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探掘屋の少女2
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エーテル結晶という魔法のような動力の発見により始まった黄金期は、約三百年前の大戦によって終わりを告げ、文明は断絶した。今の人々は地面に埋もれた過去の遺跡から、技術と貴重な動力源であるエーテル結晶を掘り起こして生きている。
ムジカもそんな探掘屋の一人だ。黄金期の建築物は、現在の爆薬や大砲を集めてきても壁を破ることは困難を極めており、現在でも探掘の大半は人力だ。
しかしエーテル結晶で経年劣化は免れていても壊れたものが直るわけではなく、三百年という月日は遺跡群にも等しく流れている。
またとある要因でもろくなっている箇所が多数存在しており、探掘屋の仕事は常に危険と隣り合わせだった。
一人で遺跡に潜っているムジカは、本来このような崩落に巻き込まれないよう細心の注意を払っている。巻き込まれて怪我をすれば最後、誰も助けてくれないからだ。
なぜこんな失態を犯しているかといえば、数分前に遭遇した政府公認の探索隊といざこざをおこしたからだった。
「あーもう、今日はついてないなあ! よりにもよって新ルートを見つけたときに来なくったっていいじゃねえか、あの素人ども!」
蛍光塗料で目印をつけながらも、はらわたが煮えくりかえる出来事を思い出したムジカは、がしがしと金茶の髪をかきむしりながら盛大に悪態をついた。
政府公認探掘隊は、バーシェ政府が運営する研究所から派遣されてきたという触れ込みで数か月前にやってきた。しかし、ほかの探掘屋の仕事を妨害することも多々あり、煙たがっている探掘屋は多かった。
もちろん用心深く避けていたムジカだったが、間の悪いことに新たなルートへ向かおうとしていたところを見つかったのだ。そしてしつこく追ってくる公認探掘隊たちから逃れているうちに、うっかり崩落に巻き込まれてここまで転がり落ちてきたのだった。
「というか遺跡内でエーテル弾をぶっ放すなんてどうかしてる。研究所直属なんて言ってんのに探掘隊の教育はどうなってやがんだ」
横柄な振る舞いを思い出したムジカは顔をしかめながら目印をつける。通った道を記憶するには一番の方法だからだ。
エーテル弾はその名の通り、エーテル結晶から生まれるエネルギーの塊だ。黄金期には主力であったエーテル由来の装備であり、現在でも発掘された遺物は高値で取引される。
だが、遺跡内での使用は要注意であると探掘屋の間では認識されていた。探掘屋にとって最もやっかいなものを呼び寄せるからだ。
とはいえ、ムジカにとっては今一番欲しいものなのだが。
「奇械がいてくれりゃラッキーなんだけど……お?」
通路にはムジカから時々こぼれる粉塵以外にほこりが積もっていなかった。
人の出入りがなく300年もたてば空気中の塵が振り積もるにもかかわらずだ。汚れていないというのは逆にあるものの存在を示していた。
かすかにきりきりと歯車が駆動する音が響く。
振り返ったムジカの、唇の端が上がった。
「まだあたしの運もつきちゃいないらしい」
ムジカもそんな探掘屋の一人だ。黄金期の建築物は、現在の爆薬や大砲を集めてきても壁を破ることは困難を極めており、現在でも探掘の大半は人力だ。
しかしエーテル結晶で経年劣化は免れていても壊れたものが直るわけではなく、三百年という月日は遺跡群にも等しく流れている。
またとある要因でもろくなっている箇所が多数存在しており、探掘屋の仕事は常に危険と隣り合わせだった。
一人で遺跡に潜っているムジカは、本来このような崩落に巻き込まれないよう細心の注意を払っている。巻き込まれて怪我をすれば最後、誰も助けてくれないからだ。
なぜこんな失態を犯しているかといえば、数分前に遭遇した政府公認の探索隊といざこざをおこしたからだった。
「あーもう、今日はついてないなあ! よりにもよって新ルートを見つけたときに来なくったっていいじゃねえか、あの素人ども!」
蛍光塗料で目印をつけながらも、はらわたが煮えくりかえる出来事を思い出したムジカは、がしがしと金茶の髪をかきむしりながら盛大に悪態をついた。
政府公認探掘隊は、バーシェ政府が運営する研究所から派遣されてきたという触れ込みで数か月前にやってきた。しかし、ほかの探掘屋の仕事を妨害することも多々あり、煙たがっている探掘屋は多かった。
もちろん用心深く避けていたムジカだったが、間の悪いことに新たなルートへ向かおうとしていたところを見つかったのだ。そしてしつこく追ってくる公認探掘隊たちから逃れているうちに、うっかり崩落に巻き込まれてここまで転がり落ちてきたのだった。
「というか遺跡内でエーテル弾をぶっ放すなんてどうかしてる。研究所直属なんて言ってんのに探掘隊の教育はどうなってやがんだ」
横柄な振る舞いを思い出したムジカは顔をしかめながら目印をつける。通った道を記憶するには一番の方法だからだ。
エーテル弾はその名の通り、エーテル結晶から生まれるエネルギーの塊だ。黄金期には主力であったエーテル由来の装備であり、現在でも発掘された遺物は高値で取引される。
だが、遺跡内での使用は要注意であると探掘屋の間では認識されていた。探掘屋にとって最もやっかいなものを呼び寄せるからだ。
とはいえ、ムジカにとっては今一番欲しいものなのだが。
「奇械がいてくれりゃラッキーなんだけど……お?」
通路にはムジカから時々こぼれる粉塵以外にほこりが積もっていなかった。
人の出入りがなく300年もたてば空気中の塵が振り積もるにもかかわらずだ。汚れていないというのは逆にあるものの存在を示していた。
かすかにきりきりと歯車が駆動する音が響く。
振り返ったムジカの、唇の端が上がった。
「まだあたしの運もつきちゃいないらしい」
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