異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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新たな旅路~Cランク昇格試験編~

壊れない絆の証

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神殿に行く途中の道は、昨日とはまるで別のものに見えた。

…ていうか、神器を返すの忘れてたな…まあいいっか…着いたら聖女様にわたそ。

神殿の入り口に着くと、1人の女性が近づいてきた。

「お初にお目にかかります。聖女様つきの神使、フリオネンと申します。」

神使ということは神父と同様神に認められし清い魂の持ち主しかなれなかったはず。国に5人もいない人がどうしてここに…

「初めまして、フリオネン。聖女様のところに連れて行ってもらえるのかな?」

「はい。こちらへ。」

連れていかれた別室には聖女様が立っていた。

「あら、神器を取り戻してくれたのですね、カイくん。」

聖女様ほどの人なら、見ていなくても神器を持っていることが分かるのか。凄いな…

「信じてもらえるかは分かりませんが、犯人は万物神レイ様でした。本来神器とは神のものであるため、お咎めすることはできないかと。」

「信じますよ。カイくん、神器をこちらに。」

指示されるがまま神器を台座に置いた。

「どうして神器を取って逃げたのか、本人に聞いてきますので、少し待っていてください。」

僕はそう言って目を閉じた。

次に目を開けると、そこは夢と同じような空間に立っていた。

一つ違うことは、レイがぐるぐるに縛られていて、喋れないように口も塞がれた状態で放置されていることぐらいだろうか。

「一体これはどういう…」

「来てくれたんだ。見た通りレイちゃんは拘束中だよ。うるさかったから声も封じたんだ。そうしないと現世に降りて行ってしまうからね。本当は無理やり連れて帰ろうと思ったんだけど、君に謝ってからじゃないと帰らないって言われてしまって…。ということで、カイくんに来てもらったんだ。」

「…そうなんですね。じゃあ話をしたいので、レイの拘束をやめてもらえますか?」

パチンと指がなった瞬間、レイの拘束は跡形もなく消えた。

「ぷはっ、助かったぁぁ…」

「それはよかったね、レイ。ところで、僕に何か言うことはないかな?」

僕はそう言ってニコリと笑った。それを見たからか、レイはビクッと肩を揺らし僕の眼を見た。

「本当にすまなかった。カイ。赦してくれなんて図々しいことは言えないけど、俺は、」

レイの言葉を待たず、僕は思いきり顔をぶん殴った。

「…っ」

「これでチャラにしておいてあげるよ。あーせいせいした。」

「いっ、いいのか?」

「なに?もう一発殴られたいの?」

「…殴られたぐらいで埋め合わせできるようなもんじゃないだろう。」

「それは、、それは、君が決めることじゃないよ、レイ。僕が決めることだ。そして僕は、それで埋め合わせしようと言っている。それにのらないで、僕と微妙な関係になりたいんなら止めないけど。」

「なんで…赦してくれるんだ。」

「確かに、赦せないという感情が頭をよぎらなかったわけじゃないけど、それでも…それでも僕は君と共に笑っていたいんだ。」

その言葉を口にした瞬間、胸の奥に溜まっていた何かが、すっと抜けていくのを感じた。
怒りでも、悲しみでもない。ただ、張り詰めていた糸が切れたような感覚がした。

レイはしばらく何も言わず、俯いたまま拳を握りしめていた。

「……ずるいな、カイ。」

「なにが?」

「そんな言い方されたら、俺は頷くしかなくなる。」

レイは小さく笑った。けれど、その声は少し震えていた。

「神である俺が、人間に赦されるなんてさ。普通立場が逆だろ。」

「立場なんてどうでもいいよ。君は君だし、僕は僕。それだけで十分だと思うけど?」

軽く肩をすくめて言うと、レイは困ったように目を細めた。

「……本当に敵わない。」

そのとき、背後から軽い拍手の音がした。

「いやあ、いいものを見せてもらったよ。」

女の人が楽しそうに笑っていた。

「これでレイちゃんも現世に未練はなくなったよね。神器も無事返ったし、一件落着!」

「未練って言い方、ひどくないですか?」とレイが抗議すると、「事実でしょうが」と即座に返される。

そういえば、レイに神器を持ち去った理由を聞いていないと思い、僕は一歩前に出た。

「そういえば、レイ。どうして神器を持ち去ったの?」

「うん?ああ…本来は神が現世に降りると神の力に耐えきれなくなった世界が徐々に壊れてしまうんだ。でも、あの神器は神の力を吸収できるから、持つだけで自分の神力を調整できるってわけだ。だから持っていかざるをえなかったんだよ。」

あーなるほど、でも聖女様にどうやって説明しようか…

「じゃあ、これで終わりですか?」

「うん。君はもう戻っていい。」

その言葉と同時に、視界がゆっくりと白く滲み始めた。

「カイ。」

消える直前、レイが呼んだ。

「……また、会えるよな?」

「さあね。」

僕は少しだけ意地悪く笑ってから、こう続けた。

「でも、君と僕が出会ったことが運命ならば、きっとまた会えると思うよ。」

その答えに、レイは安心したように息を吐いた。

次の瞬間、視界が反転する。

目を開けると、そこは神殿の別室だった。
聖女様が穏やかな表情でこちらを見ている。

「大丈夫ですか、カイくん。」

「……ええ、まあ。色々とありましたけどね。」

神器は静かに台座の上で輝いている。
もう、逃げ出すことはないだろう。

神殿を出ると、空はやけに澄んで見えた。
昨日と同じ道のはずなのに、やっぱりどこか違って感じる。

「まったく……神様ってのは、手がかかる。」

そう呟きながら歩き出すと、不思議と口元が緩んだ。
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