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33話:ゆらぎ
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あれから三日間。
アランの香りを克服するためにずっと一緒にいることで、すぐに体が変化することは無くなった。
けれど、抱きしめられたり距離が近い時間が長くなるとじわじわと体が熱くなってくるので注意は必要だ。
どうやったらもっと安定するのかアランにたずねると「番になったら安定するよ」と、満面の笑みを浮かべ答えてくる。
ーーここを噛まれた時、僕はどうなっちゃうんだろう……
アランから愛の言葉を囁かれ、証が刻み込まれる瞬間を想像すると、体が一瞬で火照りぶわりと鳥肌が経ちフェロモンがもれでてしまう。
慌てて深呼吸して体を落ち着かせる。
あたりを見渡して人がいないことにホッとした。
アランのことを好きになればなるほどに溢れ出してくる独占欲。
僕だけのアランでいて欲しいと思うと、また体も反応してうなじがずくりと疼いた。
ここをアランが噛めば僕たちは唯一無二の存在となる……いや、僕だけか。
オメガにとって番った人は唯一だけれど、アルファはその気になれば何人も番がもてる。
もしも、アランが僕と番になってくれても、ずっと僕だけを見てくれるとは限らない。
そんなことを考えながら、歩いていると校舎の踊り場を通りがかる。
大きな鏡が目に入り、鏡に映った自分を見つめると自然に大きなため息が出た。
パッとしない平凡な顔、どんくさそうな厚い瓶底メガネ、癖っ毛でもさもさしてる髪、寸胴な体、それに加えてセンスのない私服。
こんな僕をずっとアランは愛してくれるのだろうか?
憂鬱になり二度目の大きなため息を吐くと、鏡にもう一人映り込む。
整った綺麗な顔、涼やかな瞳、さらりと流れる黒髪、華奢でスタイルのいい体によく似合ったカジュアルな服に包まれた人物。
僕の隣にいると、美しさはより際立っていた。
「ケイくん、久しぶりだね」
久しぶりに聞くハスキーな声の主に視線を向けるとニコリと微笑まれた。
思わず表情がこわばってしまう。
「し、白雪さん。お久しぶり、です」
「今、時間ないかな? 少し話したいことがあるんだ」
ニコリと微笑む白雪さん。
白雪さんが僕に用件があるとすれば、アランのことだろう。
また何か言伝を頼まれるのかもしれないし、もしかしたらそれ以上のことかもしれない……
どうしようか返事に困っていたけれど、白雪さんは返事など聞かず僕の手を引く。
中庭に到着すると、白雪さんが困った顔をして話しかけてくる。
「最近、アランくんの様子がおかしいんだけど、何かあったのかな?」
「えっと……様子がおかしいって、どんなところが?」
「元気がないし、講義を受けてる時もボーっとしてることが多くて……。何か悩み事でも抱えてるんじゃないかなって思ってるんだ」
「悩みごと……ですか」
思い浮かんだのは自分のことだった。
ベータの僕をオメガに変えたことをアランは悩んでるのだろうか?
答えることができずに黙っていると、白雪さんが真剣な顔をして問いかけてくる。
「ケイくん、こんなことを聞くのはあれなんだけど……きみ、アランくんの研究対象になってない?」
「研、究?」
首を傾げ白雪さんを見上げると、すっと目を細め優しい口調で説明してくれる。
「アランくんが研究しているのは『ベータの後天性変化』についてなんだ。元々、アランくんのお母様はその分野の第一人者。白澤教授とは、後天性変化について研究を一緒にしているんだよ。アランくんも、その研究に以前から参加していて今回の来日の目的は……それを実践するためだって言われているんだよ」
白雪さんの言葉に心臓が大きくはねて、どんどん鼓動がはやくなっていく。
ベータの後天性変化、研究の実践……
不穏な言葉が頭の中でぐるぐるとまわり、アランと過ごした日々を思い浮かべる。
混乱し何も答えられない僕に白雪さんが近づき耳元で囁く。
「アランくんがベータと同じ寮にいるって聞いてから、何か変だなって思ってたんだけど……ねぇ、ケイくん。思い当たることない?」
低く胸を刺すような声で問いかけられ、白雪さんの指先が、そっと僕のうなじに触れた。
アランの香りを克服するためにずっと一緒にいることで、すぐに体が変化することは無くなった。
けれど、抱きしめられたり距離が近い時間が長くなるとじわじわと体が熱くなってくるので注意は必要だ。
どうやったらもっと安定するのかアランにたずねると「番になったら安定するよ」と、満面の笑みを浮かべ答えてくる。
ーーここを噛まれた時、僕はどうなっちゃうんだろう……
アランから愛の言葉を囁かれ、証が刻み込まれる瞬間を想像すると、体が一瞬で火照りぶわりと鳥肌が経ちフェロモンがもれでてしまう。
慌てて深呼吸して体を落ち着かせる。
あたりを見渡して人がいないことにホッとした。
アランのことを好きになればなるほどに溢れ出してくる独占欲。
僕だけのアランでいて欲しいと思うと、また体も反応してうなじがずくりと疼いた。
ここをアランが噛めば僕たちは唯一無二の存在となる……いや、僕だけか。
オメガにとって番った人は唯一だけれど、アルファはその気になれば何人も番がもてる。
もしも、アランが僕と番になってくれても、ずっと僕だけを見てくれるとは限らない。
そんなことを考えながら、歩いていると校舎の踊り場を通りがかる。
大きな鏡が目に入り、鏡に映った自分を見つめると自然に大きなため息が出た。
パッとしない平凡な顔、どんくさそうな厚い瓶底メガネ、癖っ毛でもさもさしてる髪、寸胴な体、それに加えてセンスのない私服。
こんな僕をずっとアランは愛してくれるのだろうか?
憂鬱になり二度目の大きなため息を吐くと、鏡にもう一人映り込む。
整った綺麗な顔、涼やかな瞳、さらりと流れる黒髪、華奢でスタイルのいい体によく似合ったカジュアルな服に包まれた人物。
僕の隣にいると、美しさはより際立っていた。
「ケイくん、久しぶりだね」
久しぶりに聞くハスキーな声の主に視線を向けるとニコリと微笑まれた。
思わず表情がこわばってしまう。
「し、白雪さん。お久しぶり、です」
「今、時間ないかな? 少し話したいことがあるんだ」
ニコリと微笑む白雪さん。
白雪さんが僕に用件があるとすれば、アランのことだろう。
また何か言伝を頼まれるのかもしれないし、もしかしたらそれ以上のことかもしれない……
どうしようか返事に困っていたけれど、白雪さんは返事など聞かず僕の手を引く。
中庭に到着すると、白雪さんが困った顔をして話しかけてくる。
「最近、アランくんの様子がおかしいんだけど、何かあったのかな?」
「えっと……様子がおかしいって、どんなところが?」
「元気がないし、講義を受けてる時もボーっとしてることが多くて……。何か悩み事でも抱えてるんじゃないかなって思ってるんだ」
「悩みごと……ですか」
思い浮かんだのは自分のことだった。
ベータの僕をオメガに変えたことをアランは悩んでるのだろうか?
答えることができずに黙っていると、白雪さんが真剣な顔をして問いかけてくる。
「ケイくん、こんなことを聞くのはあれなんだけど……きみ、アランくんの研究対象になってない?」
「研、究?」
首を傾げ白雪さんを見上げると、すっと目を細め優しい口調で説明してくれる。
「アランくんが研究しているのは『ベータの後天性変化』についてなんだ。元々、アランくんのお母様はその分野の第一人者。白澤教授とは、後天性変化について研究を一緒にしているんだよ。アランくんも、その研究に以前から参加していて今回の来日の目的は……それを実践するためだって言われているんだよ」
白雪さんの言葉に心臓が大きくはねて、どんどん鼓動がはやくなっていく。
ベータの後天性変化、研究の実践……
不穏な言葉が頭の中でぐるぐるとまわり、アランと過ごした日々を思い浮かべる。
混乱し何も答えられない僕に白雪さんが近づき耳元で囁く。
「アランくんがベータと同じ寮にいるって聞いてから、何か変だなって思ってたんだけど……ねぇ、ケイくん。思い当たることない?」
低く胸を刺すような声で問いかけられ、白雪さんの指先が、そっと僕のうなじに触れた。
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