77 / 78
番外編
第七話 文化祭の出し物 その二
そして、待ちに待った文化祭当日。
綾南高校の文化祭は十月第一土曜日で、開催時間は朝九時から夕方四時までの七時間だ。
茉莉と静藍は午前中が当番で、午後から自由に校内を回れるというシフトにされていた。宣言通り優美によって、彼らの公式デートのお膳立てがなされている。
彼女達のクラスの教室は生徒達の手により、一日限定の臨時喫茶店へと変貌していた。窓にはカーテン代わりに白い大きな布を重ね付けして垂らしてあった。黒板には「ジェンダーレス喫茶」と文字がカラフルなチョークで彩られており、その上からはリボンや切り紙を使った飾りがぶら下がっている状態だ。机も二人席、複数席とあちこち配置してある。
その中を長い黒髪を後ろに一つに結び、真っ白なシャツに黒のネクタイを付け、黒の燕尾服に身を包んだ一人の少女が、忙しく動き回っていた。上着のポケットには懐中時計のチェーンが見え隠れしている。
燕尾服姿の茉莉だった。今日は日中は十月にしては九月上旬の温度でやや高く、スーツ姿は正直ちょっと暑い。
他には胸元に赤い薔薇を飾り、上下真っ白なスーツに身を包んだホスト風女子が接客していたり、着流しに晒しを巻き、ちょんまげのカツラを被った浪人モドキ女子が後片付けしたりしている。その他、スリットの入った真っ青なチャイナドレスに身を包んだ男子生徒やら、黄色の浴衣にモスグリーンの帯をしめ、厚化粧を施し、ボブヘアのウィッグとかんざしを付けた男子も右往左往しながら給仕している。膝上丈のピンク色のミニワンピースを着て金髪のウィッグを付けたキャバ嬢ファッション男子もいて、教室内は中々カオスだ。
「……?」
茉莉は自分を呼ぶ声が聞こえた方向に顔を向けると、席について客に扮した親友が、右手をひらひらさせながらおいでおいでしていた。その向かい席には彼女の彼氏である織田純之介が大きく頷きつつ、口元に優しい微笑みを浮かべている。三年生の彼は受験勉強に忙しい中、優美に付き合って来てくれたようだ。
「茉莉~フットマン想像以上にめっちゃ似合ってる! 超格好いいじゃん!! ねぇねぇ、一生のお願いだから『お帰りなさいませ、お嬢様』って言ってみて~!!」
「……ねぇ優美。これってさぁほぼ〝コスプレ喫茶〟じゃん」
引きつらせながら冷静に突っ込みを入れる茉莉の顔を眺めつつ、優美はからからと笑い飛ばしている。
「まあまあ。細かいことは無視無視。体格の良い佐藤君のチャイナドレスはギャップが凄かったけど、みんなそこそこ似合ってるから良いじゃん! あたしは後で中世貴族風のスリーピース着るも~ん!! 茉莉も後で見に来てね!!」
「茉莉君、優美の言う通りその燕尾服良く似合ってるよ。タカノヅカみたいで良いねぇ」
「織田先輩まで……」
まぁ時期的にもハロウィンシーズンだし、コンセプトはそれを加味したのだろうと思われる。めいめいが好きな格好をして来客の対応に追われている様は、和洋折衷様々でカオスっぷりが半端ない。良く見ると、互いに記念撮影したりと、アイドルさながらの賑やかさだ。
「まぁ、これずっとじゃないから良いけどね。私は静藍が違った意味でぶっ倒れないかが心配……」
すると、背後で歓声が一際高く上がった。野太い声と黄色い声があちこち飛び交っている。ひゅーひゅーと、口笛まで聞こえてくる有り様だ。
(……一体何この大歓声。ひょっとして……)
茉莉がその方向へと顔を向けると、一際目立つ美女が一人盆を持って立っていた。〝彼女〟はあちこち声を掛けられたり、スマホで写真を撮られたりと大変な賑わいである。
綾南高校の文化祭は十月第一土曜日で、開催時間は朝九時から夕方四時までの七時間だ。
茉莉と静藍は午前中が当番で、午後から自由に校内を回れるというシフトにされていた。宣言通り優美によって、彼らの公式デートのお膳立てがなされている。
彼女達のクラスの教室は生徒達の手により、一日限定の臨時喫茶店へと変貌していた。窓にはカーテン代わりに白い大きな布を重ね付けして垂らしてあった。黒板には「ジェンダーレス喫茶」と文字がカラフルなチョークで彩られており、その上からはリボンや切り紙を使った飾りがぶら下がっている状態だ。机も二人席、複数席とあちこち配置してある。
その中を長い黒髪を後ろに一つに結び、真っ白なシャツに黒のネクタイを付け、黒の燕尾服に身を包んだ一人の少女が、忙しく動き回っていた。上着のポケットには懐中時計のチェーンが見え隠れしている。
燕尾服姿の茉莉だった。今日は日中は十月にしては九月上旬の温度でやや高く、スーツ姿は正直ちょっと暑い。
他には胸元に赤い薔薇を飾り、上下真っ白なスーツに身を包んだホスト風女子が接客していたり、着流しに晒しを巻き、ちょんまげのカツラを被った浪人モドキ女子が後片付けしたりしている。その他、スリットの入った真っ青なチャイナドレスに身を包んだ男子生徒やら、黄色の浴衣にモスグリーンの帯をしめ、厚化粧を施し、ボブヘアのウィッグとかんざしを付けた男子も右往左往しながら給仕している。膝上丈のピンク色のミニワンピースを着て金髪のウィッグを付けたキャバ嬢ファッション男子もいて、教室内は中々カオスだ。
「……?」
茉莉は自分を呼ぶ声が聞こえた方向に顔を向けると、席について客に扮した親友が、右手をひらひらさせながらおいでおいでしていた。その向かい席には彼女の彼氏である織田純之介が大きく頷きつつ、口元に優しい微笑みを浮かべている。三年生の彼は受験勉強に忙しい中、優美に付き合って来てくれたようだ。
「茉莉~フットマン想像以上にめっちゃ似合ってる! 超格好いいじゃん!! ねぇねぇ、一生のお願いだから『お帰りなさいませ、お嬢様』って言ってみて~!!」
「……ねぇ優美。これってさぁほぼ〝コスプレ喫茶〟じゃん」
引きつらせながら冷静に突っ込みを入れる茉莉の顔を眺めつつ、優美はからからと笑い飛ばしている。
「まあまあ。細かいことは無視無視。体格の良い佐藤君のチャイナドレスはギャップが凄かったけど、みんなそこそこ似合ってるから良いじゃん! あたしは後で中世貴族風のスリーピース着るも~ん!! 茉莉も後で見に来てね!!」
「茉莉君、優美の言う通りその燕尾服良く似合ってるよ。タカノヅカみたいで良いねぇ」
「織田先輩まで……」
まぁ時期的にもハロウィンシーズンだし、コンセプトはそれを加味したのだろうと思われる。めいめいが好きな格好をして来客の対応に追われている様は、和洋折衷様々でカオスっぷりが半端ない。良く見ると、互いに記念撮影したりと、アイドルさながらの賑やかさだ。
「まぁ、これずっとじゃないから良いけどね。私は静藍が違った意味でぶっ倒れないかが心配……」
すると、背後で歓声が一際高く上がった。野太い声と黄色い声があちこち飛び交っている。ひゅーひゅーと、口笛まで聞こえてくる有り様だ。
(……一体何この大歓声。ひょっとして……)
茉莉がその方向へと顔を向けると、一際目立つ美女が一人盆を持って立っていた。〝彼女〟はあちこち声を掛けられたり、スマホで写真を撮られたりと大変な賑わいである。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。
剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。
彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。
「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。
これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。
【カクヨムでも掲載しています】
表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。