黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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9章

熱い国

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 南国ミシリマーフ国に着くと熱くて乾いた空気が地面から上がってくる。

 高速船【刻狼丸】と【風雷商】の貨物船の2隻で入港し、ルーファスと【風雷商】のアシュレイが港で顔を合わせるとお互いに久しぶりだと口に出しながら、荷を船から運び出させる。

「お前の所の番は元気か?」
「ああ。今、3人目が出来た所でな来年の初夏には家族が増える」
「ほぉ、やはり子供はいいものだろう?」
「初めから子供を否定はしていないぞオレは。お前こそ恋人と結婚したらどうだ?子供が3人も居て結婚をしないのはどうかと思うぞ?」
「それなら4人目が出来た時に結婚しないなら出ていくと言われて、出ていかれたよ」
「お前・・・そこまで結婚しないのに拘るのはある意味すごいな」

 ルーファスとアシュレイが家庭の話をしながら、目的の人物が来るのを待っていると、ようやくその人物が港に現れる。

 灰色の髪にコバルトブルーの瞳をした痩せ型の神経質そうな男ジャガール・リンデルが部下を引き連れて現れルーファスとアシュレイに「荷は宮殿に運ばせるように」と言い、部下の男から宮殿に荷を運ぶ許可証を渡される。
 荷物の内容名は『酒瓶』『酒樽』『穀物』と、食べ物の名がずらりと並んでいる。
この国は作物を輸入で賄っている事もあり、こうした輸入品は多く出入りしている為に割りと入国しやすい国でもある。

 ジャガールに連れられ2人はそれぞれ【刻狼亭】と【風雷商】の従業員数名と一緒にジャガールの屋敷に通される。
他の住民が土壁づくりの茶色い家に比べて、ジャガールの家は物は少ないが白塗りの家で床は大理石で出来ていて、カーペットは華美過ぎないが赤に金糸が使われていて質の良い物が使われている。
 広々とした応接間に通されると狐獣人の幼女メビナがルーファスに駆け寄る。

「ルーファス!お疲れ様!暑かったでしょう?」
「メビナ、お疲れさん。ああ、暑いな」
「何か冷たい物持ってくる!」
 くるくると尻尾を振りながらメビナが部屋を出ていこうとするとジャガールの部下がレモーネの入った水差しとグラスを持って現れるとメビナがそれを受け取る。

 グラスに水を注ぎながらルーファス達に差し出しメビナがぐいーっと一気飲みする。
「ぷはーっ!」
「お前も飲むのか!」
「毒見は常識!」
呆れた声を出した従業員に扮したダリドアにメビナがフンッと鼻で笑う。
その様子を笑いながらジャガールが見つめ、ルーファスも仕方がない奴らめと苦笑いしながらグラスに口を付ける。


「さて、ジャガール殿。捕らえられた奴隷の状況を教えてくれ」
「今日の夜に奴隷船が密入港し、30人ほど追加されますので150人以上が王宮の地下に捕らえられています。状態はあまりよくは無いです。呪詛の前段階の呪術が発動していますから早急に打ち消さないと奴隷も危ないですが、呪術も完成してしまいます」

 ジャガールが王宮の地図を出し、奴隷の捕らえられている地下を指さし、ルーファスが地図を覚えながら、この広さに150人は狭すぎないか?と、眉間にしわを寄せる。
恐らくはすし詰め状態にされて、この暑い中を苦しんでいるのだろう。

「ならば、今日中に片付けるのが得策か」
「王宮への秘密の抜け穴は幾つかありますが、一番近いのは使われていない古井戸からでしょうね」
「他の場所からも侵入させる。王宮に荷が届いたと連絡があり次第、各部隊突入させる。短期決戦で終わらせる。アシュレイ、荷から連絡は?」

 ルーファスがアシュレイに話しかけるとアシュレイは魔法通信の指輪と腕輪に話しかけながら応対を繰り返している。
「荷がどうやら地下倉庫に入れられたらしいんだが、鍵を掛けられたようだ。別部隊で鍵を壊さないといけない」
「そうか。ならば、合図があり次第、各部隊に突入の指示を出してくれ」
「分かった。オレはあくまで非戦闘員の商人なんでな。オレはここらで船に退散させてもらう」

 部屋に冷気がサァーッと広がると、メビナが厚手の服をバッと着こみ鎖鎌を出して狐火を周りにまとわせる。

「どうやらアシュレイ。少し作戦が早まったようだ。急いで港に行かないと凍らされるぞ」
「やれやれだな。じゃあ各部隊にここで連絡を取っておくさ」

 ドォーンドォーン・・・。
ミシリマーフ王国の上空にグリムレインが現れると魔術師達との交戦が始まり、魔法反射の腕輪を付けているグリムレインが相手の魔法を反射して王都に雷が落ちている。

「戦闘開始だ!雷が落ちた所に反射された魔術師が居るはずだ!魔術師を各部隊撃破のちに王宮へ!」

 アシュレイが各部隊に貸し出した指輪と腕輪に指示を飛ばし、静かにミシリマーフ国内で影が一斉に動き出す。
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