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19章
600話記念話 極める妻と賭け事
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黒い着物はあまり持っていないのは【刻狼亭】では男側の着物の色として確立されているからというのもある。
逆に男性側に白い着物が無いのは白は女性側の物だからなのである。
今回、黒い着物に赤い牡丹や薔薇といった派手な色合いの着物が用意されたのは、【聖女】ことありすの「極・妻しよー!」の声が上がったからである。
「はぁ?何だそれは?」
ルーファスやリロノス達の怪訝な顔にありすは「極めし妻の最終形態!」と宣い、倫子も「刀と日本人とくれば一度はやりたいシチュエーションよねー」と悪ノリしたのである。
「あの、私は黒い着物はあまり持ってなくて……」だから止めましょう?と、続くはずが、ルーファスが「極めし妻の最終形態」の言葉に何を思ったか黒い着物を用意した。
任侠映画の事とは何となく解っている物の、ちゃんと見たことは無い朱里としてはイマイチ乗り気ではなかった。
しかし、ノリノリのありすに断れるわけも無く、あれよあれよという間に黒い着物に月刀ー山茶花ーの小刀を持ってポーズをとらされて写真まで撮っているのである。
「胸に巻いたサラシから見える谷間がセクシーっしょ」
「うう~っ、この歳になってコスプレもどきをするなんて・・・・・・」
胸にサラシを巻いて、着物から片方の肩だけ出してポーズをとる様にありすから指示され既に羞恥心はマックスまで上がっている。
倫子も朱里の隣りでポーズをつけているが、年上の倫子は極妻そのものの年齢に近いせいか迫力が違う。
「なんだか賭場に居る様な感じだな」
ハガネの一言にありすが目を光らせる。
「ハガネっち!賭場があるの⁉行きたい!!行きたい!!行きたぁーい!!」
「ああ?あんな金むしられる場所行く気なのかよ?正気かー?」
「フッ……うちの貯めた金貨が火を吹くっしょ!」
「あー・・・アリスはそのまま尻まで火が着いて所持金無くしそうだな」
「うっわー!ハガネっち、うちの幸運力見せてやるっしょー!」
リロノスが止めるもありすが「うちに任せるっしょ!」と言い、魔獣の王の魔石を回収する大仕事の前に息抜きをする!と、騒いで気付けば極妻な着物のまま3時間程高速船に揺られてカジノで有名な島『エンファーレ』に来ていた。
「東風な感じの賭場は結構奥まった方にあるらしいぞ」
「行くっしょー!」
「アリス、頼むから使う金額は決めてやってよ⁉」
ハガネに案内されながらありすとリロノスが騒ぎつつも、東風の建物の中へ入り畳の上でサイコロで半か丁を決めるオーソドックスな物が行われていて、2畳程の畳に人が集まっている。
2畳程のサイコロのツボ振りは建物の中に幾つかあり、ありすとリロノスと倫子とハガネは着いた瞬間、賭場の人間に案内されて行ってしまった。
「ルーファス、どうしましょう?」
「まぁ、適当に遊べばいいんじゃないのか?」
「うーん……なんだか不良な気がします」
眉間にしわを寄せて朱里が言うとルーファスが「グフッ」と吹き出した。
うちの番は何歳だったか?と、思いつつも可愛すぎて堪らない!と抱き上げる。
何で笑われたのかイマイチ解らない朱里は首をコテンと傾けてルーファスを見つめる。
「アカリが可愛すぎて食べてしまいたいな」
「んん??ルーファス、食べるならあっちですよ」
ルーファスの顔をグイッと捻って朱里がルーファスに見せたのは『鉄火屋』と看板に書かれた屋台。
ほんのりと酢飯と海苔と醤油の香りがしている。
屋台の小さな暖簾をくぐると、鉄火巻きが大量に山積みされていた。
文字通り鉄火だけの屋台の様だ。
「おじさん、鉄火巻き下さいな」
「おう。何本いくんだ?」
「んーっ、2本お願いします」
朱里が注文して皿に鉄火巻きが綺麗に切られて並べられていく。
ちなみに賭場は昔「鉄火場」と言われていた事から鉄火巻きはきているのだとか。
賭博をしながらおつまみ感覚で食べれる手ごろなご飯。
「ルーファス、はい。あーん」
「ん。・・・・・・っ、ワサビが凄いな」
「はわ~っ、ツーンとくるね!」
屋台で鼻の頭を押さえながら朱里とルーファスが悶絶すると屋台のオヤジが笑って「運が良いな」と言う。
何のことだ?とオヤジに聞けば、屋台のオヤジは「鉄火巻きの中に1つだけワサビ入りがあるんだが、二人してワサビ入りを食っちまうとはアタリを引いたなって事だ」と説明をする。
「ロシアンルーレット鉄火巻き……」
「ろしあん?」
「いえいえ、こちらの話ですよ。じゃあ、運が良いなら博打しちゃいましょうか!」
「それは良いが、限度額は決めてから挑め」
「それはもう決めてあります!1銀貨までです!!(1万円)」
釜口財布に銅貨を10枚入れてチャリチャリいわせて朱里が得意そうな顔で「倍にします!」と笑う。
ルーファスが再び「グフッ」と吹き出し、「あー、オレの番は可愛いなぁ」とデレデレで朱里と一緒に賭場へ行く。
賭場では丁の時に参加する者は入り、半の時は参加出来ないというルール以外はさしてルールはない。
「半か丁か!」
そんな掛け声が至る所でおき、朱里とルーファスの所でもその掛け声が上がった。
朱里がお財布の銅貨を木札10枚と変えて、この木札のやり取りで賭け事は行われる。
なぜ木札に交換するかというと、金貨などは負け越した人間が畳をひっくり返したり乱闘に発展する際に失くしたら困るからである。木札にも同じことは言えるが、木札の場合は乱闘等賭け事が成立していない場合、賭場の人間が木札をまた用意してもらえるという利点があるのである。
「ルーファス、どう思います?」
「アカリの好きにしていい。オレは獣人だからサイコロの音で半か丁か判る分、参加は出来ない」
「そうなんだ……じゃあサイコロじゃないのを後でしましょうね」
ニコッと笑って朱里が「じゃあ全額「丁」で!」とポンッと木札を畳に出す。
結果は半ではあったが、朱里が「ルーファスと別の場所で遊びたいから早く終わりたかったから良いの」と1回きりで賭場を出る。
やっぱり自分の番は可愛い!とルーファスが本日何度目かの可愛いを呟いて二人で仲良く歩いていると、先程の『鉄火屋』の屋台でありす達が騒いでいる。
「ワサビで当たったんだから次は勝つっしょ!」
「アリス、その自信は何所から出るの⁉」
「バッカだなー……この鉄火巻きのワサビなんてほぼ確実に口に入る様になってんだから、アタリなんて言葉で乗せられて、素寒貧にされるのがオチだっつーの」
「あー、わかるわかる。素人相手にゲン担ぎみたいなのねー」
騒いでいる4人の会話の内容に朱里が「確かに当たらなかったねー」とルーファスと笑ってカジノへ向かい、1時間程遊んでから4人に再び合流すると4人はお通夜状態だった。
「あの時大人しく引き下がるべきだったっしょ……」
「だから言ったじゃないか……」
「アリスと一緒に調子にノッた俺がバカだった……」
「アレは絶対何か罠仕掛けられてたって……」
どうやら負け越した様でずーんとした4人に朱里とルーファスが苦笑いして「帰ろうか?」と言うと4人は朱里が腕に抱きかかえているぬいぐるみを見て首を傾げる。
「カジノの景品です!ルーファスが勝ったチップ全部これに替えてくれたんです!」
ぬいぐるみをギュッと抱きしめて朱里が満足そうにすると、4人が「大旦那も儲からなかったのか」とガクリと肩を落とす。
「この鬱憤は、魔獣の魔石壊しにぶつけるっしょー!」とありすが叫び「おー!」と倫子も声を上げる。
スゴスゴと負け犬よろしく温泉大陸へ帰って行ったわけだが、朱里の抱きかかえているぬいぐるみが実は目と鼻に使われている宝石が、かつて魔界へと繋げる為に使われた宝石で毛皮もS級魔獣の高級毛皮素材を使用されているとは夢にも思わない
時が経ち、朱里が遠い昔に存在した【刻狼亭】の女将の一人だという認識もされない程に忘れ去られた頃、先祖代々の思い出の品を保管している『ロックヘル』の倉庫からぬいぐるみが子孫の手で持ち出され、魔獣の王が再び現れた時に魔界へと魔獣の王を封じ込める為に使われるのはまた別の話である。
逆に男性側に白い着物が無いのは白は女性側の物だからなのである。
今回、黒い着物に赤い牡丹や薔薇といった派手な色合いの着物が用意されたのは、【聖女】ことありすの「極・妻しよー!」の声が上がったからである。
「はぁ?何だそれは?」
ルーファスやリロノス達の怪訝な顔にありすは「極めし妻の最終形態!」と宣い、倫子も「刀と日本人とくれば一度はやりたいシチュエーションよねー」と悪ノリしたのである。
「あの、私は黒い着物はあまり持ってなくて……」だから止めましょう?と、続くはずが、ルーファスが「極めし妻の最終形態」の言葉に何を思ったか黒い着物を用意した。
任侠映画の事とは何となく解っている物の、ちゃんと見たことは無い朱里としてはイマイチ乗り気ではなかった。
しかし、ノリノリのありすに断れるわけも無く、あれよあれよという間に黒い着物に月刀ー山茶花ーの小刀を持ってポーズをとらされて写真まで撮っているのである。
「胸に巻いたサラシから見える谷間がセクシーっしょ」
「うう~っ、この歳になってコスプレもどきをするなんて・・・・・・」
胸にサラシを巻いて、着物から片方の肩だけ出してポーズをとる様にありすから指示され既に羞恥心はマックスまで上がっている。
倫子も朱里の隣りでポーズをつけているが、年上の倫子は極妻そのものの年齢に近いせいか迫力が違う。
「なんだか賭場に居る様な感じだな」
ハガネの一言にありすが目を光らせる。
「ハガネっち!賭場があるの⁉行きたい!!行きたい!!行きたぁーい!!」
「ああ?あんな金むしられる場所行く気なのかよ?正気かー?」
「フッ……うちの貯めた金貨が火を吹くっしょ!」
「あー・・・アリスはそのまま尻まで火が着いて所持金無くしそうだな」
「うっわー!ハガネっち、うちの幸運力見せてやるっしょー!」
リロノスが止めるもありすが「うちに任せるっしょ!」と言い、魔獣の王の魔石を回収する大仕事の前に息抜きをする!と、騒いで気付けば極妻な着物のまま3時間程高速船に揺られてカジノで有名な島『エンファーレ』に来ていた。
「東風な感じの賭場は結構奥まった方にあるらしいぞ」
「行くっしょー!」
「アリス、頼むから使う金額は決めてやってよ⁉」
ハガネに案内されながらありすとリロノスが騒ぎつつも、東風の建物の中へ入り畳の上でサイコロで半か丁を決めるオーソドックスな物が行われていて、2畳程の畳に人が集まっている。
2畳程のサイコロのツボ振りは建物の中に幾つかあり、ありすとリロノスと倫子とハガネは着いた瞬間、賭場の人間に案内されて行ってしまった。
「ルーファス、どうしましょう?」
「まぁ、適当に遊べばいいんじゃないのか?」
「うーん……なんだか不良な気がします」
眉間にしわを寄せて朱里が言うとルーファスが「グフッ」と吹き出した。
うちの番は何歳だったか?と、思いつつも可愛すぎて堪らない!と抱き上げる。
何で笑われたのかイマイチ解らない朱里は首をコテンと傾けてルーファスを見つめる。
「アカリが可愛すぎて食べてしまいたいな」
「んん??ルーファス、食べるならあっちですよ」
ルーファスの顔をグイッと捻って朱里がルーファスに見せたのは『鉄火屋』と看板に書かれた屋台。
ほんのりと酢飯と海苔と醤油の香りがしている。
屋台の小さな暖簾をくぐると、鉄火巻きが大量に山積みされていた。
文字通り鉄火だけの屋台の様だ。
「おじさん、鉄火巻き下さいな」
「おう。何本いくんだ?」
「んーっ、2本お願いします」
朱里が注文して皿に鉄火巻きが綺麗に切られて並べられていく。
ちなみに賭場は昔「鉄火場」と言われていた事から鉄火巻きはきているのだとか。
賭博をしながらおつまみ感覚で食べれる手ごろなご飯。
「ルーファス、はい。あーん」
「ん。・・・・・・っ、ワサビが凄いな」
「はわ~っ、ツーンとくるね!」
屋台で鼻の頭を押さえながら朱里とルーファスが悶絶すると屋台のオヤジが笑って「運が良いな」と言う。
何のことだ?とオヤジに聞けば、屋台のオヤジは「鉄火巻きの中に1つだけワサビ入りがあるんだが、二人してワサビ入りを食っちまうとはアタリを引いたなって事だ」と説明をする。
「ロシアンルーレット鉄火巻き……」
「ろしあん?」
「いえいえ、こちらの話ですよ。じゃあ、運が良いなら博打しちゃいましょうか!」
「それは良いが、限度額は決めてから挑め」
「それはもう決めてあります!1銀貨までです!!(1万円)」
釜口財布に銅貨を10枚入れてチャリチャリいわせて朱里が得意そうな顔で「倍にします!」と笑う。
ルーファスが再び「グフッ」と吹き出し、「あー、オレの番は可愛いなぁ」とデレデレで朱里と一緒に賭場へ行く。
賭場では丁の時に参加する者は入り、半の時は参加出来ないというルール以外はさしてルールはない。
「半か丁か!」
そんな掛け声が至る所でおき、朱里とルーファスの所でもその掛け声が上がった。
朱里がお財布の銅貨を木札10枚と変えて、この木札のやり取りで賭け事は行われる。
なぜ木札に交換するかというと、金貨などは負け越した人間が畳をひっくり返したり乱闘に発展する際に失くしたら困るからである。木札にも同じことは言えるが、木札の場合は乱闘等賭け事が成立していない場合、賭場の人間が木札をまた用意してもらえるという利点があるのである。
「ルーファス、どう思います?」
「アカリの好きにしていい。オレは獣人だからサイコロの音で半か丁か判る分、参加は出来ない」
「そうなんだ……じゃあサイコロじゃないのを後でしましょうね」
ニコッと笑って朱里が「じゃあ全額「丁」で!」とポンッと木札を畳に出す。
結果は半ではあったが、朱里が「ルーファスと別の場所で遊びたいから早く終わりたかったから良いの」と1回きりで賭場を出る。
やっぱり自分の番は可愛い!とルーファスが本日何度目かの可愛いを呟いて二人で仲良く歩いていると、先程の『鉄火屋』の屋台でありす達が騒いでいる。
「ワサビで当たったんだから次は勝つっしょ!」
「アリス、その自信は何所から出るの⁉」
「バッカだなー……この鉄火巻きのワサビなんてほぼ確実に口に入る様になってんだから、アタリなんて言葉で乗せられて、素寒貧にされるのがオチだっつーの」
「あー、わかるわかる。素人相手にゲン担ぎみたいなのねー」
騒いでいる4人の会話の内容に朱里が「確かに当たらなかったねー」とルーファスと笑ってカジノへ向かい、1時間程遊んでから4人に再び合流すると4人はお通夜状態だった。
「あの時大人しく引き下がるべきだったっしょ……」
「だから言ったじゃないか……」
「アリスと一緒に調子にノッた俺がバカだった……」
「アレは絶対何か罠仕掛けられてたって……」
どうやら負け越した様でずーんとした4人に朱里とルーファスが苦笑いして「帰ろうか?」と言うと4人は朱里が腕に抱きかかえているぬいぐるみを見て首を傾げる。
「カジノの景品です!ルーファスが勝ったチップ全部これに替えてくれたんです!」
ぬいぐるみをギュッと抱きしめて朱里が満足そうにすると、4人が「大旦那も儲からなかったのか」とガクリと肩を落とす。
「この鬱憤は、魔獣の魔石壊しにぶつけるっしょー!」とありすが叫び「おー!」と倫子も声を上げる。
スゴスゴと負け犬よろしく温泉大陸へ帰って行ったわけだが、朱里の抱きかかえているぬいぐるみが実は目と鼻に使われている宝石が、かつて魔界へと繋げる為に使われた宝石で毛皮もS級魔獣の高級毛皮素材を使用されているとは夢にも思わない
時が経ち、朱里が遠い昔に存在した【刻狼亭】の女将の一人だという認識もされない程に忘れ去られた頃、先祖代々の思い出の品を保管している『ロックヘル』の倉庫からぬいぐるみが子孫の手で持ち出され、魔獣の王が再び現れた時に魔界へと魔獣の王を封じ込める為に使われるのはまた別の話である。
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