83 / 96
9 提灯洞
真希乃と毛大
しおりを挟む
彩花を押し倒し、露出したその胸に貪るように、しゃぶりつく真希乃は、まるで捕食する獣のようだ。それに本気で抵抗する彩花だったが、遠慮のない真希乃を突き放すことが出来ずにいた。
両手を押さえつけられて身動きの取れない彩花は、こんな形で真希乃に身を委ねることになる事が悔しかったし、優しさの微塵すら感じられないのがとても悲しく思えていた。
「真希乃、お願い。やめて」
彩花の言葉が耳ざわりでしかなかった真希乃は、乳房を咥えながら舌打ちをするだけだった。
「こ、こんなの・・・真希乃じゃないよ」
涙を浮かべる彩花は、豹変した真希乃を見つめるが、視線を合わそうともしないその瞳に自分の姿を映し見る事も出来なかった。
彩花は、気が付いた。今目の前で自分を押さえつけているのが、女の体を欲しているだけの男がそこにいるのだと。
「あ、あなた、誰?」
彩花の胸から、よだれでグショグショになった唇を離す真希乃は、舌打ちをすると視線を彩花にではなく背後に向けていた。
「邪魔すんな、何しに来た?」
彩花を押さえつけたまま、四つ這いの格好で背後の扉の向こうの闇の中を睨みつける真希乃。
点々と差し込む月明かりの闇の中に人影が見て取れる。
やれやれとばかりに、渋々と立ち上がる真希乃は彩花から離れるが、獲物を奪われまいとする獣のように、その前に立ち塞がった。
真希乃は一時的に捕食をやめ、口元を舐め回すと更に闇の中の人影を睨みつける。
「これは、誰にもやらねえよ。さっさと失せろ」
人影がこちらに歩み寄って来ると、松明の明かりがその姿を浮かび上がられせる。毛大であった。
「そうはいかんの」
「ああ?」
「やはり出おったか。こうなるのを待っておった」
「なに?」
「では、参るでの。マキノ」
後ろ手にしたまま直立不動の毛大が、姿を消した。
片腕を後ろ手のままの毛大は真希乃の前に現れるとその腹部に拳を叩き込んでいた。速く重い一撃であった。
吹き飛ばされる真希乃は、地を滑りながらも彩花の肌けたシャツを無造作に掴むと力任せに自分の背後に放り投げた。
床に転がる彩花は、ここぞとばかりに立ち上がろうとするが、毛大が現れた事で安堵のあまりすっかり腰が抜けて膝に力が入らずその場に崩れ落ちてしまう。
そんな彩花の前に立ち塞がる真希乃は、歯を剥き出しにして毛大を睨みつける。獲物を取られまいとする獣のようだ。
長く伸びた髭を撫で下ろす毛大。
「ふむ、なかなかやりおるの」
今度は真希乃が自ら前に歩み出る。
両手を高く掲げて、自らを大きく見せようとする構え、それはまるで鎌首を掲げる蛇のように、飛びかかるタイミングを計りながら、威嚇するように手が空を揺らめいている。攻撃に対しての回避にも対応した攻防の構え。
それを見た毛大は、髭を撫で下ろすとマフラーの如く首に巻きつけた。
「良かろう。どれ程の物か、見させてもらうぞ」
毛大は、地を蹴ると真希乃に向かって飛び込むと、矢継ぎ早に連撃を繰り出していた。利き腕の右腕を後ろ手のままで。
それを全て受け、または受け流す真希乃もまた、同じように利き腕を後ろ手に左腕だけで応戦していた。
片腕とはいえ、あまりの速さに常人では、目に捉えることは出来ないほどだった。
彩花でさえその様子を捉えきれずにいた。
「真希乃。いつのまに、あんなに」
同じ格闘家として、悔しさを隠しきれない彩花は、唇を噛んだ。
笑みを浮かべたままの真希乃は、毛大と拳を交わす事に、ワクワクしていたが、やがて退屈になり右腕を繰り出していた。
それを見切った毛大もそれに答えるように右の拳でそれを受け止めた。
激しく拳がぶつかり合い、衝撃で互いの地に着いた足が地を滑る。
激しく後退して離れる二人は、舞い上がる地煙の向こうに互いを見ると笑みを浮かべていた。
「ここまでとはの。何年振りかの、久方ぶりに胸が踊るわい」
両手を押さえつけられて身動きの取れない彩花は、こんな形で真希乃に身を委ねることになる事が悔しかったし、優しさの微塵すら感じられないのがとても悲しく思えていた。
「真希乃、お願い。やめて」
彩花の言葉が耳ざわりでしかなかった真希乃は、乳房を咥えながら舌打ちをするだけだった。
「こ、こんなの・・・真希乃じゃないよ」
涙を浮かべる彩花は、豹変した真希乃を見つめるが、視線を合わそうともしないその瞳に自分の姿を映し見る事も出来なかった。
彩花は、気が付いた。今目の前で自分を押さえつけているのが、女の体を欲しているだけの男がそこにいるのだと。
「あ、あなた、誰?」
彩花の胸から、よだれでグショグショになった唇を離す真希乃は、舌打ちをすると視線を彩花にではなく背後に向けていた。
「邪魔すんな、何しに来た?」
彩花を押さえつけたまま、四つ這いの格好で背後の扉の向こうの闇の中を睨みつける真希乃。
点々と差し込む月明かりの闇の中に人影が見て取れる。
やれやれとばかりに、渋々と立ち上がる真希乃は彩花から離れるが、獲物を奪われまいとする獣のように、その前に立ち塞がった。
真希乃は一時的に捕食をやめ、口元を舐め回すと更に闇の中の人影を睨みつける。
「これは、誰にもやらねえよ。さっさと失せろ」
人影がこちらに歩み寄って来ると、松明の明かりがその姿を浮かび上がられせる。毛大であった。
「そうはいかんの」
「ああ?」
「やはり出おったか。こうなるのを待っておった」
「なに?」
「では、参るでの。マキノ」
後ろ手にしたまま直立不動の毛大が、姿を消した。
片腕を後ろ手のままの毛大は真希乃の前に現れるとその腹部に拳を叩き込んでいた。速く重い一撃であった。
吹き飛ばされる真希乃は、地を滑りながらも彩花の肌けたシャツを無造作に掴むと力任せに自分の背後に放り投げた。
床に転がる彩花は、ここぞとばかりに立ち上がろうとするが、毛大が現れた事で安堵のあまりすっかり腰が抜けて膝に力が入らずその場に崩れ落ちてしまう。
そんな彩花の前に立ち塞がる真希乃は、歯を剥き出しにして毛大を睨みつける。獲物を取られまいとする獣のようだ。
長く伸びた髭を撫で下ろす毛大。
「ふむ、なかなかやりおるの」
今度は真希乃が自ら前に歩み出る。
両手を高く掲げて、自らを大きく見せようとする構え、それはまるで鎌首を掲げる蛇のように、飛びかかるタイミングを計りながら、威嚇するように手が空を揺らめいている。攻撃に対しての回避にも対応した攻防の構え。
それを見た毛大は、髭を撫で下ろすとマフラーの如く首に巻きつけた。
「良かろう。どれ程の物か、見させてもらうぞ」
毛大は、地を蹴ると真希乃に向かって飛び込むと、矢継ぎ早に連撃を繰り出していた。利き腕の右腕を後ろ手のままで。
それを全て受け、または受け流す真希乃もまた、同じように利き腕を後ろ手に左腕だけで応戦していた。
片腕とはいえ、あまりの速さに常人では、目に捉えることは出来ないほどだった。
彩花でさえその様子を捉えきれずにいた。
「真希乃。いつのまに、あんなに」
同じ格闘家として、悔しさを隠しきれない彩花は、唇を噛んだ。
笑みを浮かべたままの真希乃は、毛大と拳を交わす事に、ワクワクしていたが、やがて退屈になり右腕を繰り出していた。
それを見切った毛大もそれに答えるように右の拳でそれを受け止めた。
激しく拳がぶつかり合い、衝撃で互いの地に着いた足が地を滑る。
激しく後退して離れる二人は、舞い上がる地煙の向こうに互いを見ると笑みを浮かべていた。
「ここまでとはの。何年振りかの、久方ぶりに胸が踊るわい」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる