62 / 96
4 恐頭山
口移し
しおりを挟む
真希乃、彩花、麗美、京介、珍毛大、美蝶華らが、ここ恐頭山に顔を連ねていた。
「なんじゃと、白神蛇を倒したのかえ」
美蝶華が、予想以上の展開に驚き喜んでいる。
珍毛大も、驚いている。
「いやはや、初日からあれを倒すとは、わしが見込んだだけのことはあるのぉ」
自慢げに髭を撫で下ろす毛大。
「何を申すかえ。真希乃は、妾の弟子じゃ、珍には関係なかろうぞよ」
「なな、なんじゃと、いつわしが弟子入りを許したのじゃ」
「珍は、引き止めなかったぞよ」
「いや、それはじゃの」
麗美が、二人を割って入る。
「お二方、まずは真希乃くんをなんとかして頂けませんか?」
毛大が、真希乃に向き直る。
「そうじゃった。まずは、真希乃の内功を鍛えねばいかんの」
蝶華も、それには同意した。
「なれば、早々に座禅を組まねばの。平静を保つことが先決ぞよ」
肩で息をし始める真希乃の身体が熱くなる。
真希乃を支えている京介。
「師匠、真希乃がすごい熱です」
ドクン
目をカッと見開く真希乃。
胸をかきむしり、悶え苦しみ始める。
「うがあああ。がはっ」
目が血走り、どす黒い血反吐を吐く。
体中の毛穴から血が滲み出て全身が赤く染まる。
「こりゃ、いかん。京介、桃を早く」
「あ、はい」
京介は、飛んだ。
「妾が、気を送るぞよ」
真希乃の背中に掌を当てる。
蝶華は、目を閉じると掌に意識を集中させる。
大気がそこだけ揺らぐ。
真希乃の体内に、揺らぎが注がれるように見えた。
彩花も、この環境に不慣れであった為、肩で息をしてしゃがみ込んでしまった。
京介が桃を抱え、戻ってきた。
一つを麗美に。もう一つを毛大に渡す。
毛大が、彩花の口に桃を運ぶとそれにしゃぶりつく彩花。
咳き込む真希乃に、麗美が桃を口に押し込むが吐き出してしまった。
これでは、ダメだ。と、麗美は、自らの口に桃を含むと、真希乃の頭を抱え口移しに真希乃の口の中に押し込んだ。
傍目には、二人が口付けを交わしているかに見える。
彩花は、平静を保ち始める中、それを目にすると目を逸らした。
状況は、分かっていたが嫉妬した。
ゼエゼエと、肩で息をする真希乃。
気を送り続ける蝶華。
咳は収まり、顔の赤みが治まっていく。
毛大が、汗を拭う。
「なんとか、暴走は免れたの」
蝶華が、真希乃の背から手を離すと、手を着いて肩で息をする。
「危なかったぞよ。暴走などされていたら、わしらでも抑えられんかったかもしれん」
毛大が、蝶華の肩に手を添える。
「ちと、休め。あとは、わしが見る」
「悪いがそうさせてもらうぞよ」
ふわりと、蝶華は宙に浮くと、その場で座禅を組む。
乱れた大気の揺らぎが、蝶華の周りで静かな波状になる。
「真希乃よ、動けるかの?」
真希乃を支え、岩の上に導く。
「ここで、座禅を組むのじゃ」
言われるまま、真希乃は座禅を組むと目を静かに閉じた。
彩花が立ち上がると真希乃の横に並んで座禅を組んだ。
「よいかの、頭頂部を引き上げられるイメージで、背筋を真っ直ぐに整えるのじゃ」
言われるまま二人は姿勢を正す。
「次に、会陰部、すなわち肛門と外陰部の間くらいかの。そこに意識を集中しつつ、そこに全てのチャクラを積み重ねる。イメージじゃ」
「七秒くらいかの。ゆっくりと手足の先端まで酸素が行き届くよう鼻で息を吸う。そこで七秒息を止め、全身に浸透させる。そして七秒、口を細めゆっくりと全身から絞り出すように吐き出す。あとは、この繰り返しじゃ」
「手は膝に置くでも良し。みぞおち辺りで合掌でも良いが、わしは膝の上で掌を返し、人差し指と親指で輪を作るがの」
二人から、力が抜け無心になった。
微かだが、二人のオーラが波状となり調和を始める。
「うむ、良い兆しじゃ」
ささっと、毛大は麗美と京介に促すと場を変える為、飛んだ。
風と岩、草が擦れ合う、葉が地に落ちる、何かに触れることで音が発する。
世の全てが対である。
見るものと見られるもの。触れるもの触れられるもの。想いを寄せる者と想いを寄せられる者。
光が真希乃の影を作り、影が彩花に重なる。熱の変化で真希乃を感じる彩花。
彩花の髪の毛が一本、風に流され、真希乃の鼻をくすぐっていく。香りで彩花を感じる真希乃。
不意に真希乃が、くしゃみをする。
「ばか・・・」
彩花の決まり文句だ。
ふっと、笑みを浮かべる二人。
すぐ隣にいる。それだけで、お互い安心出来た。
ゆっくりと、陽が傾き始める。
このまま、何時間でも座っていられる気がしていた。
そんな様子を、片目を開けて蝶華が見ている。
「若さとは、良いものぞよ」
若かりし日に、珍に想いを寄せ夢中だった頃を思い出している蝶華。
少し休め。と、手を添えてくれた手の温もりを思い出し、その手に自らの手を重ねる蝶華。
陽もすっかり沈み、闇の中に星が輝いでいる。
座禅を組む真希乃の肩に、寄りかかるものがあった。
彩花が、寝息を立てている。
その寝顔が真希乃は愛おしかった。
ドクン!
真希乃は、胸を抑える。
真希乃の中で、何かが蠢き始めた。
「あぐ・・・」
異変に気づき目を覚ます彩花。
「真希乃!」
声に蝶華が開眼する。
「いかん、発作だ」
真希乃の後ろに回る蝶華。
「妾が気を送る。彩花は、桃を」
「あ、はい」
真希乃は、またも血反吐を吐いた。
桃を取ると、真希乃の血だらけの口に桃を押し込む。
先程と同じで、吐き出してしまう。
躊躇する彩花。
「何をしておる。迷ってはおられんぞよ」
「はい!」
彩花は桃を口に含むと、真希乃に口付けをした。
血の味が、彩花に流れ込む。
歯と歯が、ぶつかり音を立てる。
舌で桃を押し込む彩花。
自分の唾液と共に、真希乃の中に押し込まれる。
ゴクリ
音を立てて真希乃の喉を通るのを聞いた。
「彩花、しっかり抑えるのじゃぞよ」
「はい」
彩花は、真希乃を抱きしめた。
ものすごい力で、彩花を振り解こうする真希乃。
これが、男の人の力なんだ。と、彩花は必死だった。
真希乃に男を感じる一瞬だった。
力の限り、真希乃を押さえ込んでいる彩花。
「なんじゃと、白神蛇を倒したのかえ」
美蝶華が、予想以上の展開に驚き喜んでいる。
珍毛大も、驚いている。
「いやはや、初日からあれを倒すとは、わしが見込んだだけのことはあるのぉ」
自慢げに髭を撫で下ろす毛大。
「何を申すかえ。真希乃は、妾の弟子じゃ、珍には関係なかろうぞよ」
「なな、なんじゃと、いつわしが弟子入りを許したのじゃ」
「珍は、引き止めなかったぞよ」
「いや、それはじゃの」
麗美が、二人を割って入る。
「お二方、まずは真希乃くんをなんとかして頂けませんか?」
毛大が、真希乃に向き直る。
「そうじゃった。まずは、真希乃の内功を鍛えねばいかんの」
蝶華も、それには同意した。
「なれば、早々に座禅を組まねばの。平静を保つことが先決ぞよ」
肩で息をし始める真希乃の身体が熱くなる。
真希乃を支えている京介。
「師匠、真希乃がすごい熱です」
ドクン
目をカッと見開く真希乃。
胸をかきむしり、悶え苦しみ始める。
「うがあああ。がはっ」
目が血走り、どす黒い血反吐を吐く。
体中の毛穴から血が滲み出て全身が赤く染まる。
「こりゃ、いかん。京介、桃を早く」
「あ、はい」
京介は、飛んだ。
「妾が、気を送るぞよ」
真希乃の背中に掌を当てる。
蝶華は、目を閉じると掌に意識を集中させる。
大気がそこだけ揺らぐ。
真希乃の体内に、揺らぎが注がれるように見えた。
彩花も、この環境に不慣れであった為、肩で息をしてしゃがみ込んでしまった。
京介が桃を抱え、戻ってきた。
一つを麗美に。もう一つを毛大に渡す。
毛大が、彩花の口に桃を運ぶとそれにしゃぶりつく彩花。
咳き込む真希乃に、麗美が桃を口に押し込むが吐き出してしまった。
これでは、ダメだ。と、麗美は、自らの口に桃を含むと、真希乃の頭を抱え口移しに真希乃の口の中に押し込んだ。
傍目には、二人が口付けを交わしているかに見える。
彩花は、平静を保ち始める中、それを目にすると目を逸らした。
状況は、分かっていたが嫉妬した。
ゼエゼエと、肩で息をする真希乃。
気を送り続ける蝶華。
咳は収まり、顔の赤みが治まっていく。
毛大が、汗を拭う。
「なんとか、暴走は免れたの」
蝶華が、真希乃の背から手を離すと、手を着いて肩で息をする。
「危なかったぞよ。暴走などされていたら、わしらでも抑えられんかったかもしれん」
毛大が、蝶華の肩に手を添える。
「ちと、休め。あとは、わしが見る」
「悪いがそうさせてもらうぞよ」
ふわりと、蝶華は宙に浮くと、その場で座禅を組む。
乱れた大気の揺らぎが、蝶華の周りで静かな波状になる。
「真希乃よ、動けるかの?」
真希乃を支え、岩の上に導く。
「ここで、座禅を組むのじゃ」
言われるまま、真希乃は座禅を組むと目を静かに閉じた。
彩花が立ち上がると真希乃の横に並んで座禅を組んだ。
「よいかの、頭頂部を引き上げられるイメージで、背筋を真っ直ぐに整えるのじゃ」
言われるまま二人は姿勢を正す。
「次に、会陰部、すなわち肛門と外陰部の間くらいかの。そこに意識を集中しつつ、そこに全てのチャクラを積み重ねる。イメージじゃ」
「七秒くらいかの。ゆっくりと手足の先端まで酸素が行き届くよう鼻で息を吸う。そこで七秒息を止め、全身に浸透させる。そして七秒、口を細めゆっくりと全身から絞り出すように吐き出す。あとは、この繰り返しじゃ」
「手は膝に置くでも良し。みぞおち辺りで合掌でも良いが、わしは膝の上で掌を返し、人差し指と親指で輪を作るがの」
二人から、力が抜け無心になった。
微かだが、二人のオーラが波状となり調和を始める。
「うむ、良い兆しじゃ」
ささっと、毛大は麗美と京介に促すと場を変える為、飛んだ。
風と岩、草が擦れ合う、葉が地に落ちる、何かに触れることで音が発する。
世の全てが対である。
見るものと見られるもの。触れるもの触れられるもの。想いを寄せる者と想いを寄せられる者。
光が真希乃の影を作り、影が彩花に重なる。熱の変化で真希乃を感じる彩花。
彩花の髪の毛が一本、風に流され、真希乃の鼻をくすぐっていく。香りで彩花を感じる真希乃。
不意に真希乃が、くしゃみをする。
「ばか・・・」
彩花の決まり文句だ。
ふっと、笑みを浮かべる二人。
すぐ隣にいる。それだけで、お互い安心出来た。
ゆっくりと、陽が傾き始める。
このまま、何時間でも座っていられる気がしていた。
そんな様子を、片目を開けて蝶華が見ている。
「若さとは、良いものぞよ」
若かりし日に、珍に想いを寄せ夢中だった頃を思い出している蝶華。
少し休め。と、手を添えてくれた手の温もりを思い出し、その手に自らの手を重ねる蝶華。
陽もすっかり沈み、闇の中に星が輝いでいる。
座禅を組む真希乃の肩に、寄りかかるものがあった。
彩花が、寝息を立てている。
その寝顔が真希乃は愛おしかった。
ドクン!
真希乃は、胸を抑える。
真希乃の中で、何かが蠢き始めた。
「あぐ・・・」
異変に気づき目を覚ます彩花。
「真希乃!」
声に蝶華が開眼する。
「いかん、発作だ」
真希乃の後ろに回る蝶華。
「妾が気を送る。彩花は、桃を」
「あ、はい」
真希乃は、またも血反吐を吐いた。
桃を取ると、真希乃の血だらけの口に桃を押し込む。
先程と同じで、吐き出してしまう。
躊躇する彩花。
「何をしておる。迷ってはおられんぞよ」
「はい!」
彩花は桃を口に含むと、真希乃に口付けをした。
血の味が、彩花に流れ込む。
歯と歯が、ぶつかり音を立てる。
舌で桃を押し込む彩花。
自分の唾液と共に、真希乃の中に押し込まれる。
ゴクリ
音を立てて真希乃の喉を通るのを聞いた。
「彩花、しっかり抑えるのじゃぞよ」
「はい」
彩花は、真希乃を抱きしめた。
ものすごい力で、彩花を振り解こうする真希乃。
これが、男の人の力なんだ。と、彩花は必死だった。
真希乃に男を感じる一瞬だった。
力の限り、真希乃を押さえ込んでいる彩花。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる