やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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1章 

油断大敵

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 木をのこぎりでギコギコと切りながら、汗を腕で拭って「熱ーい!」と、騒いで、服を脱いでタンクトップとドロワーズ姿になる。ちゃんと、ドロワーズの中にパンツは穿いてるよ!
イクシオンが帰って一週間経ち、暑さが増してきた今日この頃!
 私がなにをしているか? 天日干しの大きな台を作ろうと思って、ギコギコとノコギリ片手に頑張ってるよ~。

 今までは網籠でチマチマ天日干ししてたんだけど、海辺の魚を天日干しする様なのを作ってしまえば、時間を掛けなくても、一気に作れるのではないか……? と、いう事に行きついたわけですよ。
たたみ一畳分の枠組みを二つ作り、千枚通しで穴を三センチごとに開けていき、そこへトマトの茎が倒れないように支柱に結ぶようにと、貰って来た細い紐を通して横に張り巡らしてから、縦にも張り巡らせば、網の出来上がり。
これなら風通しも良いし、二枚で挟み込んでいるから、風で中の物が飛んでいく事もない!

 そう! 魚の天日干しが……尻尾だけを残して飛んでいくという悲劇は、もう起きない!!
これ大事!! あんな悲劇を繰り返してはいけない!

 ただね、天日干しの板は出来たけど、それを乗せる台が無いと、意味が無い事に気付いて……作成中という訳ですよ。
地面に天日干しの板を転がすわけにもいかないしね。
ただ、天日干しの板を作っていたら、気温上昇で暑くて、下着姿になっちゃったんだけどね。

 これは獣人の人達がバテちゃうよねー……
タンクトップをバタバタさせながら、これ終わったらお風呂に入ろうと考えていると、ゲッちゃんが「ゲキョキョー」と鳴きながら、私の前を旋回する。
「ついてこい」という時の合図なので、小屋の中から包丁を持って直ぐに飛び出し、走りながらゲッちゃんを追って「デンちゃーん!!」と大声を出す。
デンちゃんは散歩をしているので、傍に居なかったから、走りながら呼ぶしかない。

「あー、それにしても、私ここに来て、体力と腕力付き過ぎた気がする」

 川の方からビショビショに濡れたデンちゃんが走ってきた。
暑いから川の中で遊んでいたのか……私もこれが終わったら川に飛び込んで帰ろうかな……

「デンちゃん、乗せて!」
「ワオーン!」

 デンちゃんに乗って、お尻とかびしょ濡れだけど、もういいや。どうせ帰りに川に飛び込むんだしと諦める。
ゲッちゃんは何処に向かっているんだろう?
魔窟の森の方に向かっている事から、また何かあったのかもしれない。

「ゲキョー」
「あっ!」

 ゲッちゃんが魔窟の森を出ると、獣騎に乗ったイクシオンとビブロースさんが境界線の前で待っていた。

「待ってー! デンちゃん駄目―! ストップ、ブレーキ! だめぇえぇぇ!!」
「ワオーン!!」
 
 嬉しそうに魔窟の森の方へと飛び出し、私は涙目で叫ぶしかなかった。
嬉しそうな表情をしていたイクシオンの笑顔が、私の姿を見て一時停止した。
急いでたから、タンクトップにドロワーズだし、デンちゃんが全身びしょ濡れのせいで私のタンクトップもドロワーズも水で濡れて透けてるんだよ……
 こういう時、悲鳴を上げれば良いの? 自分からこんな格好で飛び出して、悲鳴を上げて良いものなの? 教えて誰かー!!

「リト、その姿は……、とりあえず、オレの上着を」

 ビブロースさんは見ていませんという感じで、明後日の方向を見て、イクシオンも上着を差し出しながら、顔を背けている。
もう、マジすみません……穴があったら入りたい……

「ううっ、ありがとー……お借りします……、暑くて、服を脱いで外で作業してたから……ううっ」
「リト、頼むから……一人しか居ないとはいえ、ちゃんと服は着て作業するようにな?」
「面目次第もございませんッ!!」
 
 これって、私が謝るべきなのか分らないけど、もう全身から火が出そう……ッ!!
 イクシオンの手を取って中に入ってもらい、次にビブロースさんの手を取って中に入ってもらう。
イクシオンに先に進んでもらい、私は一番後ろをデンちゃんに乗ってついて行く……後ろから見られるわけにもいかなかったからね。
小屋に戻るとマッハで外に脱ぎ散らかした服を回収して、自分の部屋で着替え直したよ!
少し自分の部屋の中で悶えながら、やっと落ち着いてから戻っていった。

「いらっしゃい。イクスが、こんなに早く来るなんて思ってなかったよ……」
「それに関しては謝るよ。うちの屋敷の者がリトに相談があるようでな、屋敷に一度来て欲しいそうなんだ」
「そうなんだ……でも、私、畑があるからなぁ……」

 困った事に、畑は今収穫期真っ只中だから、食材不足の私としては、今ココを離れるわけにもいかないし、デンちゃんも長時間この暑さの中を走らせるのは少し心配かな?

「その為にビブロースを連れて来た。野菜の世話はビブロースがしてくれるだろう」
「お任せください。リト様が帰って来るまでは、キチンと収穫しておきますので」
「でも、デンちゃんが少し夏バテしそうだから、走らせるのは少し可哀想かなって……」
「守護獣に関して調べたんだが、大きさは変えられるとあったが……デン、小さくなれ」

 イクシオンの命令に、デンちゃんが首を傾げて「ワフ?」と言っている。フッとイクシオンが笑って、十センチ程の骨を出す。

「デン、これが小さいサイズになったら、口いっぱいに頬張れるんだぞ?」
「ワォーン!」

 デンちゃんの体がモコモコと動いて、小さな豆柴サイズまで小さくなる。なんという、食いしん坊な……ッ!!
骨を貰って、床の上でゴリゴリと齧りつくデンちゃんを指さして、「これで、持ち運びしやすくなっただろう?」と言い、私としてはヤレヤレという感じである。

 もしかして……鶏肉丸々一匹食べたいが為に今まで大きかったとか……うーん、ありそうだ。
まぁ、デンちゃんのもふもふした毛を思う存分、さわさわしてベッド代わりにするのも好きなんだけどね。
もふもふは良い物だ。

「これで、心配事は無いか?」
「まぁ、とりあえずは……でも、ビブロースさんはお屋敷の方、大丈夫なんですか?」
「ええ。他にも庭師を呼んでいますから、大丈夫ですよ。何かここで注意すべき点などありますか?」
「えーと、食べ物は備蓄庫のガラス瓶の中の物を使っていただければ、大丈夫です。収穫した野菜は、食器棚の前に置いてあるガラス瓶に詰めても良いですし、お料理に使っちゃっても大丈夫です。あとは、お部屋は好きな所を使って下さいね。道具の大半は庭の倉庫の中に置いてますから、必要なら使って下さい」
「ええ。わかりました」

 ビブロースさんに一通りの説明をして、あれよあれよという間に、イクシオンに連れて行かれることが決定した様で、慌ててリュックサックに着替えを詰め込んで、イクシオンに獣騎に乗せられていた。
 肩にはゲッちゃん、膝の上にはデンちゃん、そして真後ろにはイクシオン。
うーん。せめて、お風呂に入ってから出掛けたかった。
私、汗臭く無きゃいいんだけど……ううっ、密着具合も凄いんだけど……
せめて、私に時間をくれてから、移動にして欲しかったよー! 
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