黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
578 / 960
18章

新居

しおりを挟む
 4月1日に朱里が37歳の誕生日を迎えて家族でお祝いをしてゆったりと日々は過ぎて行っている。
今の所ネリリスの予言で北へ向けた大砲も活動はせず、平穏な感じである。
リュエールの所もシュトラールの所も赤ん坊は順調に育っているらしく、少しだけポコポコと胎動の音も聞けるようになったのだとか。

「んーっ、新築の匂いたまりません!」
「まだ自分達の匂いが付いていないのはオレは落ち着かんが・・・」

 朱里が何もない部屋の中で両手を伸ばすと、ルーファスが朱里の腰に手を回しながら頭の上に顎を置いて鼻を動かしながら、そわそわとしている。
本当におちつかないらしい。

 手先の器用なドワーフ達のおかげで新しい新居が1ヶ月程で完成となり、朱里とルーファスの住まいは【刻狼亭】の料亭の裏になった。
ナナメ横には従業員宿舎があり、賑やかになりそうである。
引っ越しは今現在している最中で屋敷からドラゴン達が空を飛んでのピストン輸送中。

 新居は1階が全面的に和風(東風)の造りで大広間と客間とリビングに台所があり、そこにドラゴン達の個室が8部屋連なっている。
2階は朱里達夫婦の部屋と、子供達5人の個室があり、一応また子供が増えた場合も考えて1部屋余分に作ってある。
ハガネの部屋と客間がもう一部屋ある感じである。
部屋数ばかり多い家の様な気もするが、こればかりは人数が多いので仕方がない。

 ちなみ、2階は1階より少し小さいのは2階から1階の天井となる部分のベランダを洗濯物干し場にしたからである。乾燥魔法を覚えた朱里としては乾燥魔法でも良いのだが、やはり、太陽の匂いは気持ちがいいので洗濯物干し場は欲しいのである。

「アカリー!荷物どうするー?」
「ええとねー、アルビーの持ってる荷物は・・・ああ、それは台所用品だから台所に置いてくれる?」

 ルーファスに抱きつかれたまま朱里が指示を出し、次々にドラゴン達が朱里に指示を仰いでくるので朱里がズリズリとルーファス付きで動いていく。

「ルーファス、お邪魔虫ですよ?」
「オレが落ち着ける匂いがアカリしか無いからだ」
「荷物が部屋に詰め込まれれば嫌でも馴染みの匂いになりますってば」
「それまではオレはココでアカリの匂いを堪能する」
「駄目ですねこれは・・・」

 スリスリとルーファスに擦りつかれて朱里が諦めて、玄関で荷物の指示係りになる事にして指示を出していると、金竜のエデンが朱里にしがみ付いてくる。

「パパさんだけズルいの!」
「オレの番だからな」
「ルーファス大人気ないですよ?」
「あーっ、エデンずるーい!ケイトも!」

 ガシッと花竜のケイトにも抱きつかれ、それを見たケルチャも抱きついてくると、グリムレインが辛抱たまらんと、飛びついてきてドラゴン達の押し競まんじゅうの出来上がりになった。ぎゅむーとドラゴン達に抱きつかれ、朱里が「潰れる~!」とキャアキャア騒ぐ。

「ちょっとー!アカリもルーファスも皆もちゃんと引っ越しの作業して!」

 アルビーの声にアハハハと笑いながらドラゴン達も朱里も引っ越しの作業をしにワラワラと動き始める。
ルーファスはアルビーに捕まり、お説教をされながら大人しく子供達の荷物を子供部屋に運ぶ手伝いに駆り出される。
何だかんだで子供の頃からルーファスと付き合いがある分、アルビーが一番ルーファスの扱いに慣れているかもしれない。

「わたくしの荷物が見当たりませんのー」
「あれー?わたくしの服どこですのー?」

 ミルアとナルアが木箱を漁りながら、庭に積まれた荷物を開けて回り、それもアルビーに「後で探して!今は庭の荷物を開け回らずに中に入れて!」と怒られ、2人が口を尖らせながら木箱を家の中に運んでいく。

「引っ越しはどう?順調に進んでる?」
「あっ、リュエールいらっしゃい。キリンは体調はどう?」
「うん。大丈夫。重い物は持てないけどお手伝いにきたよ」

 キリンがアルビーに作って来たおはぎの入ったお重を渡すと、リュエールとアルビーに「キリンは大人しく座ってて!」と声を揃えて怒られる。
肩をすくめてキリンが眉を下げ笑って「過保護なんだから」と言えば、アルビーが顎でリュエールにキリンを縁側に座らせるように指示して、キリンがリュエールに縁側に連れて行かれる。

「まったく・・・て、シュトラールも手伝いに来たの?」
「うん。力だけはあるからね。あ、もちろんフィリアには何もさせないよ?」
「えへへ。私はシューの応援係りだから」
「うん!フィリアの応援があれば百人力だから!」
「・・・とりあえず、フィリアは縁側でキリンとお喋りでもしてて、シュトラールは庭の荷物をとりあえず1階の大広間に置いて、アカリの指示で何所へ持って行くか決まったら運んで」
「はーい」

 シュトラールが荷物を運び始め、フィリアが縁側に向かいキリンと早速話をしながら笑っている。
アルビーがふぅーと息を吐くと、アルビーの周りにチビッ子3人がまとわりつく。

「アルビー、あそぼー」
「あそんでー」
「アルビーだっこー」
「あのね、私は忙しいの。君達も自分の部屋の荷物を片付けないとだよ?」

 アルビーの尻尾をぴっぱりながら「あそんでー!」と3人が騒ぐとハガネが3人をワシワシと回収して持って行く。ハガネの後ろをササマキとクロが嬉しそうについて歩き、2階へ移動していく。

 最近、屋敷住まいだった為にクロは【刻狼亭】の調理場に出入りして過ごしていたのでようやく腰を落ち着ける事が出来そうである。
ササマキは何所に行こうとハガネを見つけ出しては特攻していくので相変わらずという所だが。

 引っ越し作業を進めていると、従業員達が手伝いに来たりと中々に賑やかになり、家の中は人の出入りが多く結局中途半端に作業を終えて、夕方には庭でバーベキューをしながら従業員を交えて宴会状態になっていた。
考えてみれば場所が場所なだけあって、こんな感じの事が続くのではないかとアルビーは少し大丈夫かな?と、思ったりしつつ、朱里とハガネが次々に出してくる料理を前に「まぁ、いっか」と流していった。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。