黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
196 / 960
8章

人手不足

しおりを挟む
 「冬は元気が出るな!」

 グリムレインがウキウキとしながら足取り軽くリビングを歩き回る。
アルビーが「どこが?」と、ムスッとしながら30cmほどの小ささになり、朱里に作ってもらった赤ん坊達とお揃いのアンゴラータ族の織物で作ったフード付きケープを羽織っている。

 冬眠時期のアルビーではあるが、リュエールとシュトラールが心配で中々冬眠できずに起きているため、温かい格好でうろついているのである。

「アカリ、2人共食べない?」

 アルビーがリビングのテーブルで困った顔をしている朱里に声を掛ける。
朱里がはリリスにお乳をあげながら、リュエールとシュトラールに離乳食をあげているが、2人は泣いてばかりで一向に食べてくれず、朱里が小さく溜息をつく。

「そろそろ離乳食とお乳の半々で良いって産医さんは言ってたんだけどなぁ・・・」

 リリスはまだ授乳期ではあるが、5ヶ月の双子はそろそろ離乳食に切り替えを準備する時期なのだが・・・、一口食べると茶碗返しとばかりにお皿を投げるので、直ぐにお皿をテーブルに避けて様子を見てはスプーンで口に運んでいる物のギャン泣きである。

 こんな時の優秀な従者のハガネ・・・は、蜜籠りの欠員で【刻狼亭】に貸し出しされてしまい、リロノスも手伝いに駆り出されてしまった。

 朱里の店はまだ育児休業中で準備期間という事もあって、【風雷商】とガルドアス領で委託販売の様な状態ではあるが、アンゴラータ族のケープの売れ行きが良いため、ある意味、朱里は今現在小金持ち状態になっている。
発案者なだけでデザイン料的な物が朱里の懐に入るのだが、貴族相手に売れているのでお金が良いのである。
ガルドアス領の子供達にもお給金が行っているので今年は路上生活を強いられている子供は居ないそうで、朱里としてもそれが嬉しい。

 話は逸れたが、今現在、蜜籠りに冬眠と人手が足りない状態で、ルーファスもハガネもリロノスも夜遅くまで働いている為に頼れるのは朱里自身とグリムレインとアルビーなのである。

「リリスちゃんはもう大丈夫かな?」

 背中を優しくぽんぽんと叩いてげっぷをさせて、ベビーベッドの上に丸めたタオルを置き、斜めにリリスを寝かせてお乳を吐いても大丈夫にする。

 泣いているリュエールを抱き上げて胸に置くと勢いよく吸い付かれ、もう片方の胸にシュトラールを置くとこちらも勢いよく吸い付いてくる。

「うーん・・・まだ授乳続けるべきなのかなぁ?」
「嫁の乳が聖属性で子供等も聖属性だから甘く感じるのだろう。だから離乳食を嫌がるのではないか?」
「アカリは甘い香りがするからねぇ」

 男手が居ないのでなるべく朱里としては双子には離乳食で頑張って欲しいところなのだが、そうもいかないらしい。
アルビーは冬眠しないように体を小さくしているし、グリムレインは冬の風物詩の雪を運んだりはしていないので力を暴走させないためにも30cmの小ささのドラゴンで動き回っているので、役には立たない。

 ただ、グリムレインがこの温泉大陸を丸ごとドームで覆って冬の外気から守ってくれているので寒さはマシなのが救いなところだ。
これで朱里が風邪でもひいて子供の世話をする人間が居なくなるのは本当にヤバいのである。

 双子2人にげっぷをさせて、ようやく食事の時間が終わると、次は朱里達自身の食事の時間になる。
どっと疲れがのしかかるが、食事は大事なのである。
食べなければ体力勝負の子育てが上手くいかない上に、お乳がストップしたら3人の子供達がお腹を空かせて大合唱になるのだけは避けなければいけない。

「はぁー・・・今年は襲撃者の子達も来なかったし、今年来てたらコキ使ってあげたのに」
「もう【刻狼亭】の16代目が誕生してる話が出回ってるからね。今来たら、就職だなんて言ってられないもの。【刻狼亭】が全員で排除に掛かっちゃうから依頼されても断っちゃうでしょ」
「今年は我もいるからな!我は強いぞー!」

 食事をしながら朱里が襲撃者のワンコ達は今年は来ないのかと、少し残念がりながら彼らが無事に良いところに就職できれば良いなぁと他人事ながら思ったりもする。

「今年はお正月も慌ただしかったし、休まる暇なかったねぇ」
「うん。リュエールとシュトラールとリリスの3人に構ってたらあっという間に過ぎてたよね」
「まだ正月は終わったばかりではないか!今年は始まったばかりなのだぞ?」

 お正月に【刻狼亭】で宴があったものの、赤ん坊の世話に振り回されて何をしていたかも記憶に怪しい。
今年の年袋は子供達3人が貰い、当分は年袋はこの3人が貰うのだろうと思うと、大きくなったらきっと年袋を何に使うか話したりして可愛いんだろうなと目を細める。
早く成長して、リュエールとシュトラールがありすを助けられたら、ありすにもリリスの成長を見てほしいと思う。
 
 リリスの成長記録は毎日スマートフォンに写真に撮って朱里が日記も書いている。
リュエールとシュトラールの日記もおかげで書く様になり、ルーファスが日中様子を見れない子供達の様子がわかるのが良いと朱里を褒めてくるので朱里の育児日記は日々書くことが多くなっている。
朱里の携帯も子供達の写真でいっぱいで、写真のメモリーを気にしないで撮れるのは便利だとアシュレイを褒めてあげたいところだ。

 双子は「あー」「うー」と、言うだけなので言葉にはなっていないが、ありすを救うためにも、双子の成長に少しの希望と期待を寄せて、今はただ育児に奮闘するしかないのである。
 
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。