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9章
ダリドア
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決死の覚悟で朱里の血を媒介に呪詛の金属板の魔法陣を発動させ、浄化と相打ちになってくれる様に願いを込めて試みたが、それは失敗したと思っていたのに、どうした事か・・・。
ダリドアは自分の呪詛に蝕まれていた筈の腕を見る。
綺麗さっぱり呪詛は消え、死んであとは肉塊になるだけだった自分が生きていることに驚きを隠せない。
ダリドアは魔術師の反撃にあい金属板を埋め込まれ、肉塊になり、金属板でまた人型に戻り、全てを理解したはずだった。
この呪いを完全に消す方法を見付けなければ、大事な主も主の父親も幼馴染も自分の様に訳の分からない歩き回る死体になってしまうと。
打ち消せる浄化の力を持つ【聖女】が亡くなり、女将だけが頼みの綱だったが、脆くも失敗した・・・主のイルマールに遺言の様な言葉まで残したのに。
もう自分は死人だと思って居たのに、何故生きているのか?
解らない物を抱えたまま、女将に狼藉を働いたとして拘束された。
自分の仕出かした事なので潔く罪は受け入れるし、捨てた命に未練はない。
ただ、出来る事ならばイルマールに罪の余波が行かなければいいと思って居る。
白い壁の牢で自分を見るテンという男は、自分の話を聞きながらニコニコしている。
「あなたは死人なんですかぁ?そうは見えませんけど、でもまぁ、少し前に呪詛で亡くなったトティッシュ・タイプという魔術師も肉塊から人型に戻ったりしてましたねぇ。あの人も生きてたりしたんですかねぇ?もう燃やしてしまいましたけどぉ」
「オレも不思議だ。死ぬつもりで足掻いたのに、呪詛はどこに消えたのか・・・」
「呪詛に使われていたドラゴンの死体が消えた事で呪詛が使えなくなったらしいですよぉ」
「ドラゴンを使った呪詛・・・?ドラゴン信仰をしていたミシマリーフ国でドラゴンの死体を使うなんて・・・」
「だからこそ、あなた方ドラゴン信仰の神官や従者が狙われたのでは?王家が何百年と呪詛に漬け込んでドラゴンの死体を隠していたそうですよぉ。ミシマリーフ国はドラゴンの呪詛を使って色々と悪さをしようとしていたみたいですし、事がバレれば国民から文句を言われますからぁ、その前にドラゴン信仰を消してしまいたかったんでしょうねぇ」
テンがのんびりとした口調で話しながら「まぁドラゴンの死体が消えた今、呪詛は使えませんし、どうするのやらですけどねぇ」とダリドアに笑って見せる。
「うちの女将が人の良い事を言っていたのですけどね、『あなたに助けられた過去と、あなたが私に呪詛を掛けたからこそ、呪詛に捕らえられていたドラゴンが自由になった。だから私は許すから、あとはあなたがどうしたいかで動いて下さい』だそうですよ」
テンが牢の鍵をくるくると指で回しながら、「どうしますかぁ?」とダリドアに聞いて、出入り口の扉を見つめて「入ってどうぞ」と声を出す。
牢に入って来たのはイルマールとエスタークの2人で、2人共怒った顔で唇を噛みしめてダリドアを前に座り込む。
「ダリドア、お前がバカやってもおれはお前の主だからな!一緒に謝ってやるから、安心して戻ってこい!」
「主が頭を下げてお前に戻ってこいって言ってるんだ!戻ってこい!ダリドア!」
「主、エスターク。オレは多分もう死んでる。いつ死体に戻るかわかりませんよ?」
ダリドアが眉を下げながら笑うと、イルマールとエスタークが「最期まで付き合ってやる」と声を揃えて手を差し伸べて、ダリドアがテンに「鍵を開けてください」と言いテンが牢の鍵を開ける。
「主、最期まで付き合ってくださいよ?」
「わかってる。お前が生きて様と死んで様とおれを『主』と呼ぶ限りは主で居る」
「主同様、お前がお前で居るならオレ達は主の従者なのを忘れるな」
テンに頭を下げながら3人が出ていくと、テンが「皆甘いんですから」と1人クスリと笑って「小鬼でも揶揄いに行きますかね」と牢から出ていく。
後日、朱里がエデンを連れてダリドアに会いに来る。
「エデンからあなたに伝言です『呪詛で死んだのはドラゴンの部分だけ。あなたはドラゴン・ハーフじゃ無くなった。短い生を大事に生きなさい』って、言ってました。なので、大事に生きてくださいね」
朱里がそれだけ言うとエデンと一緒にまた帰っていった。
ダリドアは自分の呪詛に蝕まれていた筈の腕を見る。
綺麗さっぱり呪詛は消え、死んであとは肉塊になるだけだった自分が生きていることに驚きを隠せない。
ダリドアは魔術師の反撃にあい金属板を埋め込まれ、肉塊になり、金属板でまた人型に戻り、全てを理解したはずだった。
この呪いを完全に消す方法を見付けなければ、大事な主も主の父親も幼馴染も自分の様に訳の分からない歩き回る死体になってしまうと。
打ち消せる浄化の力を持つ【聖女】が亡くなり、女将だけが頼みの綱だったが、脆くも失敗した・・・主のイルマールに遺言の様な言葉まで残したのに。
もう自分は死人だと思って居たのに、何故生きているのか?
解らない物を抱えたまま、女将に狼藉を働いたとして拘束された。
自分の仕出かした事なので潔く罪は受け入れるし、捨てた命に未練はない。
ただ、出来る事ならばイルマールに罪の余波が行かなければいいと思って居る。
白い壁の牢で自分を見るテンという男は、自分の話を聞きながらニコニコしている。
「あなたは死人なんですかぁ?そうは見えませんけど、でもまぁ、少し前に呪詛で亡くなったトティッシュ・タイプという魔術師も肉塊から人型に戻ったりしてましたねぇ。あの人も生きてたりしたんですかねぇ?もう燃やしてしまいましたけどぉ」
「オレも不思議だ。死ぬつもりで足掻いたのに、呪詛はどこに消えたのか・・・」
「呪詛に使われていたドラゴンの死体が消えた事で呪詛が使えなくなったらしいですよぉ」
「ドラゴンを使った呪詛・・・?ドラゴン信仰をしていたミシマリーフ国でドラゴンの死体を使うなんて・・・」
「だからこそ、あなた方ドラゴン信仰の神官や従者が狙われたのでは?王家が何百年と呪詛に漬け込んでドラゴンの死体を隠していたそうですよぉ。ミシマリーフ国はドラゴンの呪詛を使って色々と悪さをしようとしていたみたいですし、事がバレれば国民から文句を言われますからぁ、その前にドラゴン信仰を消してしまいたかったんでしょうねぇ」
テンがのんびりとした口調で話しながら「まぁドラゴンの死体が消えた今、呪詛は使えませんし、どうするのやらですけどねぇ」とダリドアに笑って見せる。
「うちの女将が人の良い事を言っていたのですけどね、『あなたに助けられた過去と、あなたが私に呪詛を掛けたからこそ、呪詛に捕らえられていたドラゴンが自由になった。だから私は許すから、あとはあなたがどうしたいかで動いて下さい』だそうですよ」
テンが牢の鍵をくるくると指で回しながら、「どうしますかぁ?」とダリドアに聞いて、出入り口の扉を見つめて「入ってどうぞ」と声を出す。
牢に入って来たのはイルマールとエスタークの2人で、2人共怒った顔で唇を噛みしめてダリドアを前に座り込む。
「ダリドア、お前がバカやってもおれはお前の主だからな!一緒に謝ってやるから、安心して戻ってこい!」
「主が頭を下げてお前に戻ってこいって言ってるんだ!戻ってこい!ダリドア!」
「主、エスターク。オレは多分もう死んでる。いつ死体に戻るかわかりませんよ?」
ダリドアが眉を下げながら笑うと、イルマールとエスタークが「最期まで付き合ってやる」と声を揃えて手を差し伸べて、ダリドアがテンに「鍵を開けてください」と言いテンが牢の鍵を開ける。
「主、最期まで付き合ってくださいよ?」
「わかってる。お前が生きて様と死んで様とおれを『主』と呼ぶ限りは主で居る」
「主同様、お前がお前で居るならオレ達は主の従者なのを忘れるな」
テンに頭を下げながら3人が出ていくと、テンが「皆甘いんですから」と1人クスリと笑って「小鬼でも揶揄いに行きますかね」と牢から出ていく。
後日、朱里がエデンを連れてダリドアに会いに来る。
「エデンからあなたに伝言です『呪詛で死んだのはドラゴンの部分だけ。あなたはドラゴン・ハーフじゃ無くなった。短い生を大事に生きなさい』って、言ってました。なので、大事に生きてくださいね」
朱里がそれだけ言うとエデンと一緒にまた帰っていった。
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