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1章
イクシオン殿下のメイド
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ヴァンハロー領のお屋敷にきて二週間、お屋敷の人達は大分元気になり、あとはコック長のウィリアムさんとメイド長のアーデルカさんに、新たにメイミーさんが風邪になってしまったくらいかな?
「今日も皆さん、頑張りましょう!」
「「「はい! リト様!」」」
群青色に銀糸の刺繍が裾にあしらわれているメイド服は、イクシオンの屋敷のメイドという分かりやすい出で立ちらしく、一軒一軒をメイドさん達と手分けして訪ねて、風邪の患者が居たらゼキキノコの瓶を渡し、その場で氷水を包丁で作って渡した。
ヴァンハロー領の人は私を知っているけど、他の領地では知られていないから、別に自分をアピールしたいわけでは無いので、「イクシオン殿下からです。早く良くなって下さい」と、言って「何かありましたら、屋敷の方に来て下さい」と、言って回った。
あと、リンゴも一個お見舞いに渡していった。
このリンゴは、初めの頃に行った青果店で「リンゴが大量にあるから皆で分けてください」と、貰った物を配っている。
私のお爺ちゃんが言ってた。
『朝のリンゴは金のリンゴ、昼は銀、夜は銅。体にとっても良いんだよ』
だから、きっとリンゴには栄養素があるはず! 自信はないけど、すりおろしたリンゴって風邪の時にお母さんがすりおろしてくれたから、良いと思う!
氷の魔法包丁『熊吉』は役に立つ相棒になっていた。
夏の間にこれに気付けてたら良かったんだけどね……気付いたのは夏の終わりなんだよね。
川遊びしつつ、果物を切ろうとして川で包丁をザブザブ洗ったら、氷がカラコロ出来たっていう……
来年の夏は、熊吉をここに置いておいて、ヴァンハローの皆に使ってもらおう。
私はお礼に皆をもふもふさせて貰う。ふっふっふっ。
「リト様~っ! こちらの地区配り終わりましたー!」
「はーい! お疲れ様ですー! こっちもあと二軒ですー!」
他にも「終わりましたー」と、声を掛けて貰って、領内の地図を各自配ったところに印を付けて、ようやく後は獣騎で遠い場所に届けに行っている、ビブロースさん達から連絡が入れば終わりという感じだ。
リヤカーいっぱいに木箱を積んでいるから、そんなに速度も出せない為に、少し時間はかかりそうではあるけど、苦しんでいる人達が少しでも減ってくれたら、私達のしていることは無駄ではないはず。
お屋敷に戻って、昨日干しておいたゼキキノコを回収してお鍋の中に放り込む。
「今日もお薬作りますよー!」
「リト様、あまり張り切らないで下さい。リト様が倒れられたら、殿下が倒れますからね?」
「ふっふー。大丈夫! 私はココに来なかった! オッケーですか?」
「それは無理ですよ」
「融通利かせて、臨機応変にいきましょ?」
「いえいえ、報告させていただきますから。ちゃんとお礼をしなくては、殿下に怒られてしまいます」
「えーっ、あっ! そうだ! だったら、ウィリアムさんが風邪が治ったら、おっきなケーキ作ってくれるのがお礼でどうですか?」
執事のアンゾロさんが、顎に手を置いて「ケーキ、ですか?」と、私を見つめる。
私は栗の入った袋を出して、「栗のケーキ! 絶対美味しいと思うんです!」と、当初の目的であるマロンケーキをアピールした。
「立派な栗ですね。これもリト様の森で採れたのですか?」
「はい! 絶対、ウィリアムさんに栗でケーキ作ってもらおうと思って、一生懸命拾ったんです!」
「わかりました。コック長にはその様に伝えておきます」
「えへへ。お誕生日ケーキだぁ~」
もう誕生日は過ぎて、私は十五歳になっているんだけどね。
でも、パンケーキの誕生日一人会より、ここで皆でケーキを食べてワイワイしたいんだよね。
「リト様はお誕生日なのですか?」
「もう過ぎちゃったんですけど、十五歳になりました」
「それはそれは、おめでとうございます」
「ありがとうございます!」
早くウィリアムさんが良くなると良いなぁ……
マロンケーキにヨダレが出そうになりつつも、ゼキキノコを煮つめていると、厨房にチェチェリンさんが慌てて入ってきた。
「大変です! 貴族の馬車がやってきました!」
「なんですって! チェチェリン、リト様をお願いします。対応は私が致しましょう」
「はい! お願いします!」
アンゾロさんがカツカツと足早に出て行き、私はチェチェリンさんに「少し見に行きません?」と、野次馬根性を出して、チェチェリンさんに「駄目です!」と、怒られていた。
でも、なにしに来たかは知りたいじゃないですか?
指をもじもじさせていると、アンゾロさんが厨房に戻って来て、私を呼んだ。
「リト様、お会いしていただきたい人物がいらっしゃいます。ご足労願えますか?」
「はーい。チェチェリンさん、お鍋見ててください~」
アンゾロさんが「昔馴染みですので、害は無いと思いますが、お気を付けください」と、少しピリピリした感じで言い、私も少し気持ちを改めて応接間に行く。
応接間は大きな暖炉と絵画が飾って合って、大きな鏡が飾ってあるテーブルと、少しゴージャスなソファチェアがある場所で、大きな鏡は裏から応接間の中が覗けるマジックミラーにもなっている。
ソファチェアに座らずに立って居る人は、灰色の小さな耳をしていて、体のがっしりした大きい人だった。
なんだか外国の大学卒業時に着てそうなローブ姿で、お爺さんとまではいかないけど、若くもないかなー? という年齢の人。
なんの動物だろう? 毛は……ないなぁ。
うーん、私のモフセンサーが反応しない。
でも、どこかで見た耳なんだよね……筒状の耳……あっ、サイだ! サイの獣人さんかー。
自分の中で答えが出て、小さく頷いていると、サイの獣人の人が会釈してくるので、私も頭を下げる。
「私はカンファルと申します。アンゾロ卿、このメイドが卿の言う方ですか?」
「こちらは、救済を申し出たところ、快く引き受けて下さったリト様です。メイド服なのは、看病の為に領内の人々の家を回るのに、ご自分の身分を隠しているからです。失礼の無い様に願います」
アンゾロさんに目で「挨拶を」と促されて、いつも通りの営業スマイルをする。
「初めまして。リトと申します。よろしくお願いいたします」
「失礼致しました。リト殿、貴女が無償で配っている飲み薬をうちの領でも配布してもらえないだろうか?」
「カンファルさんの領地はどこら辺なのですか?」
「リト様、カンファルの領地は王都より南下した場所にありますので、上から三番目の領地になります」
「だとしたら、ギリギリ、飲み薬が届くかどうかの場所ですね」
「そうなのです! 王都の方へ頼んでも無駄だと言われ、早馬で緊急を要する患者がいる場合は、ヴァンハロー領へ早馬を飛ばせ、と伝令があり、こうして来たのです」
確かに、危篤状態になっては大変なので、順次、獣騎を使いリヤカーで飲み薬を届けて貰っているけど、どうしても待てない人は、早馬でこちらに連絡を寄越せば薬を持たせるとは言ってある。
「危篤状態の方が居るのですか?」
「いえ、そこまで酷くは無いのですが、皆苦しんでいるのです。ですから、こうして自分の領地の者に配るのに、こちらの手を煩わせても申し訳ないと、馳せ参じました」
「でしたら__、決して、私利私欲に走らないと誓えますか? この薬は自分の領地の人へ必ず飲ませると、誓えますか?」
人を疑ってしまえば、キリが無いけど、苦しんでいる人達から搾取しようとする人は少なからず居る。
だからこそ、絶対に判断を誤ってはいけない。
「でしたら、カンファルの領へ私も同行致しましょう。そろそろアーデルカも復帰するでしょうから、この屋敷の事を彼女に任せ、私が見届けてまいります」
「それでしたら、安心ですね。と、言うことで大丈夫ですか? カンファルさん」
「ええ。少しでも早く領民を救わねばなりませんから。リト様の事、民達へ伝えますので、ご安心ください」
「いえ、私ではなく、イクシオン殿下の願いを聞いているだけですので、感謝はイクシオン殿下にお願いします」
面倒ごとはイクシオンに丸投げしてしまおう。うん。
この後、一時間程してゼキキノコの飲み薬を瓶詰した物を木箱につめて、アンゾロさんと共にカンファルさんは馬車で自分の領地に戻っていった。
一応、多めに持って行って貰ったので、余ったらアンゾロさんが他の領地にも届けてくれるそうだ。
「ふぅー、早くひと段落して、帰って冬越えの準備しなきゃなぁ……」
もう少し色々、採取したり、狩りもしたいんだよね。
コショウも今年のヤツがそろそろ採れ頃だろうしねー。
イクシオン、風邪引いて無きゃいいけど、大丈夫かな? 地図も持ってくれば良かった。
どこで何してるか、ここでは分からないのが困るよね。スマートフォンとか欲しいな。便利な道具が無いのは不便だよね。
「今日も皆さん、頑張りましょう!」
「「「はい! リト様!」」」
群青色に銀糸の刺繍が裾にあしらわれているメイド服は、イクシオンの屋敷のメイドという分かりやすい出で立ちらしく、一軒一軒をメイドさん達と手分けして訪ねて、風邪の患者が居たらゼキキノコの瓶を渡し、その場で氷水を包丁で作って渡した。
ヴァンハロー領の人は私を知っているけど、他の領地では知られていないから、別に自分をアピールしたいわけでは無いので、「イクシオン殿下からです。早く良くなって下さい」と、言って「何かありましたら、屋敷の方に来て下さい」と、言って回った。
あと、リンゴも一個お見舞いに渡していった。
このリンゴは、初めの頃に行った青果店で「リンゴが大量にあるから皆で分けてください」と、貰った物を配っている。
私のお爺ちゃんが言ってた。
『朝のリンゴは金のリンゴ、昼は銀、夜は銅。体にとっても良いんだよ』
だから、きっとリンゴには栄養素があるはず! 自信はないけど、すりおろしたリンゴって風邪の時にお母さんがすりおろしてくれたから、良いと思う!
氷の魔法包丁『熊吉』は役に立つ相棒になっていた。
夏の間にこれに気付けてたら良かったんだけどね……気付いたのは夏の終わりなんだよね。
川遊びしつつ、果物を切ろうとして川で包丁をザブザブ洗ったら、氷がカラコロ出来たっていう……
来年の夏は、熊吉をここに置いておいて、ヴァンハローの皆に使ってもらおう。
私はお礼に皆をもふもふさせて貰う。ふっふっふっ。
「リト様~っ! こちらの地区配り終わりましたー!」
「はーい! お疲れ様ですー! こっちもあと二軒ですー!」
他にも「終わりましたー」と、声を掛けて貰って、領内の地図を各自配ったところに印を付けて、ようやく後は獣騎で遠い場所に届けに行っている、ビブロースさん達から連絡が入れば終わりという感じだ。
リヤカーいっぱいに木箱を積んでいるから、そんなに速度も出せない為に、少し時間はかかりそうではあるけど、苦しんでいる人達が少しでも減ってくれたら、私達のしていることは無駄ではないはず。
お屋敷に戻って、昨日干しておいたゼキキノコを回収してお鍋の中に放り込む。
「今日もお薬作りますよー!」
「リト様、あまり張り切らないで下さい。リト様が倒れられたら、殿下が倒れますからね?」
「ふっふー。大丈夫! 私はココに来なかった! オッケーですか?」
「それは無理ですよ」
「融通利かせて、臨機応変にいきましょ?」
「いえいえ、報告させていただきますから。ちゃんとお礼をしなくては、殿下に怒られてしまいます」
「えーっ、あっ! そうだ! だったら、ウィリアムさんが風邪が治ったら、おっきなケーキ作ってくれるのがお礼でどうですか?」
執事のアンゾロさんが、顎に手を置いて「ケーキ、ですか?」と、私を見つめる。
私は栗の入った袋を出して、「栗のケーキ! 絶対美味しいと思うんです!」と、当初の目的であるマロンケーキをアピールした。
「立派な栗ですね。これもリト様の森で採れたのですか?」
「はい! 絶対、ウィリアムさんに栗でケーキ作ってもらおうと思って、一生懸命拾ったんです!」
「わかりました。コック長にはその様に伝えておきます」
「えへへ。お誕生日ケーキだぁ~」
もう誕生日は過ぎて、私は十五歳になっているんだけどね。
でも、パンケーキの誕生日一人会より、ここで皆でケーキを食べてワイワイしたいんだよね。
「リト様はお誕生日なのですか?」
「もう過ぎちゃったんですけど、十五歳になりました」
「それはそれは、おめでとうございます」
「ありがとうございます!」
早くウィリアムさんが良くなると良いなぁ……
マロンケーキにヨダレが出そうになりつつも、ゼキキノコを煮つめていると、厨房にチェチェリンさんが慌てて入ってきた。
「大変です! 貴族の馬車がやってきました!」
「なんですって! チェチェリン、リト様をお願いします。対応は私が致しましょう」
「はい! お願いします!」
アンゾロさんがカツカツと足早に出て行き、私はチェチェリンさんに「少し見に行きません?」と、野次馬根性を出して、チェチェリンさんに「駄目です!」と、怒られていた。
でも、なにしに来たかは知りたいじゃないですか?
指をもじもじさせていると、アンゾロさんが厨房に戻って来て、私を呼んだ。
「リト様、お会いしていただきたい人物がいらっしゃいます。ご足労願えますか?」
「はーい。チェチェリンさん、お鍋見ててください~」
アンゾロさんが「昔馴染みですので、害は無いと思いますが、お気を付けください」と、少しピリピリした感じで言い、私も少し気持ちを改めて応接間に行く。
応接間は大きな暖炉と絵画が飾って合って、大きな鏡が飾ってあるテーブルと、少しゴージャスなソファチェアがある場所で、大きな鏡は裏から応接間の中が覗けるマジックミラーにもなっている。
ソファチェアに座らずに立って居る人は、灰色の小さな耳をしていて、体のがっしりした大きい人だった。
なんだか外国の大学卒業時に着てそうなローブ姿で、お爺さんとまではいかないけど、若くもないかなー? という年齢の人。
なんの動物だろう? 毛は……ないなぁ。
うーん、私のモフセンサーが反応しない。
でも、どこかで見た耳なんだよね……筒状の耳……あっ、サイだ! サイの獣人さんかー。
自分の中で答えが出て、小さく頷いていると、サイの獣人の人が会釈してくるので、私も頭を下げる。
「私はカンファルと申します。アンゾロ卿、このメイドが卿の言う方ですか?」
「こちらは、救済を申し出たところ、快く引き受けて下さったリト様です。メイド服なのは、看病の為に領内の人々の家を回るのに、ご自分の身分を隠しているからです。失礼の無い様に願います」
アンゾロさんに目で「挨拶を」と促されて、いつも通りの営業スマイルをする。
「初めまして。リトと申します。よろしくお願いいたします」
「失礼致しました。リト殿、貴女が無償で配っている飲み薬をうちの領でも配布してもらえないだろうか?」
「カンファルさんの領地はどこら辺なのですか?」
「リト様、カンファルの領地は王都より南下した場所にありますので、上から三番目の領地になります」
「だとしたら、ギリギリ、飲み薬が届くかどうかの場所ですね」
「そうなのです! 王都の方へ頼んでも無駄だと言われ、早馬で緊急を要する患者がいる場合は、ヴァンハロー領へ早馬を飛ばせ、と伝令があり、こうして来たのです」
確かに、危篤状態になっては大変なので、順次、獣騎を使いリヤカーで飲み薬を届けて貰っているけど、どうしても待てない人は、早馬でこちらに連絡を寄越せば薬を持たせるとは言ってある。
「危篤状態の方が居るのですか?」
「いえ、そこまで酷くは無いのですが、皆苦しんでいるのです。ですから、こうして自分の領地の者に配るのに、こちらの手を煩わせても申し訳ないと、馳せ参じました」
「でしたら__、決して、私利私欲に走らないと誓えますか? この薬は自分の領地の人へ必ず飲ませると、誓えますか?」
人を疑ってしまえば、キリが無いけど、苦しんでいる人達から搾取しようとする人は少なからず居る。
だからこそ、絶対に判断を誤ってはいけない。
「でしたら、カンファルの領へ私も同行致しましょう。そろそろアーデルカも復帰するでしょうから、この屋敷の事を彼女に任せ、私が見届けてまいります」
「それでしたら、安心ですね。と、言うことで大丈夫ですか? カンファルさん」
「ええ。少しでも早く領民を救わねばなりませんから。リト様の事、民達へ伝えますので、ご安心ください」
「いえ、私ではなく、イクシオン殿下の願いを聞いているだけですので、感謝はイクシオン殿下にお願いします」
面倒ごとはイクシオンに丸投げしてしまおう。うん。
この後、一時間程してゼキキノコの飲み薬を瓶詰した物を木箱につめて、アンゾロさんと共にカンファルさんは馬車で自分の領地に戻っていった。
一応、多めに持って行って貰ったので、余ったらアンゾロさんが他の領地にも届けてくれるそうだ。
「ふぅー、早くひと段落して、帰って冬越えの準備しなきゃなぁ……」
もう少し色々、採取したり、狩りもしたいんだよね。
コショウも今年のヤツがそろそろ採れ頃だろうしねー。
イクシオン、風邪引いて無きゃいいけど、大丈夫かな? 地図も持ってくれば良かった。
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