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9章
神官と花
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今年も『踊り子』達が温泉大陸へやって来た。
しかし、対応するはずの【刻狼亭】は人手不足で彼らの色恋流血沙汰にまで手が回せる余地は無い。
古文書に記されていた呪詛を解呪する薬草と鉱物から作ったポーションに朱里とありすが魔力を合わせて完全無効化のポーションが出来た事から、量産体制に入り、ミシリマーフ国の奴隷の買い付け等に潜入した【刻狼亭】の密偵と手引きをしてくれているミシリマーフ国の協力者が仕掛けるなら今だと合図があり、ミシリマーフ国に冬眠期間ではない戦闘系の従業員が出払ってしまった為に、今現在【刻狼亭】に残っている従業員は非戦闘員の技術系特化の人間ばかり。
製薬部隊は副責任者のテッチが【刻狼亭】に残っているだけで他の4人はミシリマーフ国へ回復役として付いて行っている為に、何かある度にテッチが駆け回っている。
多少の『踊り子』とのいざこざはポーションピッチャーよろしくテッチが景気よくポーションを投げつけて対応している。
「いい加減にしろ!面倒ごと起こすな!」
テッチの叫びが今日も料亭に響く。『踊り子』は基本【刻狼亭】の旅館には泊まれないが、料亭へは食事に来ることは止めていないので、好い人を見付けては料亭で飲み食いしていくのだが、やはりトラブルを起こすのでテッチが救護班として走り回る毎日を送っている。
「テッチ大丈夫ですか?」
朱里が白い着物で久々の客案内をしながら料亭を歩き回り、リュエールとシュトラールがその後を白と黒の半々の柄の着物を着て付いて回っている。
「大丈夫です。もう1人でやってると慣れてきましたよ」
「流石テッチです」
「「テッチガンバって!」」
「女将も坊ちゃん達も無理しない程度にしてくださいね」
「「「はーい」」」
笑顔で返事をしてまた新しい客に案内をしに行くと、入店したのはテルトワイトだった。
後ろには『踊り子』達がしなだれかかる様についてきている。
まるで『踊り子』達を率いているのがテルトワイトのようにも見える。
「テルトワイトさんいらっしゃいませ」
「こんにちは『踊り子』を回収にきました」
「あら、そうなんですか?」
「ええ、ご迷惑を掛けていそうなので私に『踊り子』は任せておいてください」
にこやかに笑いテルトワイトが店内にいる『踊り子』に微笑むと黄色い声が上がりテルトワイトの元へ『踊り子』が集まっていく。
それはまるで蝶が花に引き寄せられる様に・・・。
「では、お邪魔しました。さぁ皆さん行きましょうか」
「「「はぁーい」」」
テッチと朱里が目を丸くしながらテルトワイトを見送り、ポカンとした口を手で戻しながら「今のは一体何だったんでしょうね」「手玉にとってましたね」とブルッと体を震わせる。
確かにテルトワイトは綺麗な男の人ではあるけれど、あんなに魅了を専売特許としている『踊り子』達を逆に魅了し返している姿は怖い物がある。
イルマールやエスタークにダリドアは一緒にミシリマーフ国へ行ってしまったが、テルトワイトはミシリマーフ国へは行かず、温泉大陸に留まっている。
神官として人々に姿を覚えられている彼は治療魔法は役に立つかもしれないが、今回は朱里とありすの回復ポーションで瞬時回復で特攻して制圧を仕掛ける作戦らしく、呑気に回復魔法を掛けてもらってる暇はなく、足手まといにしかならない為に、テルトワイトは留守番組になっていた。
1人で何をしているかと思えば『踊り子』達を手玉に取って侍らせている状態である。
特に色っぽい情事があるわけでもなく、ただ華やかに練り歩いては『踊り子』達を回収して足湯に浸かってお喋りを和やかにしている感じで、温泉街の今話題の人だったりする。
「まぁ、厄介ごとが減ってくれるから助かるけどね」
「『踊り子』が逆に奢ってるところ初めて見た」
「何も仕出かさなきゃ華やかでいいねぇ」
・・・と、温泉街では言われている。
「神官の徳の高さに『踊り子』が魅了されてるんじゃないですかねぇ?」
「冬場だけテルトワイトさんを治安維持に雇います?」
「あの人って何か毒気抜かれるから、毒花達も毒抜きされてんでしょ?」
・・・と、【刻狼亭】では言われている。
今年も終わろうという時期に温泉大陸は表面上は穏やかな毎日を過ごしていた。
年末の忙しさを慌ただしく過ごし、来年の準備をする為に走り回っている感じだ。
朱里も双子達もそんな年末の人手不足に走り回るくらいには忙しく過ごしている。
「早く父上たちかえってくると良いね。母上」
「お土産あるかなぁ。ね?母上」
「ふふ。そうだね。2人共父上が帰ってくるまで頑張ろうね」
ミシリマーフ国に商談という形で入国したルーファスに3人は「今頃何をしているだろう?」と思いつつ、料亭にきたお客さんに品よく「いらっしゃいませ。ようこそ【刻狼亭】へ」と笑顔を浮かべて出迎える。
しかし、対応するはずの【刻狼亭】は人手不足で彼らの色恋流血沙汰にまで手が回せる余地は無い。
古文書に記されていた呪詛を解呪する薬草と鉱物から作ったポーションに朱里とありすが魔力を合わせて完全無効化のポーションが出来た事から、量産体制に入り、ミシリマーフ国の奴隷の買い付け等に潜入した【刻狼亭】の密偵と手引きをしてくれているミシリマーフ国の協力者が仕掛けるなら今だと合図があり、ミシリマーフ国に冬眠期間ではない戦闘系の従業員が出払ってしまった為に、今現在【刻狼亭】に残っている従業員は非戦闘員の技術系特化の人間ばかり。
製薬部隊は副責任者のテッチが【刻狼亭】に残っているだけで他の4人はミシリマーフ国へ回復役として付いて行っている為に、何かある度にテッチが駆け回っている。
多少の『踊り子』とのいざこざはポーションピッチャーよろしくテッチが景気よくポーションを投げつけて対応している。
「いい加減にしろ!面倒ごと起こすな!」
テッチの叫びが今日も料亭に響く。『踊り子』は基本【刻狼亭】の旅館には泊まれないが、料亭へは食事に来ることは止めていないので、好い人を見付けては料亭で飲み食いしていくのだが、やはりトラブルを起こすのでテッチが救護班として走り回る毎日を送っている。
「テッチ大丈夫ですか?」
朱里が白い着物で久々の客案内をしながら料亭を歩き回り、リュエールとシュトラールがその後を白と黒の半々の柄の着物を着て付いて回っている。
「大丈夫です。もう1人でやってると慣れてきましたよ」
「流石テッチです」
「「テッチガンバって!」」
「女将も坊ちゃん達も無理しない程度にしてくださいね」
「「「はーい」」」
笑顔で返事をしてまた新しい客に案内をしに行くと、入店したのはテルトワイトだった。
後ろには『踊り子』達がしなだれかかる様についてきている。
まるで『踊り子』達を率いているのがテルトワイトのようにも見える。
「テルトワイトさんいらっしゃいませ」
「こんにちは『踊り子』を回収にきました」
「あら、そうなんですか?」
「ええ、ご迷惑を掛けていそうなので私に『踊り子』は任せておいてください」
にこやかに笑いテルトワイトが店内にいる『踊り子』に微笑むと黄色い声が上がりテルトワイトの元へ『踊り子』が集まっていく。
それはまるで蝶が花に引き寄せられる様に・・・。
「では、お邪魔しました。さぁ皆さん行きましょうか」
「「「はぁーい」」」
テッチと朱里が目を丸くしながらテルトワイトを見送り、ポカンとした口を手で戻しながら「今のは一体何だったんでしょうね」「手玉にとってましたね」とブルッと体を震わせる。
確かにテルトワイトは綺麗な男の人ではあるけれど、あんなに魅了を専売特許としている『踊り子』達を逆に魅了し返している姿は怖い物がある。
イルマールやエスタークにダリドアは一緒にミシリマーフ国へ行ってしまったが、テルトワイトはミシリマーフ国へは行かず、温泉大陸に留まっている。
神官として人々に姿を覚えられている彼は治療魔法は役に立つかもしれないが、今回は朱里とありすの回復ポーションで瞬時回復で特攻して制圧を仕掛ける作戦らしく、呑気に回復魔法を掛けてもらってる暇はなく、足手まといにしかならない為に、テルトワイトは留守番組になっていた。
1人で何をしているかと思えば『踊り子』達を手玉に取って侍らせている状態である。
特に色っぽい情事があるわけでもなく、ただ華やかに練り歩いては『踊り子』達を回収して足湯に浸かってお喋りを和やかにしている感じで、温泉街の今話題の人だったりする。
「まぁ、厄介ごとが減ってくれるから助かるけどね」
「『踊り子』が逆に奢ってるところ初めて見た」
「何も仕出かさなきゃ華やかでいいねぇ」
・・・と、温泉街では言われている。
「神官の徳の高さに『踊り子』が魅了されてるんじゃないですかねぇ?」
「冬場だけテルトワイトさんを治安維持に雇います?」
「あの人って何か毒気抜かれるから、毒花達も毒抜きされてんでしょ?」
・・・と、【刻狼亭】では言われている。
今年も終わろうという時期に温泉大陸は表面上は穏やかな毎日を過ごしていた。
年末の忙しさを慌ただしく過ごし、来年の準備をする為に走り回っている感じだ。
朱里も双子達もそんな年末の人手不足に走り回るくらいには忙しく過ごしている。
「早く父上たちかえってくると良いね。母上」
「お土産あるかなぁ。ね?母上」
「ふふ。そうだね。2人共父上が帰ってくるまで頑張ろうね」
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