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25章
おヨメさまと戦闘地帯
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汽車の中の天井にスズランの花の形をした可愛いランプがあったのだけど、荒野に突入したところで、可愛いランプが真っ赤に光って点滅し、カーブを曲がったところで汽車の先端が窓の外に見えると、汽車の上にはドリアードの駅員さん達がガトリング砲のような物を構えているのが見えた。
『ご乗車頂きありがとうございます。荒野の戦闘地帯ゴスペラードに入りましたので、少々戦闘がございます。窓ガラスは鉄格子にさせていただきます。ご乗車内の皆様、汽車の揺れ、戦闘等、お気を付けて頂きますよう、お願いいたします』
なんだか、物騒なアナウンスがスズランのランプから聞こえた。
ルーファスが新聞と黒眼鏡を仕舞い込むと、コートとカバンを私に渡してくる。
「アカリは寒くないようにコートを着ておけ」
「え? え? 本当に戦闘なの?」
「戦闘地帯だと言っただろう? まぁ、赤子の手を捻るようなものだ。問題ない」
「あわわっ、赤ちゃんの手は捻っちゃ駄目だよ~っ!」
「言葉の綾だ。ククッ、大人しくしていろ」
ガシャンガシャンと音が順番に汽車の先頭車両からしてきて、窓ガラスが下にさがり代わりに鉄格子が汽車の窓枠に掛かる。
風がブワッと車内に入って来ると音も外から入り、ドォーンと音がすると、目の前の鉄格子に飛び出してきた紫色の魔獣が蔦で作ったような投網でぐるぐる巻きにされて姿を消した。
「ひゃぁああ! なにアレ!? はわわっ」
「アレはドリアード達が汽車の上から網で魔獣を捕らえて落としているんだろうな」
「わーっ! ルーファス後ろ! 後ろ!」
ルーファスの後ろの鉄格子にカメレオンを大きくして紫色にしたような魔獣が張り付いている。
舌をみょーんと伸ばしたのを、ルーファスの手が舌を捕まえて、雷魔法でバチッと音をさせると、紫色のカメレオンは鉄格子から手を離し、ルーファスも舌から手を離す。
「ここら辺はカルドラの生息地帯の様だな」
「カルドラって、今の魔獣?」
「ああ。Cランク魔獣だ。赤い液体を吐いてくるから、それだけに気を付ければいい」
「それ吐かれたら、服が溶けたり?」
「いや、虫が寄ってくる。奴等はその虫を食べるからな」
「ううっ、虫にたかられるのは嫌ぁ~」
「だから射程距離に入らない真ん中にいる事だ」
はい! 私は絶対に真ん中から動きませんよ!?
私が真ん中に鎮座すると、ルーファスが鉄格子に張り付くカルドラをビリビリと雷魔法で落としながら、たまに他の車両から引き剥がされて、私達の車両にぶつかったカルドラを蹴り落していた。
ううっ、こんなのが汽車の常識なんて危なさ満点で、リュエールはちゃんと私がか弱い母親だとわかっているのか問い詰めたいところである。
怖いからリュエールに問い詰めることはできないけど、でも心の中でブーイングは出しておこう。
ツンツンと肩を叩かれて振り向くと、ベロンとピンクの滑った物が顔を舐めた。
それがカルドラの舌だとわかると、私は声にならない絶叫を上げて固まり……多分、泣きわめいたんだと思う。
「ぴっにゃぁああーーーー!!!」
自分でも大騒ぎし過ぎて、覚えてない。
「今のは大物だったな。魔石のせいで突然変異したカルドラかもしれないな」
「うぁぁん。気持ち悪いよー! もう駄目だよー!」
「よしよし。もう綺麗に拭いたし、どこにも粘液も残ってないぞ」
「ふぇーっ、ルーファス、もう汽車やだぁ~っ!」
ぐしぐし泣く私をルーファスが慰めつつ、再び車両にアナウンスが響き『緊急。大型魔獣の接近が確認されました。戦えるお客様は車両外にて、戦闘準備をお願いいたします。汽車は間もなく停止し、戦闘警戒待機になりますので、ご了承ください』と、普通のアナウンスのように淡々と流れ、汽車は暫くすると停止した。
「やれやれ。汽車が停止するのは珍しいな」
「はぅー……」
「直ぐに片付けてくるから、戻ってくる前に涙を引っ込めておけ」
チュッとリップ音を立ててキスをすると、ルーファスは開いた車両のドアから外へ飛び出していた。
外を見れば、ほとんどの人が汽車の外へ出ている。小さな子供まで出ている気がする。
「外に出た方が、いいのかな?」
いや、でも下手に動いてルーファスに怒られたくないし、リュエールの雷が落ちてきたら怖い。
「母上はまた余計なことをしたの!」と、怒られるのが目に浮かぶ……ルーファスが、戻ってくるまでにって言っていたから、ここに居ることが私にとって一番いいはず。うん、きっとそうだ。
『ボホェェェェーン』
大きな声がして、一斉に汽車から外に出た人々の声がワァァーと上がる。
ビリビリするような大きな声に負けず劣らずという感じで、グラグラと汽車が揺れ始め、土煙を上げて一頭の巨大な魔獣が汽車に向かって走って来ていた。
白い大きな亀……に、長い耳が垂れ下がっていて、背中では豆粒のような鳥達が飛び回っているけど、豆粒に見えるだけで、実際は大きいのだと思う。
亀が大きすぎるっ!! 怪獣映画の亀みたいな大きさをしてる。
亀なのに凄い速さなのもどうかしてるよー!!
「あわわ……これ、大丈夫? 大丈夫なの??」
子供とかまで外に出ているのは、危ないからじゃないのかな?
ああ、こういう時に異世界の基準が分からないのが非常に困る。ルーファスは涙を引っ込めておけみたいなこと言ったけど、これは無理だよ。
『攻撃を開始いたします。まだ車両にいらっしゃるお客様は、お近くのテーブルや手すりにお掴まり下さい』
アナウンスが再び流れると、どこかに掴まる前にズゥンという音と共に汽車が揺れ、白い亀に向かって汽車からの砲撃が開始されていた。
アナウンスと同時に攻撃するとか、攻撃早すぎるよー!!
「ぅわぁ!」
ぽよんぽよんした絨毯の上を転がって、ああ、絨毯がぽよんぽよんしているのはこうした砲撃の振動をダイレクトに伝えない為かぁ~……と、納得して二回目の砲撃で再び転がされながら思っていたのだった。
『ご乗車頂きありがとうございます。荒野の戦闘地帯ゴスペラードに入りましたので、少々戦闘がございます。窓ガラスは鉄格子にさせていただきます。ご乗車内の皆様、汽車の揺れ、戦闘等、お気を付けて頂きますよう、お願いいたします』
なんだか、物騒なアナウンスがスズランのランプから聞こえた。
ルーファスが新聞と黒眼鏡を仕舞い込むと、コートとカバンを私に渡してくる。
「アカリは寒くないようにコートを着ておけ」
「え? え? 本当に戦闘なの?」
「戦闘地帯だと言っただろう? まぁ、赤子の手を捻るようなものだ。問題ない」
「あわわっ、赤ちゃんの手は捻っちゃ駄目だよ~っ!」
「言葉の綾だ。ククッ、大人しくしていろ」
ガシャンガシャンと音が順番に汽車の先頭車両からしてきて、窓ガラスが下にさがり代わりに鉄格子が汽車の窓枠に掛かる。
風がブワッと車内に入って来ると音も外から入り、ドォーンと音がすると、目の前の鉄格子に飛び出してきた紫色の魔獣が蔦で作ったような投網でぐるぐる巻きにされて姿を消した。
「ひゃぁああ! なにアレ!? はわわっ」
「アレはドリアード達が汽車の上から網で魔獣を捕らえて落としているんだろうな」
「わーっ! ルーファス後ろ! 後ろ!」
ルーファスの後ろの鉄格子にカメレオンを大きくして紫色にしたような魔獣が張り付いている。
舌をみょーんと伸ばしたのを、ルーファスの手が舌を捕まえて、雷魔法でバチッと音をさせると、紫色のカメレオンは鉄格子から手を離し、ルーファスも舌から手を離す。
「ここら辺はカルドラの生息地帯の様だな」
「カルドラって、今の魔獣?」
「ああ。Cランク魔獣だ。赤い液体を吐いてくるから、それだけに気を付ければいい」
「それ吐かれたら、服が溶けたり?」
「いや、虫が寄ってくる。奴等はその虫を食べるからな」
「ううっ、虫にたかられるのは嫌ぁ~」
「だから射程距離に入らない真ん中にいる事だ」
はい! 私は絶対に真ん中から動きませんよ!?
私が真ん中に鎮座すると、ルーファスが鉄格子に張り付くカルドラをビリビリと雷魔法で落としながら、たまに他の車両から引き剥がされて、私達の車両にぶつかったカルドラを蹴り落していた。
ううっ、こんなのが汽車の常識なんて危なさ満点で、リュエールはちゃんと私がか弱い母親だとわかっているのか問い詰めたいところである。
怖いからリュエールに問い詰めることはできないけど、でも心の中でブーイングは出しておこう。
ツンツンと肩を叩かれて振り向くと、ベロンとピンクの滑った物が顔を舐めた。
それがカルドラの舌だとわかると、私は声にならない絶叫を上げて固まり……多分、泣きわめいたんだと思う。
「ぴっにゃぁああーーーー!!!」
自分でも大騒ぎし過ぎて、覚えてない。
「今のは大物だったな。魔石のせいで突然変異したカルドラかもしれないな」
「うぁぁん。気持ち悪いよー! もう駄目だよー!」
「よしよし。もう綺麗に拭いたし、どこにも粘液も残ってないぞ」
「ふぇーっ、ルーファス、もう汽車やだぁ~っ!」
ぐしぐし泣く私をルーファスが慰めつつ、再び車両にアナウンスが響き『緊急。大型魔獣の接近が確認されました。戦えるお客様は車両外にて、戦闘準備をお願いいたします。汽車は間もなく停止し、戦闘警戒待機になりますので、ご了承ください』と、普通のアナウンスのように淡々と流れ、汽車は暫くすると停止した。
「やれやれ。汽車が停止するのは珍しいな」
「はぅー……」
「直ぐに片付けてくるから、戻ってくる前に涙を引っ込めておけ」
チュッとリップ音を立ててキスをすると、ルーファスは開いた車両のドアから外へ飛び出していた。
外を見れば、ほとんどの人が汽車の外へ出ている。小さな子供まで出ている気がする。
「外に出た方が、いいのかな?」
いや、でも下手に動いてルーファスに怒られたくないし、リュエールの雷が落ちてきたら怖い。
「母上はまた余計なことをしたの!」と、怒られるのが目に浮かぶ……ルーファスが、戻ってくるまでにって言っていたから、ここに居ることが私にとって一番いいはず。うん、きっとそうだ。
『ボホェェェェーン』
大きな声がして、一斉に汽車から外に出た人々の声がワァァーと上がる。
ビリビリするような大きな声に負けず劣らずという感じで、グラグラと汽車が揺れ始め、土煙を上げて一頭の巨大な魔獣が汽車に向かって走って来ていた。
白い大きな亀……に、長い耳が垂れ下がっていて、背中では豆粒のような鳥達が飛び回っているけど、豆粒に見えるだけで、実際は大きいのだと思う。
亀が大きすぎるっ!! 怪獣映画の亀みたいな大きさをしてる。
亀なのに凄い速さなのもどうかしてるよー!!
「あわわ……これ、大丈夫? 大丈夫なの??」
子供とかまで外に出ているのは、危ないからじゃないのかな?
ああ、こういう時に異世界の基準が分からないのが非常に困る。ルーファスは涙を引っ込めておけみたいなこと言ったけど、これは無理だよ。
『攻撃を開始いたします。まだ車両にいらっしゃるお客様は、お近くのテーブルや手すりにお掴まり下さい』
アナウンスが再び流れると、どこかに掴まる前にズゥンという音と共に汽車が揺れ、白い亀に向かって汽車からの砲撃が開始されていた。
アナウンスと同時に攻撃するとか、攻撃早すぎるよー!!
「ぅわぁ!」
ぽよんぽよんした絨毯の上を転がって、ああ、絨毯がぽよんぽよんしているのはこうした砲撃の振動をダイレクトに伝えない為かぁ~……と、納得して二回目の砲撃で再び転がされながら思っていたのだった。
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