蜃気楼の向こう側

貴林

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2 裏世界

ナミリアと俊

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麗美の側で、見守る俊に近づき、しゃがむと目線を俊に合わせるナミリア。
「怖い思いさせちまったな。ごめんよ、スグル」
ニコリと、ナミリアを見る俊。
「ナミリアが一緒だから怖くないよ」
ポッと、顔が赤らむナミリア。
「そ、そうか?なら、よかった」
俊の頭をクシャクシャっとすると、ガハハハと笑うナミリア。
スグルの手を取ると、それに握られているであろう物を見ながら
「お、そうだ。スグル。出来たもの、マキノに渡してくれるかい」
「うん、わかった」
真希乃たちの方に、駆けていく俊。

「へえ、あのナミリアがね」
横目でニヤニヤする麗美。
「スグルは、賢い子だよ。それに、肝っ玉も座ってるよ」
「肝っ玉?なんで?」
「あの状況で、作ったばかりの装飾品を、いつのまにか、手に持ってたんだよ」
「へえ」
「怖さで動けなくなるのが、普通なんだが」
ふっと、笑うナミリア。

真希乃には、結晶の粉が練り込まれたプラチナの腕輪を。
彩花と蓮華には、プラチナのネックレスに磨き上げた結晶石をヘッドに下げているものと、少し小さめな結晶石を施したピアスを。
俊には、プラチナに磨き上げた結晶石を施した指輪を。
それぞれに渡すとそれを身につける面々。
それと、もう一つ、真希乃と同じ腕輪を、俊はリュックにしまった。
残った結晶石のかけらは、皮の巾着に入れられ、真希乃の手に。

陽もかげりを見せ始める頃。
「さて、飯でも作るか」
「あ、手伝う」
俊が、椅子から飛び降りる。
「私も」
彩花は腕まくりをする。
わたくしも、お供致します」
蓮華は、座っていた椅子を静かにテーブルに収める。
「んじゃ、俺もーって、無理です」
真希乃は、立ち上がりかけて、また、ドカッと腰を下ろす。
ガハハハと笑うナミリア。
「いいんだよ。人には得手不得手えてふえてってのが、あるんだ。ここぞって時、腕を振るえばいいんだ」
麗美も、それには同感で
「そうよ、今、真希乃くんに必要なのは、ここでの知識を身につけること」
テーブルに地図を広げる麗美。
「まずは、全体を把握しましょ」

       ・

厨房から、お腹の虫を起こす匂いが、流れてくる。
「お待たせー」
俊とナミリアが料理を盛りつけた皿を、運んで来た。
「うほ、美味しそう」
彩花と蓮華も大皿を持って出てきた。
きのこ、豚肉、鶏肉、人参、馬鈴薯、鮎などの食材を使った様々な料理がテーブルを埋め尽くす。
皆の表情がほころんでいる。
ランプの灯りが、暖かさを増している。
ゆっくりと、流れる時間。
楽しいひと時であった。
彩花が食べ物を真希乃の頬に、なすりつける。
俊が、ナミリアの大きな口に食べ物を運ぶ。
麗美は、一人、酒を飲んでいる。
蓮華は、彩花と真希乃のやりとりを見て目を細めて笑う。

異世界での、はじめての夜であった。
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