やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

文字の大きさ
104 / 167
2章

初夜準備

しおりを挟む
 結婚式が終わり、参列者の方々も帰宅を始め……足が少し踊り過ぎて疲れたかな? うーん。おでこに結婚印が出てしまうという失敗もしたけど、無事に終わって良かった。
休憩室で足を伸ばして「んーっ」と、体を解しているとアーデルカさんとメイドさん達が来て、「帰りましょう」と促される。

「イクスがまだみたいなんですけど……」
「良いのですよ。花婿は最後までお客様を送り届ける義務がありますので、花嫁は先に家に帰り、花婿を出迎える準備がありますからね」
「そうなんですか? お見送りなら私もするのに……」
「リト様、少しでも体を休ませておきませんと、体が持ちませんよ?」
「はーい」

 ここで駄々をこねてもメイドさん達の手を煩わせる事になるので大人しく、公爵家の馬車に乗ってお屋敷に帰ることにした。
花婿を出迎える準備って、普通に一緒に帰った方が良い気もするんだけどね。
馬車を往復させるのも大変な気がするんだけど……

 お屋敷に戻って、ウエディングドレスを脱がせてもらって、アップした髪も飾りを取って前髪がおでこに掛かると、何とか結婚印は隠れる範囲で、少しだけホッとした。
まぁ、イクシオンの妻になったのだから、堂々と見せても良いのだけど、おでこを人に一番初めに見られそうで……それはそれで恥ずかしいなーって、思う。

 大浴場に行ってメイドさん達になすがまま、洗われるがままの私は、式で踊りつかれていたのもあって、お風呂上りに全身マッサージでオイルを塗られている間に寝落ちしてしまい、揺り動かされて目を覚ました時には、とてもいい香りの私が出来上がっていた。

「なんだか、お花みたいなお菓子みたいな、甘くていい香りがしますね?」
「リト様の番特有の香りですわ」
「番特有の香りですか?」
「はい。こちらの香油を体に塗り込みますと、番のフェロモンを倍増させる事が出来ます」

 そう言ってメイミーさんが見せてくれたのは、パールピンクの丸いガラス瓶で、蓋を開けて貰ったけど、特に匂いがするわけじゃないようだ。
フェロモン……メスがオスを呼んだりする匂いだよねぇ?
うーん。エッチな響きだ。

「リト様、私達は本日から数日、おいとまさせて頂きますので、後はイクシオン殿下と仲良くお過ごしくださいませ」
「え? 皆さん、どこか行っちゃうんですか?」
「数日ですが、休暇を頂きましたので。デンやボンスケもビブロースが連れて行っておりますから、ご安心くださいませ」
「え? ええ? そうなんですか?」

 ゲッちゃん達まで連れて休暇とは申し訳ない様な……でも結婚式が日程が早まったのもあって、皆ここ数日寝ずに準備しててくれたしね。うん。仕方がないか―……

「お食事はキッチンにウィリアムが作り置きしていますが、全部、イクシオン殿下がご用意して下さると思います。では、わたくし達はこの辺で」
「リト様、頑張って下さいませ」
「はい。皆さんも休暇をゆっくり過ごしてください」

 部屋から出ていくメイドさん達を見送り、自分の体から香る甘い香りにフンフンと鼻を動かす。
そして、ようやく気付いた……
獣人の人は鼻がいいイコール番のフェロモンをここまでさせていたら、かなりのアピールをしてしまっているのではないかと……っ!?
いや、確かに式が終わったから、男女のする事は一つだけど、こんなアピールしまくりの状態って……

「ど、どうしよ……?」

 もう一度お風呂に入って流しちゃう? でも、折角メイドさん達が香油を塗ったのを無下にしてもいいのかなぁ?
って、待って!!
私の恰好が……透けたベビードールに透けた紐パンツなんだけど!?
ちょっ!! これは駄目! 流石に無理ぃぃ~っ!!

 せめて自分で準備した下着とかに穿き替えよう。

「あれ? この部屋、どこ?」

 寝落ちしたまま運ばれてたから、頭がぼやーんとしてたけど、この部屋は屋敷のどこー!?
随分大きな部屋で、ベッドも大きいし、キングサイズかな? 寝室なのは間違いないだろうけど、私はこのお屋敷の人が風邪の時に、各部屋をシーツ交換で走り回ったから、ここまで豪華な寝室は見逃してないはず……なんだけどなぁ。
でも三年前の記憶だし……
こっちでは三ヶ月だけど、三ヶ月の間に部屋を増やしたとか?

 ウロウロと部屋を見て回り、バタンと扉の音がしてメイドさん達の声が小さく聞こえ、再び扉が閉まる音がした。
メイドさん達が旅行カバンを持って出掛けていく姿が見えて、ここが一階だという事がわかる。

「皆、楽しそう……」

 久々の休暇かもしれないし、ゆっくり休んできてくれたら良いな。
でも数日って何日くらいなんだろう? 少し濁した感じで言われた気もしないでもない。

「あ、それより、着替えなきゃ」

 扉を開けて出ていこうと、扉に手をかけた時、外側に手が引っ張られ「わっわっ!」と声を出して、慌てれば「リト?」とイクシオンの声が上からした。
どうやら、イクシオンが扉を開けたのと、私が開けたのが同時だったっぽい。

「お、おかえりなさい」
「ただいま。どうしたんだ?」
「あっ、あのね。この部屋がどこか分からなくて、とりあえず自分の部屋に戻ろうと思ってたんだけど……」
「ああ、ここはオレとリトの寝室だ。この間、森に行っている間に用意させた」
「へっ? そうなの?」

 あ、そうか。夫婦になったなら、夫婦の寝室を用意する物だよね。
私はイクシオンの部屋をそのまま夫婦の部屋にするのかなー? とか、思っていたんだけど、公爵家ともなれば、部屋数も多いから用意出来ちゃうものなんだなぁ……

「リト、とりあえず中に入ろうか?」
「あ、うん」

 イクシオンに促されて部屋の中に戻り、後ろからギュッと抱きしめられる。
サラッとしたイクシオンの長い銀色の髪が、私の頬に当たり肩へ流れていく。
綺麗な長い髪。結婚したら男性は切るらしいけど、王様との謁見もあるし、イクシオンはどうするんだろう?
私との結婚は王様には知られないようにするみたいだけど……

「凄く甘い香りがする」
「あ、それ、番の匂いなんだって。私、こんないい香りじゃないはずなんだけど……」
「いいや、リトの香りだ。匂いが強いが、オレが初めて自分の『番』だと感じ取った匂いだ」
「そう、なんだ……恥ずかしいかも」
「恥ずかしがらなくていい、まぁ、恥ずかしがってるリトも可愛くて魅力的だけどね」

 甘い囁きに余計に恥ずかしくなって、心の中で身悶え中の私に、イクシオンが後ろから首筋にキスを落としてくる。
チュッと音を立てて、少し強く吸われて首筋が熱を持ったような気がする。

「お風呂に入って来るから、ベッドの上で待ってて」
「あ、はい……」

 イクシオンが部屋の中にある扉に入り、お風呂場はあそこなのかと、ぼんやり思いながら、吸われた首筋に手を当てて、ベッドの縁に座ると静かに柔らかくお尻が沈む。
ふわふわのベッド……ここで初夜なんだ……
ん? 初夜!? そうだ。まごう事なき初夜だーっ!!
意識した途端、一気に羞恥心でカチンコチンの私が出来上がっていた。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

番ではなくなった私たち

拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。 ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。 ──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。 アンとラルフの恋の行方は……? ※全5話の短編です。

処理中です...