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3 帰郷 旅立ちの前に
古寺 修行 その一
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古寺 屋内
バシャー 真希乃の顔に、水がかけられる。
その冷たさに、目を開く真希乃。
「よっ!起きたか?」
京介が、水の入ったペットボトルを片手に覗き込む。
「・・僕は・・」
体が動かなかった。
「覚えてないかな。途中で、真希乃、失神したんだよ」
「失神?」
状況が読めない真希乃は、思い出していた。
「あ!」
「思い出したみたいだな」
「・・情け無いな・・」
横になったまま、真希乃は、腕で顔を覆う。
バタッと、京介も床に倒れ込んだ。
「そんな事ないよ。あとちょっと続けてたら、マジでヤバかった」
「・・え・・」
「流石に、俺も疲れたよ。こんなにしつこいのは、真希乃が初めてだよ」
蜘蛛の巣が張った朽ちた天井を眺めたままの真希乃は、京介の言葉を思い返していた。
「・・白井錬磨・・」
「ん?」
京介が、真希乃を見る。
「京介は、錬磨を知ってるの?」
京介は、慌て天井に視線を向ける。
「あ・・うん、まあね」
「あの時、白井錬磨に勝ったら・・て、言ったよね?」
「それね、確かに言った。あいつ、強えからな」
真希乃が、動かないながらも、京介を見た。
「手合わせしたの?」
「一度ね。俺より速えんだよ。参ったよ」
真希乃は、焦った。
京介より速いなんて、どれだけ強いんだ。
んっと、京介を見る真希乃。
「錬磨も、空間移動を?」
「使うねー、おまけに、俺の先を読みやがる」
「てことは、錬磨も裏にいるの?」
京介が、上体を起こし、股の間に手を下ろす。
「行ったり来たりしてるよ」
「そうか、錬磨もミラージュゲートを」
「おまけに、自由の旗の、今や幹部だからな」
ガバッと、真希乃が、上体を起こす。
「錬磨が、自由の旗の幹部?」
慌てる京介。
「お、おいおい。無茶するなよ。まだ、立てる体じゃ・・」
京介を睨むように、真希乃は見る。
「わわわ、わかったよ、話してやるから、落ち着けって」
それを聞くと、バタリと床に倒れ込む真希乃。
「奴は、戦うために生まれてきたんだな、きっと」
「・・・」
「まさに、一騎当千。奴は、全身が武器だよ」
「鋼の額当てに、鋼の手甲と足甲を、身につけた生身の兵器」
「奴は、ロムル軍に対し、たちまち戦果を上げて、のし上がって行ったよ」
「幹部になると、自分だけの部隊を作り、更に戦果を上げているらしい。蜃気楼の影のシノビをも超える精鋭と聞いた」
言葉にならない真希乃を気にして京介。
「ん?眠ったのか?」
「いや、起きてるよ」
桁違いだった。白井錬磨は、ここでも、覇者になっていた。
ふつふつと、真希乃の中で、沸き立つものがあった。
到底、足元にも及ばないとわかっていながら、真希乃の心は、白井錬磨に牙を剥いていた。
重く、動かない体を起こす真希乃。
「お、おい・・・」
京介が止めようとするが、聞かない真希乃。
「こんなんじゃ、ダメだ・・」
立ち上がるが、膝がガクガクと震える上に、両手は上がらず、ダラリとぶら下がっている。
「こんなんじゃ・・・」
真希乃は、立ったまま微動だにしない。
京介が、心配になり、真希乃を見る。
ふっと、鼻で笑う京介は、頭をポリポリと掻く。
「大した奴だよ、お前は」
真希乃は、立ったまま、気を失っていた。
バシャー 真希乃の顔に、水がかけられる。
その冷たさに、目を開く真希乃。
「よっ!起きたか?」
京介が、水の入ったペットボトルを片手に覗き込む。
「・・僕は・・」
体が動かなかった。
「覚えてないかな。途中で、真希乃、失神したんだよ」
「失神?」
状況が読めない真希乃は、思い出していた。
「あ!」
「思い出したみたいだな」
「・・情け無いな・・」
横になったまま、真希乃は、腕で顔を覆う。
バタッと、京介も床に倒れ込んだ。
「そんな事ないよ。あとちょっと続けてたら、マジでヤバかった」
「・・え・・」
「流石に、俺も疲れたよ。こんなにしつこいのは、真希乃が初めてだよ」
蜘蛛の巣が張った朽ちた天井を眺めたままの真希乃は、京介の言葉を思い返していた。
「・・白井錬磨・・」
「ん?」
京介が、真希乃を見る。
「京介は、錬磨を知ってるの?」
京介は、慌て天井に視線を向ける。
「あ・・うん、まあね」
「あの時、白井錬磨に勝ったら・・て、言ったよね?」
「それね、確かに言った。あいつ、強えからな」
真希乃が、動かないながらも、京介を見た。
「手合わせしたの?」
「一度ね。俺より速えんだよ。参ったよ」
真希乃は、焦った。
京介より速いなんて、どれだけ強いんだ。
んっと、京介を見る真希乃。
「錬磨も、空間移動を?」
「使うねー、おまけに、俺の先を読みやがる」
「てことは、錬磨も裏にいるの?」
京介が、上体を起こし、股の間に手を下ろす。
「行ったり来たりしてるよ」
「そうか、錬磨もミラージュゲートを」
「おまけに、自由の旗の、今や幹部だからな」
ガバッと、真希乃が、上体を起こす。
「錬磨が、自由の旗の幹部?」
慌てる京介。
「お、おいおい。無茶するなよ。まだ、立てる体じゃ・・」
京介を睨むように、真希乃は見る。
「わわわ、わかったよ、話してやるから、落ち着けって」
それを聞くと、バタリと床に倒れ込む真希乃。
「奴は、戦うために生まれてきたんだな、きっと」
「・・・」
「まさに、一騎当千。奴は、全身が武器だよ」
「鋼の額当てに、鋼の手甲と足甲を、身につけた生身の兵器」
「奴は、ロムル軍に対し、たちまち戦果を上げて、のし上がって行ったよ」
「幹部になると、自分だけの部隊を作り、更に戦果を上げているらしい。蜃気楼の影のシノビをも超える精鋭と聞いた」
言葉にならない真希乃を気にして京介。
「ん?眠ったのか?」
「いや、起きてるよ」
桁違いだった。白井錬磨は、ここでも、覇者になっていた。
ふつふつと、真希乃の中で、沸き立つものがあった。
到底、足元にも及ばないとわかっていながら、真希乃の心は、白井錬磨に牙を剥いていた。
重く、動かない体を起こす真希乃。
「お、おい・・・」
京介が止めようとするが、聞かない真希乃。
「こんなんじゃ、ダメだ・・」
立ち上がるが、膝がガクガクと震える上に、両手は上がらず、ダラリとぶら下がっている。
「こんなんじゃ・・・」
真希乃は、立ったまま微動だにしない。
京介が、心配になり、真希乃を見る。
ふっと、鼻で笑う京介は、頭をポリポリと掻く。
「大した奴だよ、お前は」
真希乃は、立ったまま、気を失っていた。
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