黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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8章

人手不足

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 「冬は元気が出るな!」

 グリムレインがウキウキとしながら足取り軽くリビングを歩き回る。
アルビーが「どこが?」と、ムスッとしながら30cmほどの小ささになり、朱里に作ってもらった赤ん坊達とお揃いのアンゴラータ族の織物で作ったフード付きケープを羽織っている。

 冬眠時期のアルビーではあるが、リュエールとシュトラールが心配で中々冬眠できずに起きているため、温かい格好でうろついているのである。

「アカリ、2人共食べない?」

 アルビーがリビングのテーブルで困った顔をしている朱里に声を掛ける。
朱里がはリリスにお乳をあげながら、リュエールとシュトラールに離乳食をあげているが、2人は泣いてばかりで一向に食べてくれず、朱里が小さく溜息をつく。

「そろそろ離乳食とお乳の半々で良いって産医さんは言ってたんだけどなぁ・・・」

 リリスはまだ授乳期ではあるが、5ヶ月の双子はそろそろ離乳食に切り替えを準備する時期なのだが・・・、一口食べると茶碗返しとばかりにお皿を投げるので、直ぐにお皿をテーブルに避けて様子を見てはスプーンで口に運んでいる物のギャン泣きである。

 こんな時の優秀な従者のハガネ・・・は、蜜籠りの欠員で【刻狼亭】に貸し出しされてしまい、リロノスも手伝いに駆り出されてしまった。

 朱里の店はまだ育児休業中で準備期間という事もあって、【風雷商】とガルドアス領で委託販売の様な状態ではあるが、アンゴラータ族のケープの売れ行きが良いため、ある意味、朱里は今現在小金持ち状態になっている。
発案者なだけでデザイン料的な物が朱里の懐に入るのだが、貴族相手に売れているのでお金が良いのである。
ガルドアス領の子供達にもお給金が行っているので今年は路上生活を強いられている子供は居ないそうで、朱里としてもそれが嬉しい。

 話は逸れたが、今現在、蜜籠りに冬眠と人手が足りない状態で、ルーファスもハガネもリロノスも夜遅くまで働いている為に頼れるのは朱里自身とグリムレインとアルビーなのである。

「リリスちゃんはもう大丈夫かな?」

 背中を優しくぽんぽんと叩いてげっぷをさせて、ベビーベッドの上に丸めたタオルを置き、斜めにリリスを寝かせてお乳を吐いても大丈夫にする。

 泣いているリュエールを抱き上げて胸に置くと勢いよく吸い付かれ、もう片方の胸にシュトラールを置くとこちらも勢いよく吸い付いてくる。

「うーん・・・まだ授乳続けるべきなのかなぁ?」
「嫁の乳が聖属性で子供等も聖属性だから甘く感じるのだろう。だから離乳食を嫌がるのではないか?」
「アカリは甘い香りがするからねぇ」

 男手が居ないのでなるべく朱里としては双子には離乳食で頑張って欲しいところなのだが、そうもいかないらしい。
アルビーは冬眠しないように体を小さくしているし、グリムレインは冬の風物詩の雪を運んだりはしていないので力を暴走させないためにも30cmの小ささのドラゴンで動き回っているので、役には立たない。

 ただ、グリムレインがこの温泉大陸を丸ごとドームで覆って冬の外気から守ってくれているので寒さはマシなのが救いなところだ。
これで朱里が風邪でもひいて子供の世話をする人間が居なくなるのは本当にヤバいのである。

 双子2人にげっぷをさせて、ようやく食事の時間が終わると、次は朱里達自身の食事の時間になる。
どっと疲れがのしかかるが、食事は大事なのである。
食べなければ体力勝負の子育てが上手くいかない上に、お乳がストップしたら3人の子供達がお腹を空かせて大合唱になるのだけは避けなければいけない。

「はぁー・・・今年は襲撃者の子達も来なかったし、今年来てたらコキ使ってあげたのに」
「もう【刻狼亭】の16代目が誕生してる話が出回ってるからね。今来たら、就職だなんて言ってられないもの。【刻狼亭】が全員で排除に掛かっちゃうから依頼されても断っちゃうでしょ」
「今年は我もいるからな!我は強いぞー!」

 食事をしながら朱里が襲撃者のワンコ達は今年は来ないのかと、少し残念がりながら彼らが無事に良いところに就職できれば良いなぁと他人事ながら思ったりもする。

「今年はお正月も慌ただしかったし、休まる暇なかったねぇ」
「うん。リュエールとシュトラールとリリスの3人に構ってたらあっという間に過ぎてたよね」
「まだ正月は終わったばかりではないか!今年は始まったばかりなのだぞ?」

 お正月に【刻狼亭】で宴があったものの、赤ん坊の世話に振り回されて何をしていたかも記憶に怪しい。
今年の年袋は子供達3人が貰い、当分は年袋はこの3人が貰うのだろうと思うと、大きくなったらきっと年袋を何に使うか話したりして可愛いんだろうなと目を細める。
早く成長して、リュエールとシュトラールがありすを助けられたら、ありすにもリリスの成長を見てほしいと思う。
 
 リリスの成長記録は毎日スマートフォンに写真に撮って朱里が日記も書いている。
リュエールとシュトラールの日記もおかげで書く様になり、ルーファスが日中様子を見れない子供達の様子がわかるのが良いと朱里を褒めてくるので朱里の育児日記は日々書くことが多くなっている。
朱里の携帯も子供達の写真でいっぱいで、写真のメモリーを気にしないで撮れるのは便利だとアシュレイを褒めてあげたいところだ。

 双子は「あー」「うー」と、言うだけなので言葉にはなっていないが、ありすを救うためにも、双子の成長に少しの希望と期待を寄せて、今はただ育児に奮闘するしかないのである。
 
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