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15章
美味しいを探して⑪
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懐かしい匂いに懐かしい声重い様な軽い様な重量が自分の上にある。
黒い小さな尻尾が目の前にあって、何だろう?と思ったら、顎に小さい足が掛かる。
「こら!おチビちゃんダメだよ!油断も隙もないね、おチビちゃんは」
明るい声がして小さな足が持ち上げられる。持ち上げた人を見上げれば、エルフの少女キリンが弟のエルシオンを抱き上げていた。
目が合うと、ニコッとキリンが笑って「シュー君起きましたよー!」と、声を出す。
直ぐに見知った顔が勢ぞろいしてハガネの「このバカ!」から始まり、朱里が「誘拐されたと思った!連絡1つ寄越さないなんて何考えてるの?!」とポカポカ叩き、「兄様は妹の誕生日をすっぽかす薄情者なのですか!」とこれまたポカポカ叩かれた。
帰ってきたのかと、睡眠ポーションで働かない頭で思いながら、冷水を浴びせられたように意識が覚醒していく。
「フィリア!フィリアは?!」
スパンと、リュエールに叩かれ「まずは皆にごめんなさいでしょ!」と叱られる。
解ってはいるけれど、心配なのはフィリアニルンただ1人なのだと思いつつも、泣きながら自分にしがみ付くアルビーや妹達を見ていたら、自分がどれだけ心配をかけたのかようやく自覚する。
「皆、心配かけてごめんなさい・・・」
「本当に心配したんだからね!毎日、シューちゃんが何かの事件に巻き込まれたんじゃないかとか、騙されて悪い事に巻き込まれたんじゃないかとか、いっぱい、心配、した・・・また家族が、死んだりは・・・嫌なの」
朱里がぽろぽろと涙を流しながらシュトラールを抱きしめて肩を震わせると、シュトラールも抱きしめ返して「ごめんなさい」と言ってほんの少し泣きそうになった。
家族を失った事がある朱里の言葉はシュトラールに重くのしかかる。
「シュー、反省しなよ?」
「うん・・・ごめん」
リュエールが片眉を上げながら、キリンと目が合うとキリンが少し後ろに下がり、その隙間からフィリアニルンが顔を出す。
「フィリア!」
「シュー、ごめんなさい・・・」
シュトラールのベッドの横に来るとフィリアニルンが眉を下げる。
フィリアニルンを見てシュトラールが目を細めて笑う。
「フィリア、やっぱりフィリアはその髪の色と目の色が一番綺麗だよ」
薄い銀糸の髪に虹色を帯びた紫色をした髪、桃色から薄紫のグラデーションの綺麗な目。
自分の髪の両サイドを持って目元を隠す様にしてフィリアニルンが耳まで赤くなる。
「ほら、約束したでしょ?顔を隠さない」
「・・・はい」
キリンがフィリアニルンの背中を叩いて、フィリアニルンが髪から手を離す。
何時の間にキリンとフィリアニルンが仲良くなったのだろう?とシュトラールが首を傾げるとキリンがシュトラールにニコッと笑う。
リュエールが少し半目になるが、朱里を立ち上がらせて「皆リビングに集合!はい!直ぐ動く!」と号令をかけてわらわらと移動を開始する。
「シューも直ぐ動く!」
「うん、わかった。フィリア行こうか」
「はい」
ベッドから起き上がってシュトラールがフィリアニルンの手を取ってリビングに行くと、先程まで居なかったルーファスが仏頂面で座っていた。
ピリピリした雰囲気にシュトラールの耳は下がり尻尾も股に入っていく。
「ルーファス・・・」
「・・・アカリは黙っていろ」
ルーファスの着物の袖を握っていた朱里がその手を離して三つ子達を自分の側に集める。
「父上、心配かけてごめんなさい」
ルーファスが立ち上がるとシュトラールの元まで歩いて行き、そのままシュトラールの頬を拳で殴りつける。
シュトラールが唇の端から血を流しながら項垂れると、フィリアニルンがシュトラールの横で震えながら頭を下げる。
「ごめん、なさい・・・私のせいで、シューを連れ回してしまって・・・」
「フィリアのせいじゃない!オレが自分で決めた事だから!」
「うるさいっ!両方に責任がある!」
シュトラールとフィリアニルンにルーファスが怒鳴り、2人がビクッと肩を動かす。怒鳴り声に泣き出した三つ子を朱里が抱きしめながら、ミルアとナルアを連れて別の部屋へ移動し、遠くで泣き声が聞こえる中でルーファスがハァッと息を吐く。
「シュトラール、お前は何故オレ達家族を頼らなかった?」
「2人で逃げなきゃいけないと思ったから・・・」
「家に帰らないという連絡1つでこちらが納得して心配もしないと思ったのか?」
「ごめんなさい・・・」
「ようやく情報が来たと思えば婚姻の書類、何を考えている!」
「結婚して元気でやってるって直ぐに伝わるかと思って・・・」
ハァと、ため息をまたルーファスが吐くが、これにはリュエールもため息を吐く。
僕の弟、頭悪すぎと、リュエールは頭痛を覚える。
「その婚姻で王女が生きている事とお前の存在がトラザル国とカイザー王国にバレてこの大陸が戦火に巻き込まれる事を考えなかったのか!直ぐに揉み消してどこにも情報が漏れないようにしたこっちの身になってみろ!」
「そこまで大袈裟には考えてなかった・・・」
「このっ・・・馬鹿息子!!お前は・・・っ!」
眉間に手を当ててルーファスが「頭痛がしそうだ」とこめかみをヒクつかせた。
それを見てリュエールも無言で頷く。
「シュー、テンと小鬼に感謝しなよ?【刻狼亭】の人間の情報は情報開示出来ない様にしてくれてなかったら一発アウトだったんだからね?そこの王女の情報も婚姻書類が出された直後に名前を改ざんしてくれて、温泉大陸に住民登録し直して婚姻届けの受理をしてくれたんだよ?」
「・・・オレのせいでごめんなさい・・・」
しゅんと項垂れるシュトラールにリュエールとルーファスが目を合わせて小さく肩を落とす。
黒い小さな尻尾が目の前にあって、何だろう?と思ったら、顎に小さい足が掛かる。
「こら!おチビちゃんダメだよ!油断も隙もないね、おチビちゃんは」
明るい声がして小さな足が持ち上げられる。持ち上げた人を見上げれば、エルフの少女キリンが弟のエルシオンを抱き上げていた。
目が合うと、ニコッとキリンが笑って「シュー君起きましたよー!」と、声を出す。
直ぐに見知った顔が勢ぞろいしてハガネの「このバカ!」から始まり、朱里が「誘拐されたと思った!連絡1つ寄越さないなんて何考えてるの?!」とポカポカ叩き、「兄様は妹の誕生日をすっぽかす薄情者なのですか!」とこれまたポカポカ叩かれた。
帰ってきたのかと、睡眠ポーションで働かない頭で思いながら、冷水を浴びせられたように意識が覚醒していく。
「フィリア!フィリアは?!」
スパンと、リュエールに叩かれ「まずは皆にごめんなさいでしょ!」と叱られる。
解ってはいるけれど、心配なのはフィリアニルンただ1人なのだと思いつつも、泣きながら自分にしがみ付くアルビーや妹達を見ていたら、自分がどれだけ心配をかけたのかようやく自覚する。
「皆、心配かけてごめんなさい・・・」
「本当に心配したんだからね!毎日、シューちゃんが何かの事件に巻き込まれたんじゃないかとか、騙されて悪い事に巻き込まれたんじゃないかとか、いっぱい、心配、した・・・また家族が、死んだりは・・・嫌なの」
朱里がぽろぽろと涙を流しながらシュトラールを抱きしめて肩を震わせると、シュトラールも抱きしめ返して「ごめんなさい」と言ってほんの少し泣きそうになった。
家族を失った事がある朱里の言葉はシュトラールに重くのしかかる。
「シュー、反省しなよ?」
「うん・・・ごめん」
リュエールが片眉を上げながら、キリンと目が合うとキリンが少し後ろに下がり、その隙間からフィリアニルンが顔を出す。
「フィリア!」
「シュー、ごめんなさい・・・」
シュトラールのベッドの横に来るとフィリアニルンが眉を下げる。
フィリアニルンを見てシュトラールが目を細めて笑う。
「フィリア、やっぱりフィリアはその髪の色と目の色が一番綺麗だよ」
薄い銀糸の髪に虹色を帯びた紫色をした髪、桃色から薄紫のグラデーションの綺麗な目。
自分の髪の両サイドを持って目元を隠す様にしてフィリアニルンが耳まで赤くなる。
「ほら、約束したでしょ?顔を隠さない」
「・・・はい」
キリンがフィリアニルンの背中を叩いて、フィリアニルンが髪から手を離す。
何時の間にキリンとフィリアニルンが仲良くなったのだろう?とシュトラールが首を傾げるとキリンがシュトラールにニコッと笑う。
リュエールが少し半目になるが、朱里を立ち上がらせて「皆リビングに集合!はい!直ぐ動く!」と号令をかけてわらわらと移動を開始する。
「シューも直ぐ動く!」
「うん、わかった。フィリア行こうか」
「はい」
ベッドから起き上がってシュトラールがフィリアニルンの手を取ってリビングに行くと、先程まで居なかったルーファスが仏頂面で座っていた。
ピリピリした雰囲気にシュトラールの耳は下がり尻尾も股に入っていく。
「ルーファス・・・」
「・・・アカリは黙っていろ」
ルーファスの着物の袖を握っていた朱里がその手を離して三つ子達を自分の側に集める。
「父上、心配かけてごめんなさい」
ルーファスが立ち上がるとシュトラールの元まで歩いて行き、そのままシュトラールの頬を拳で殴りつける。
シュトラールが唇の端から血を流しながら項垂れると、フィリアニルンがシュトラールの横で震えながら頭を下げる。
「ごめん、なさい・・・私のせいで、シューを連れ回してしまって・・・」
「フィリアのせいじゃない!オレが自分で決めた事だから!」
「うるさいっ!両方に責任がある!」
シュトラールとフィリアニルンにルーファスが怒鳴り、2人がビクッと肩を動かす。怒鳴り声に泣き出した三つ子を朱里が抱きしめながら、ミルアとナルアを連れて別の部屋へ移動し、遠くで泣き声が聞こえる中でルーファスがハァッと息を吐く。
「シュトラール、お前は何故オレ達家族を頼らなかった?」
「2人で逃げなきゃいけないと思ったから・・・」
「家に帰らないという連絡1つでこちらが納得して心配もしないと思ったのか?」
「ごめんなさい・・・」
「ようやく情報が来たと思えば婚姻の書類、何を考えている!」
「結婚して元気でやってるって直ぐに伝わるかと思って・・・」
ハァと、ため息をまたルーファスが吐くが、これにはリュエールもため息を吐く。
僕の弟、頭悪すぎと、リュエールは頭痛を覚える。
「その婚姻で王女が生きている事とお前の存在がトラザル国とカイザー王国にバレてこの大陸が戦火に巻き込まれる事を考えなかったのか!直ぐに揉み消してどこにも情報が漏れないようにしたこっちの身になってみろ!」
「そこまで大袈裟には考えてなかった・・・」
「このっ・・・馬鹿息子!!お前は・・・っ!」
眉間に手を当ててルーファスが「頭痛がしそうだ」とこめかみをヒクつかせた。
それを見てリュエールも無言で頷く。
「シュー、テンと小鬼に感謝しなよ?【刻狼亭】の人間の情報は情報開示出来ない様にしてくれてなかったら一発アウトだったんだからね?そこの王女の情報も婚姻書類が出された直後に名前を改ざんしてくれて、温泉大陸に住民登録し直して婚姻届けの受理をしてくれたんだよ?」
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しゅんと項垂れるシュトラールにリュエールとルーファスが目を合わせて小さく肩を落とす。
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