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9章
魔術師と通行門
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通行門で騒ぎが起き、一人の男が捕縛された。
南国ミシリマーフ国出身の褐色の肌の男。
彼はトティッシュ・タイプ。
ミシリマーフ王国から彼は王家直下の魔術師として尽力する様に任命された人間。
国の為に、冬を連れて来ては土地を、作物を、枯らして人々を苦しめるドラゴン氷竜を退治するように命を受けた。
『悪しきドラゴンは退治しなくてはならない!』
ドラゴン信仰が薄れてきたミシリマーフ国でドラゴン退治は魔獣を倒す様な物と自分に言い聞かせてきた。
氷竜グリムレインは対話不可能なドラゴン。
それがミシリマーフ国での共通したグリムレインの認識。
『お前達魔術師は国の英雄になるのだ!』
グリムレインを退治するのは難しく、禁呪にまで手を出してようやく片目を潰すことが出来た。
呪詛で片目から虚無が生まれ、次第に弱り腐って死んでいくはずだった・・・。
しかし、1年後。
グリムレインは死んでおらず、お返しとばかりに荒れ狂った吹雪をミシリマーフや他の国に振りまいて行った。
『病魔といいドラゴンといい、邪教徒がドラゴンに国を滅ぼすよう仕向けたのだ』
王家から退治するまでは戻るなと言われ、死に物狂いで探した。
他の魔術師とも連携してようやく見つけ出したグリムレインは片目が治り、呑気に死の氷山と呼ばれる山の奥で惰眠を貪っていた。
寝ている隙に一斉攻撃をし、反撃をされたが、魔法反射の石のおかげで逆にグリムレインを瀕死に負わせ、グリムレインが海に沈んでいくのを遠目から見てようやく国に帰ることが許された。
ようやく退治出来た・・・。
『これでミシリマーフ国は新しく生まれ変わるのだ!』
それからは王家からの命令でドラゴン信仰の神官や信者達を邪教徒として排除するよう任命を受けた。
国は生まれ変わろうとしている。
その大事な時に、温泉大陸に逃げ込んだ神官の息子を追って来たら、通行許可が下りなかった。
おかしい。
ミシリマーフの王家直下の魔術師だと記載したのに許可が下りないのはおかしい!
再度、通行門に行き行列に並んでまで順番を待った。
「ミシリマーフ国の王家に信頼も厚い私が何故通行許可が下りないのだ!」
書類はちゃんと揃っている。
不備などない。
そこらの商人たちより身元もしっかりしているのに?!
門番や職員は困ったような顔をして職員窓口の中で何かを確認してはこちらの顔を見ている。
そして温泉大陸の許可証を審査する職員は一旦、書類を持って奥へと消えていった。
しばらくして職員が戻り、温泉大陸を取り仕切っている【刻狼亭】の印字されている着物を着た男が3人来た。
「申し訳ありません。書類の手違いがあったようです。温泉大陸の当主がお詫びに特等室を準備しておもてなしをしたいと申されまして、お迎えに上がりました」
「特別な許可証を発行させていただきますね。こちらはどの店でも提示していただければ【刻狼亭】の者が伺いますのでお持ちください」
「温泉大陸では安全の為、魔術師の方には魔法の行使制限をしていますので、こちらをしばらくお付けください。直ぐに外しますのでご案内させていただく間はご協力お願いいたしますね」
にこやかに笑って男が魔法制御の細い腕輪を両腕につけてきた。
しかし、丁寧な口調に穏やかな雰囲気で嫌な気はせず、まぁ郷に入っては郷に従えというし、直ぐに外してもらえるならと・・・男達について、ようやく温泉大陸へ入ることが出来た。
温泉街の活気の溢れる人の行き交う通りを3人の男について歩けば、温泉街の人々は【刻狼亭】の着物を着た3人を見ると頭を下げたり、挨拶を交わしていく。
黒塗りの豪奢な東風の建物の前に着くと、ピリピリと張り詰めるような空気が流れ、作り笑いの様な感情のない笑顔でフロントロビーの狐獣人と小さな狐獣人の双子の少女に迎えられる。
「一先ず、お話をさせていただきたいので料理をご用意させていただいていますから、こちらへどうぞ」
「いらっしゃいませ」
「ようこそ刻狼亭へ」
料亭内の仕切りのある高級感のある1室で既に食事の用意がされ、背の高い糸目の男が白い歯を見せながらヘラっと笑って料理の説明をしながら、他愛もない話をしていく。
「ミシリマーフ国はドラゴン信仰のある国なんですよね?」
「それは少し前だな。それは廃れた邪教の教えだ。ドラゴンなど害虫でしかない。いや、害獣か」
糸目の男は「そうなんですかー」と言いながら酒を注いでくる。
愛想の良い男で話も楽しく、ミシリマーフ国に興味があるらしく色々と国の事を聞いては相槌を打ってくる。
暫くするとふわふわとした高揚感と陶酔するような感覚がして酒の酔いが回ったのかと思ったら、ぐらりと世界が回る。
「ようやく効いたか。やっぱ即効性じゃねぇと効きが悪ぃな。色々聞きだすには丁度いいけど、改良が必要か」
糸目の男がテーブルの下から手の平程の壺を取り出し、懐にしまう。
こちらに目線をやると「特等室が用意されてるぜ?」と目を開けて冷たい声色で喋る。
先程までの愛想の良い男とは思えない声色をしていた。
薄れていく意識の中で「連れていけ」と声がし、「意外と間抜けというかアッサリでしたね」と声がした。
再び目を開けると座敷牢の様な少し薄暗い場所に寝かされていた。
ギィ・・・と、音を立てて扉が開くと氷の色をした髪に金色の目をした長身の男が入ってくる。
「久しぶりだな。ミシリマーフの魔術師」
「誰だ!お前は・・・っ」
男は片目を指さして薄く笑う。
「我の目に呪詛を掛け、5年前は寝ているところを奇襲しておいて・・・ああ、姿を変えているから判らんのか」
ゆらっと男が姿を変え、男は体のサイズは小さいが氷竜グリムレインの姿に変わる。
「お前は退治したはずだ・・・何故・・・」
「我には我を癒し、助けてくれる主と友がいるからな」
氷竜グリムレインは対話が出来ないドラゴンのはずなのに、対話をしている。
何故だ?
ドラゴン信仰の神官の息子の仕業だろうか?
邪教だ・・・やはり、ドラゴンと対話をして国を滅ぼそうとしている邪教だ。
あの神官と息子や信者達は国を破滅させようとドラゴンを使っているに違いない!
南国ミシリマーフ国出身の褐色の肌の男。
彼はトティッシュ・タイプ。
ミシリマーフ王国から彼は王家直下の魔術師として尽力する様に任命された人間。
国の為に、冬を連れて来ては土地を、作物を、枯らして人々を苦しめるドラゴン氷竜を退治するように命を受けた。
『悪しきドラゴンは退治しなくてはならない!』
ドラゴン信仰が薄れてきたミシリマーフ国でドラゴン退治は魔獣を倒す様な物と自分に言い聞かせてきた。
氷竜グリムレインは対話不可能なドラゴン。
それがミシリマーフ国での共通したグリムレインの認識。
『お前達魔術師は国の英雄になるのだ!』
グリムレインを退治するのは難しく、禁呪にまで手を出してようやく片目を潰すことが出来た。
呪詛で片目から虚無が生まれ、次第に弱り腐って死んでいくはずだった・・・。
しかし、1年後。
グリムレインは死んでおらず、お返しとばかりに荒れ狂った吹雪をミシリマーフや他の国に振りまいて行った。
『病魔といいドラゴンといい、邪教徒がドラゴンに国を滅ぼすよう仕向けたのだ』
王家から退治するまでは戻るなと言われ、死に物狂いで探した。
他の魔術師とも連携してようやく見つけ出したグリムレインは片目が治り、呑気に死の氷山と呼ばれる山の奥で惰眠を貪っていた。
寝ている隙に一斉攻撃をし、反撃をされたが、魔法反射の石のおかげで逆にグリムレインを瀕死に負わせ、グリムレインが海に沈んでいくのを遠目から見てようやく国に帰ることが許された。
ようやく退治出来た・・・。
『これでミシリマーフ国は新しく生まれ変わるのだ!』
それからは王家からの命令でドラゴン信仰の神官や信者達を邪教徒として排除するよう任命を受けた。
国は生まれ変わろうとしている。
その大事な時に、温泉大陸に逃げ込んだ神官の息子を追って来たら、通行許可が下りなかった。
おかしい。
ミシリマーフの王家直下の魔術師だと記載したのに許可が下りないのはおかしい!
再度、通行門に行き行列に並んでまで順番を待った。
「ミシリマーフ国の王家に信頼も厚い私が何故通行許可が下りないのだ!」
書類はちゃんと揃っている。
不備などない。
そこらの商人たちより身元もしっかりしているのに?!
門番や職員は困ったような顔をして職員窓口の中で何かを確認してはこちらの顔を見ている。
そして温泉大陸の許可証を審査する職員は一旦、書類を持って奥へと消えていった。
しばらくして職員が戻り、温泉大陸を取り仕切っている【刻狼亭】の印字されている着物を着た男が3人来た。
「申し訳ありません。書類の手違いがあったようです。温泉大陸の当主がお詫びに特等室を準備しておもてなしをしたいと申されまして、お迎えに上がりました」
「特別な許可証を発行させていただきますね。こちらはどの店でも提示していただければ【刻狼亭】の者が伺いますのでお持ちください」
「温泉大陸では安全の為、魔術師の方には魔法の行使制限をしていますので、こちらをしばらくお付けください。直ぐに外しますのでご案内させていただく間はご協力お願いいたしますね」
にこやかに笑って男が魔法制御の細い腕輪を両腕につけてきた。
しかし、丁寧な口調に穏やかな雰囲気で嫌な気はせず、まぁ郷に入っては郷に従えというし、直ぐに外してもらえるならと・・・男達について、ようやく温泉大陸へ入ることが出来た。
温泉街の活気の溢れる人の行き交う通りを3人の男について歩けば、温泉街の人々は【刻狼亭】の着物を着た3人を見ると頭を下げたり、挨拶を交わしていく。
黒塗りの豪奢な東風の建物の前に着くと、ピリピリと張り詰めるような空気が流れ、作り笑いの様な感情のない笑顔でフロントロビーの狐獣人と小さな狐獣人の双子の少女に迎えられる。
「一先ず、お話をさせていただきたいので料理をご用意させていただいていますから、こちらへどうぞ」
「いらっしゃいませ」
「ようこそ刻狼亭へ」
料亭内の仕切りのある高級感のある1室で既に食事の用意がされ、背の高い糸目の男が白い歯を見せながらヘラっと笑って料理の説明をしながら、他愛もない話をしていく。
「ミシリマーフ国はドラゴン信仰のある国なんですよね?」
「それは少し前だな。それは廃れた邪教の教えだ。ドラゴンなど害虫でしかない。いや、害獣か」
糸目の男は「そうなんですかー」と言いながら酒を注いでくる。
愛想の良い男で話も楽しく、ミシリマーフ国に興味があるらしく色々と国の事を聞いては相槌を打ってくる。
暫くするとふわふわとした高揚感と陶酔するような感覚がして酒の酔いが回ったのかと思ったら、ぐらりと世界が回る。
「ようやく効いたか。やっぱ即効性じゃねぇと効きが悪ぃな。色々聞きだすには丁度いいけど、改良が必要か」
糸目の男がテーブルの下から手の平程の壺を取り出し、懐にしまう。
こちらに目線をやると「特等室が用意されてるぜ?」と目を開けて冷たい声色で喋る。
先程までの愛想の良い男とは思えない声色をしていた。
薄れていく意識の中で「連れていけ」と声がし、「意外と間抜けというかアッサリでしたね」と声がした。
再び目を開けると座敷牢の様な少し薄暗い場所に寝かされていた。
ギィ・・・と、音を立てて扉が開くと氷の色をした髪に金色の目をした長身の男が入ってくる。
「久しぶりだな。ミシリマーフの魔術師」
「誰だ!お前は・・・っ」
男は片目を指さして薄く笑う。
「我の目に呪詛を掛け、5年前は寝ているところを奇襲しておいて・・・ああ、姿を変えているから判らんのか」
ゆらっと男が姿を変え、男は体のサイズは小さいが氷竜グリムレインの姿に変わる。
「お前は退治したはずだ・・・何故・・・」
「我には我を癒し、助けてくれる主と友がいるからな」
氷竜グリムレインは対話が出来ないドラゴンのはずなのに、対話をしている。
何故だ?
ドラゴン信仰の神官の息子の仕業だろうか?
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