あの小娘が……あの時さっさと片付けておけば良かったかしら?」
色っぽい声と共に、黒装束の妖艶な美女が姿を表した。
青く深い色彩を持つエメラルドグリーンの瞳。
色白でつるりとした陶器のような肌。
ぽってりとして艷やかな赤い唇。
腰まで緩やかに波打つキャラメル色の髪。
彼女はたわわに実った二つの膨らみの下で、程よくくびれた腰に手をあてている。
膝上十五センチのスカートの裾からすらりと伸びた色白の太腿が眩しい。
「いや。片付けるというより利用すべきだ」
「つまり餌にするということ?」
ウィリディスの問いに、美青年は口元に薄っすら笑みを浮かべる。
「ああ。どうやらあの娘、やはりただの人間ではなさそうだ。どうやら以前に比べ少し厄介な存在になりつつあるような気がしてならぬ」
「どういうところが厄介なの?」
「フラウムの“金雷刃”をその身に受けて死ななかったところだ」
「え……あの小娘を坊やの金雷刃で仕留められなかったということ?」
ウィリディスは息を飲んだ。
フラウムの“金雷刃”はただ物を貫き通す武器ではない。魂をその身から引き剥がし、内蔵をも深く傷付ける刃だ。仮に止血が上手く出来ても魂が身に戻れず、生命を落とす。だから、金雷刃の攻撃を受けた人間で死を免れたものは一人もいなかった。
しかし、ただ一人の例外が茉莉だった。
彼女は今問題なく生きている。
「……まさか」
フラウムがぴくりと勘付いた。
それを受けてセフィロスは大きく頷く。
長いまつ毛を瞬かせつつ、話しを続けた。
深く濃い群青色の中に咲く矢車菊が静かに煌めきを帯びている。
「ああ。そのまさかだ。あの芍薬姫が復活して彼女に接触してきた可能性が高い」
芍薬姫は吸血鬼、特にランカスター族の吸血鬼にとって天敵だ。かつて彼らの一族の者が一人、彼女の血によって生命を落としている。しかし、その時彼女自身肉体を失い、表舞台から数百年もの間姿を消していたのも紛れもない事実だ。
「あの芍薬姫が奴らの味方についたら、我々はひとたまりもないですね……」
やや怖気付いたのか、表情を固くする美少年。
それを尻目に緑のキャッツアイを持つ美女はため息を一つついた。
「ただ、現在彼女は昔と異なり実体がないわよ。坊や。地上において彼女一人では何も出来ない筈」
「だから奴らに接触してきた訳ですか」
「要は、彼女の力を発現させないようにすれば良いんじゃないかしら? 多分色々な方法がある筈よ」
ウィリディスの指摘に対し、プラチナブロンドの美青年は真珠色の犬歯を覗かせる。
「うむ。私は私で対応策を考えている。……彼等がそろそろ到着する頃合いだ」
言い終わるか否か位のタイミングでドアをノックする音が聞こえた。
雑用をこなす部下の一人が顔を覗かせ、セフィロスを見かけて声をかける。
「セフィロス様。ロセウス様とウィオラ様がお見えになりました」
「うむ。通せ」
続いて野太い声とやや低い女の声が響いてきた。
「呼んだか? セフィロス」
「私もお呼びかしら? セフィロス」
二人は部屋の中に入って来た。
声の主は背まで伸ばしたうねりのあるアッシュブロンドを持つ男と、黒いショートボブの女だった。男は黒装束の襟元を広げ胸元を大きく寛げており、やや発達した腹筋や大胸筋をも惜しげなく晒している。その瞳はややたれ気味でシェリー酒のような色合いだ。顎には無精髭を生やしており、ワイルドな風貌である。一方女は色白な小顔とスレンダーな肢体を黒のスタンドカラースーツに包んでおり、露出が殆どない。
ルックスだけを言えば非常に対象的な二人である。共に唇から牙が見える。
女のそれはぬらぬらと血に濡れていた。道中“狩り”をしてきたのだろうか。赤い舌をちろりとだし、それをきれいに舐め取った。ごくりと嚥下する音が部屋中に響き渡る。
「ああ。ロセウス。ウィオラ。二人共久し振りだな。息災だったか?」
「ええ、お陰様で」
ウィオラはウインクしながら答えた。
長いまつ毛が艶々している。
フラウムは二人の客人に愛想良く笑顔を振りまいた。
「ロセウス兄さん、ウィオラ姐さん、お久し振りです」
「あらぁフラウムじゃないの。久し振り。元気にしてた?」
「おお。ちびか。元気そうだな」
二人共まるで弟に再開したような雰囲気である。先程までやや緊張していた空気が若干緩んだ。ロセウスはウィリディスのつま先からつんと上を向いた双丘、頭へと舐めるように眺め、口笛を吹く。
「相変わらず色っぽいなウィリディス。今度一晩どうだ?」
ロセウスのこれは挨拶言葉のようなものなので、ウィリディスはまともに相手をしない。
「折角だけど生憎、忙しくてあなたの肉体美を堪能する暇はないわ」
傍にいたウィオラも一緒に乗っかっる。
「ロセウス。彼女は普段セフィロスのサポートで忙しいんだから、からかうのはあんまりだわ。ねぇウィリディス。因みに私は筋肉に興味ないから端から狙い下げね」
二人の美女に総スカンを食らったロセウスはやれやれとセフィロスに話しをふった。
「ところでセフィロス要件は? 俺達が呼ばれると言うことは、余程のことか? あんたが手に負えぬとは珍しいな」
ロセウスは両腕を曲げ、ダブルバイセップス・フロントのポージングをしながら訊ねた。袖から露出している上腕二頭筋がさり気なく強調されている。ちらっとみえる腹筋をつつきながらフラウムが「凄いですねぇ」と傍で喜んでいる。それを横目で見て満更でもない顔をした。
「ああ。その通りだ。今の私達だけでは厳しい事情があるのでな。是非ともお前達の力を借りたい。それで招集した」
「……内容次第だな」
ロセウスは両腕を前に出し、モスト・マスキュラーのポージングをしながらセフィロスが話し出すのを待っている。
「我々は今人間どもの手に落ちたルフスを取り戻そうとしている」
「あのルフスが? たかが人間風情に?」
ロセウスは無精ひげの生えた顎を指先で掻いた。彼が考え事をしている際の癖である。
「事情はわたくしから簡潔に説明するわ」
ウィリディスが今までの仔細を簡潔に説明した。
復活したルフスはまだ吸血鬼としては不完全であること。
彼は何故か人間の高校生と常に行動を共にし、彼らから離れようとしないこと。
その人間の仲間に“芍薬姫”が接触し、彼等が“芍薬姫の力”を手に入れた可能性が高く、油断出来なくなったこと。
二人は頷きながらそれらの話しを聞いていた。
「ロセウス。お前は奴らの“力”を抑え込んで欲しい。ウィオラ。お前は芍薬神の加護にある娘を捕らえよ。方法はお前達に一任する」
「ほう……それはそれは。興味深い。この俺に抑え込めないものは今のところはないからな。ついでに破壊してしまうかもしれんが」
ロセウスはオレンジ、イエロー、ピンク、ブラウン、とまるで芳香なシェリー酒のような美しいグラデーションを持つ瞳を輝かせた。
「私はその生意気そうな小娘をかっさらえば良い訳ね。お安い御用だわ。ただ傷一つ付けずに提供出来るか保証は出来ないけど」
ウィオラは紫色のアイシャドウを引いた一重の切れ長の目元を細めた。左目の目元に泣きぼくろが一つある。
長いまつ毛に彩られた葡萄の果汁を思わせる色鮮やかな紫色の瞳に怪しい光が灯る。
紫色のルージュに舌舐めずりをする音が響いた。
「お前達がことを運びやすいよう、私も一手打っておく。それから合図するから暫く待機しておいて欲しい」
「「了解」」
ウィリディスは二人の客人を部屋に案内するよう雑用係の部下に指示した。
案内に従った二人が部屋からあっという間に姿を消す。
それを見届けた後、彼女はぱちんと手を鳴らした。
「さあて! 人段落したら何かお腹空いてきた。ねぇ坊や、わたくしと一緒に“狩り”に行かない?」
「そうですね。お供します。ちょっと安心したからか、ボクもお腹が空きました」
美女と美少年は二匹の蝙蝠へと姿を変え、あっという間に窓から外に飛び出して行った。大きな月に羽ばたく二匹が点のように見える。
屋敷内に一人残ったセフィロスはワイングラスを傾け、中身をゆっくりと喉に流し込んだ。
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