黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
604 / 960
19章

小刀

しおりを挟む
「ぬぁー!!!サウナかデトックスダイエットした気分がするっしょー!!」

 ありすがそう言って大広間で寝転がるとすかさずリロノスが冷たく冷やしたミッカジュースを持ってありすを労いに駆け寄る。

「アリスお疲れ様」
「リロっち~うちもう干からびる―」
「うんうん。ジュース飲んで水分補給して」

 ジュースを一気に飲み干してありすが「ぷはぁー!」と言うとリロノスが「ありすは若い頃と変わんなさすぎだよ」とガクリと首を落とす。
行儀など知った事ではないとありすは思いながらリロノスはもっと肩の力を抜いて生きれば生きやすいだろうにとも思う。

「リロっち、もう一杯!」
「はいはい。待ってて」

 リロノスが立ち上がると、後ろから朱里がミッカジュースの瓶を差し出して「お疲れ様です」と言って頭を下げる。
 月刀ー山茶花ーが討ち終わり、後の仕上げはドワーフ達に託され、ありすやシュトラール達が朱里の家に来て一休みしている所だったりする。
ちなみにシュトラールとリュエールはお風呂に入っている最中で大広間でキリンとフィリアがご飯の準備を手伝いながら右往左往している。

「ありすさんにはお世話になりっぱなしで感謝してます」
「良いの良いの。うちも面白かったし!まぁあのサウナ地獄は当分勘弁だけど」
 手をパタパタと左右に振りながらありすが笑ってテーブルの上に置かれた五目おにぎりに手を伸ばす。
五目おにぎりをパクつきながらありすが「アカリっちのお家の子になるー」と騒ぎ、「それはハガネ作です」と告げられ、ハガネは「うちを養子にすると良いっしょ」と詰め寄られていた。

 大広間のテーブルの上に料理が並び、リュエール達もお風呂から上がって席に座ると自分の奥さんである番に擦り寄ってから自分達の子供を腕に抱いてお父さんの顔をしている。

「「うちの子が一番可愛い」」

 珍しく双子の意見が揃っている。
狐獣人のタマホメとメビナがシンクロしすぎて双子はああいうものだという気もするが、我が家の双子に三つ子達は個性がバラバラしすぎて意見が揃うことはあまりないと、朱里は思う。

「アカリ、ドワーフ達が来たようだぞ」
 耳をピコピコ動かしながらルーファスがティルナール達3人のテストの答案用紙を見て「ふむ」と言っている。
困った事に三つ子は得手不得手がバラバラで理数系がティルナールとエルシオンで国語歴史はルーシーと点数の上がり下がりが酷い。
3人共何とも言えない顔で耳を後ろに下げているのは不得意教科のテストの答案だからだろう。

 朱里が玄関までドワーフを迎えに行き、玄関の戸が叩かれる前に玄関を開けてドワーフ達を招き入れる。
ドワーフ達を大広間に通し、席に座ってもらうとハガネが辛口のお酒をドワーフ達に出しながら朱里の横に座る。

 ドワーフ達は3つの木箱を取り出し、一番長い物はありすに渡し、20cm程の長さの物を倫子に渡し、最後に朱里に手の平よりも少し長い小刀を渡した。

「一番切れ味が良いのはアリスとリンの嬢ちゃんのだが、根元部分の大女将の物が一番払いが強い。そこら辺は扱いに気を付けてくれ」
「払い?」
「払いっつーのは、この刀が異世界人しか扱えなくなっている術式が埋め込まれている部分だ。そんで一番【怨嗟】を断ち切る力も強い。これは大女将が手に持てば【聖域】の発動と同時に使えて効果も良く出る筈だ」
「はぁ・・・はい」

 少し気のない返事をしながら朱里が首を傾げて、ありすは「刀持ったらやっぱ着物?アカリっち着物なんか貸してー」と騒いでいる。

「急ぎで作ったからまだ鞘は出来てないが近日中に作るつもりだ。素材で良い物があればいいんだがな」

 ドワーフが素材になりそうな木や鉄をあーでもないこーでもないと相談していると、ルーファスが手の平の空間から素材をポイポイ出してドワーフ達の目を大きく開かせていた。
素材だ何だと色々溜め込んでしまうのは、犬族や狼族含め獣人はついついやってしまう物ではあるが、ルーファスの場合は代々引き継いでいる倉庫の為にやたらと数が多い。
これでも半分以上リュエールの倉庫に突っ込んだ後ではある。

 ドワーフ達はお酒を飲んで少しご飯を食べると作業に戻ると言って素材を持ってさっさと帰って行ったが、トリニア家の大広間では大人数でこれからの行動について作戦会議が開かれた。

「まず確実に行くのはオレとアカリ、アリス、リンコ、シュトラールだな。【怨嗟】黒いモヤを一旦散らす為に大量の聖水を運ぶのにグリムレインは必須だ。あと移動にはローランドを用いる。あとは魔石の周りに居る魔獣の大群を蹴散らす人手をどうするかだな・・・」

 ルーファスが「従業員を使うかどうかだな」と言いながらも、従業員を大人数動かすにはニクストローブが居ない現状少し厳しい物がある。

「あっ、いい人が居るかもしれない!」

 ポンッとシュトラールが手を打ち、全員がシュトラールを見ると「ギル大叔父」と言い。
その一言に全員「うーん」と唸り声をあげた。ギルは確かに戦力にはなるし、ギルが動けばネルフィームも一緒に動くので多少の人数増加も見込める。
しかし、何かとお騒がせなギルである。

「ねぇ、アタシは?」

 ケルチャが手を上げると朱里が「ケルチャって戦闘系ドラゴンじゃないですよね?」と首を傾げる。

「失礼ね。アタシは戦闘系じゃないけど、舞台は森なんでしょ?森なら木竜のアタシの領分よ。魔石の周りを木で囲って作業が終わるまで魔獣を近寄らせないでいることくらい朝飯前よ?」

 思わぬ伏兵に「おぉ!」と一同が口をそろえて言い、ケルチャも参戦する事になった。
ケルチャの能力を使う事で一番大変な魔獣退治はクリアーになり、少人数でもやれるかもしれないと作戦会議は練られていった。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。