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27章
浮気者と卓袱台返し
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「ぴぃしゅけーうわきしたのねー」
「ピピィ?」
「……わたしをすてるのー?」
「これ、どーぞ」
「ピピ? ピィー」
「……りこんして、わたしといっしょになるのー」
庭でゴザを敷いて、その上でコハルとシャルちゃんとピスターシュが、小さな卓袱台に木のお茶碗と器を使って『お飯事』をして遊んでいる。
相変わらず、正妻と愛人と旦那様の配役のようだ。
誰ですかね? 正妻とか愛人とか教えたバカな大人は……コハルに葉っぱの離婚届を突き付けられたピスターシュは『オレは知らない』と、首を傾げている。いや、本当に分かっていないようなんだけどね。
そして愛人役のシャルちゃんは、離婚に喜んでいるようだけど、ふわふわした感じの子なので、イマイチ嬉しいのかどうなのか分かりにくい。
シャルちゃんは基本いつも眠そうに笑っている子で、おっとりしている。イマイチ危機感のない愛憎劇なのはそこら辺かもしれない。
コハルがその分チャキチャキ喋って、お気に入りの卓袱台返しを披露する。
「今時のお子様達は、変なお飯事をしますのね」
「あー、うーん。うちの子達だけじゃないかなー? と、思うわよ。普通の遊びをして欲しいんだけどね」
居間からミルアと一緒に愛憎劇場のクライマックスを見ているけれど、何とも言えない感じである。
コハルはただ単に、卓袱台返しがしたいだけなのよね。
付き合わされるシャルちゃんとピスターシュはいい迷惑な気がする。
「今日も元気ですねー」
「あら、フィリアちゃん。うちの子達が騒がしくしてごめんなさいね」
「いえいえ。うちの子はこのくらいじゃ起きませんから」
フィリアちゃんの言うように、腕の中の五人目の孫、キャロルちゃんはスヤスヤ寝ている。
流石、毎日シュトラールに「父上が帰ってきたよー!」と、スリスリ攻撃から始まっていくのだから、ちょっとやそっとの騒音では起きたりしないのよね。
リュエール家族が自分の家に戻り、入れ替わりに我が家にシュトラール一家が移り住んできた。
まぁ、床上げまでの間なんだけどね。シュトラールの所が終わったら、ありすさんの床上げまでのお付き合いがある訳ですよ。
うーん。我が家は床上げまでのお世話が続くわねぇ……私の時も色々周りにお世話になったから、そのお返しでもあるんだけどね。
「ははうえー、もとにもどしてー」
「自分で卓袱台をひっくり返したのに、何で戻さないの?」
コハルが縁側によじ登って、自分がひっくり返した卓袱台を私に元に戻せと手で床をテシテシ叩いて訴える。
我が娘ながら我が儘に育ってしまっているわ……ルーファスなら、娘の為に元に戻すだろうけど、そろそろ自分で投げた物は自分で元に戻す事を覚えさせないといけない。
縁側から庭に降りてコハルが「これー」と私の着物の裾を引っ張って、ゴザの上で散乱しているお皿と卓袱台を「はい!」と、『これですよ』と教えてくれる。
うん、教えてくれるのは良いんだけど、お母さんはコハルに自分で元に戻して欲しいわ。
「コハル。一緒に元に戻そうか」
「ははうえ、もどして」
「ガシャーンってやったのは、だーれー?」
「うわきした、ぴぃしゅけがわるいの」
「設定にこだわるねぇ……もっと可愛らしい設定は無いのかしら?」
「ははうえ、うわきしてー」
「えーっ、母上は浮気しないよー?」
「ピピイ」
「……うわき、して?」
「ええー? ピスターシュとシャルちゃんまで!?」
三人がキラキラした目で私を見上げてくる。浮気を子供達に薦められているのもどうかと思うんだけどね。本当に、この子達に『愛人』『浮気』を教えた人は誰なのか……
コハルとシャルちゃんが卓袱台を元に戻し、葉っぱの離婚届を私に渡してくる。
ピスターシュが両手を上げながら、卓袱台返しを投げる振りをして期待の目を向けてきた。
「え? 私がやるの?」
「やるのー」
「……やって」
「ピピイ!」
卓袱台に手を掛けて「ええーい。浮気者~」と卓袱台を軽く投げると、卓袱台は地面を縦にクルクルと回り、コハル達がワァッと喜んで手を叩いてくれる。
うーん。中々に爽快ではあるのかしら? もしかしてお飯事は、この為だけの盛大なフリなのかも?
「ははうえー、うわきしてー」
「えーっ、浮気もう一回?」
「ピピ!」
「……してー」
「仕方がないなぁ。浮気はあと一回だけだよー?」
私が卓袱台を手に持つと、「せーのぉ」と言ったところで、後ろから「浮気がどうしたんだ?」と呆れたような声がする。
振り向けばルーファスが半目で見ていて、私としては気まずい。
「えーと、子供達のお飯事……だよ?」
「オレの知っているお飯事には程遠いな」
「う、ふふふ~……私もそう思います。きっと、今の子達流なのよ」
笑って誤魔化したものの、後ろから突き刺さる視線が痛いわぁ……さっきより軽く卓袱台を投げると、三人からは「うわきものっていってー」と駄目出しがくるし、ルーファスからはジト目で見られるし、困った遊びに巻き込まれてしまったものだ。
と、いうか……いつからお飯事の名前が浮気になったのか聞きたいところだわ。
この遊び、ルーファスが子供達に駄目だと言って、禁じられた遊びになった。
コハルやシャルちゃんは不服そうだったけど、新しい遊びを二人はまた思いついたのか、庭の隅っこで卓袱台をひっくり返して「こんなめしがきゅえるかー」と、グルメドラマを繰り広げている。
本当にうちの子供達に変な遊びを教えているのは誰なのやらである。
「ピピィ?」
「……わたしをすてるのー?」
「これ、どーぞ」
「ピピ? ピィー」
「……りこんして、わたしといっしょになるのー」
庭でゴザを敷いて、その上でコハルとシャルちゃんとピスターシュが、小さな卓袱台に木のお茶碗と器を使って『お飯事』をして遊んでいる。
相変わらず、正妻と愛人と旦那様の配役のようだ。
誰ですかね? 正妻とか愛人とか教えたバカな大人は……コハルに葉っぱの離婚届を突き付けられたピスターシュは『オレは知らない』と、首を傾げている。いや、本当に分かっていないようなんだけどね。
そして愛人役のシャルちゃんは、離婚に喜んでいるようだけど、ふわふわした感じの子なので、イマイチ嬉しいのかどうなのか分かりにくい。
シャルちゃんは基本いつも眠そうに笑っている子で、おっとりしている。イマイチ危機感のない愛憎劇なのはそこら辺かもしれない。
コハルがその分チャキチャキ喋って、お気に入りの卓袱台返しを披露する。
「今時のお子様達は、変なお飯事をしますのね」
「あー、うーん。うちの子達だけじゃないかなー? と、思うわよ。普通の遊びをして欲しいんだけどね」
居間からミルアと一緒に愛憎劇場のクライマックスを見ているけれど、何とも言えない感じである。
コハルはただ単に、卓袱台返しがしたいだけなのよね。
付き合わされるシャルちゃんとピスターシュはいい迷惑な気がする。
「今日も元気ですねー」
「あら、フィリアちゃん。うちの子達が騒がしくしてごめんなさいね」
「いえいえ。うちの子はこのくらいじゃ起きませんから」
フィリアちゃんの言うように、腕の中の五人目の孫、キャロルちゃんはスヤスヤ寝ている。
流石、毎日シュトラールに「父上が帰ってきたよー!」と、スリスリ攻撃から始まっていくのだから、ちょっとやそっとの騒音では起きたりしないのよね。
リュエール家族が自分の家に戻り、入れ替わりに我が家にシュトラール一家が移り住んできた。
まぁ、床上げまでの間なんだけどね。シュトラールの所が終わったら、ありすさんの床上げまでのお付き合いがある訳ですよ。
うーん。我が家は床上げまでのお世話が続くわねぇ……私の時も色々周りにお世話になったから、そのお返しでもあるんだけどね。
「ははうえー、もとにもどしてー」
「自分で卓袱台をひっくり返したのに、何で戻さないの?」
コハルが縁側によじ登って、自分がひっくり返した卓袱台を私に元に戻せと手で床をテシテシ叩いて訴える。
我が娘ながら我が儘に育ってしまっているわ……ルーファスなら、娘の為に元に戻すだろうけど、そろそろ自分で投げた物は自分で元に戻す事を覚えさせないといけない。
縁側から庭に降りてコハルが「これー」と私の着物の裾を引っ張って、ゴザの上で散乱しているお皿と卓袱台を「はい!」と、『これですよ』と教えてくれる。
うん、教えてくれるのは良いんだけど、お母さんはコハルに自分で元に戻して欲しいわ。
「コハル。一緒に元に戻そうか」
「ははうえ、もどして」
「ガシャーンってやったのは、だーれー?」
「うわきした、ぴぃしゅけがわるいの」
「設定にこだわるねぇ……もっと可愛らしい設定は無いのかしら?」
「ははうえ、うわきしてー」
「えーっ、母上は浮気しないよー?」
「ピピイ」
「……うわき、して?」
「ええー? ピスターシュとシャルちゃんまで!?」
三人がキラキラした目で私を見上げてくる。浮気を子供達に薦められているのもどうかと思うんだけどね。本当に、この子達に『愛人』『浮気』を教えた人は誰なのか……
コハルとシャルちゃんが卓袱台を元に戻し、葉っぱの離婚届を私に渡してくる。
ピスターシュが両手を上げながら、卓袱台返しを投げる振りをして期待の目を向けてきた。
「え? 私がやるの?」
「やるのー」
「……やって」
「ピピイ!」
卓袱台に手を掛けて「ええーい。浮気者~」と卓袱台を軽く投げると、卓袱台は地面を縦にクルクルと回り、コハル達がワァッと喜んで手を叩いてくれる。
うーん。中々に爽快ではあるのかしら? もしかしてお飯事は、この為だけの盛大なフリなのかも?
「ははうえー、うわきしてー」
「えーっ、浮気もう一回?」
「ピピ!」
「……してー」
「仕方がないなぁ。浮気はあと一回だけだよー?」
私が卓袱台を手に持つと、「せーのぉ」と言ったところで、後ろから「浮気がどうしたんだ?」と呆れたような声がする。
振り向けばルーファスが半目で見ていて、私としては気まずい。
「えーと、子供達のお飯事……だよ?」
「オレの知っているお飯事には程遠いな」
「う、ふふふ~……私もそう思います。きっと、今の子達流なのよ」
笑って誤魔化したものの、後ろから突き刺さる視線が痛いわぁ……さっきより軽く卓袱台を投げると、三人からは「うわきものっていってー」と駄目出しがくるし、ルーファスからはジト目で見られるし、困った遊びに巻き込まれてしまったものだ。
と、いうか……いつからお飯事の名前が浮気になったのか聞きたいところだわ。
この遊び、ルーファスが子供達に駄目だと言って、禁じられた遊びになった。
コハルやシャルちゃんは不服そうだったけど、新しい遊びを二人はまた思いついたのか、庭の隅っこで卓袱台をひっくり返して「こんなめしがきゅえるかー」と、グルメドラマを繰り広げている。
本当にうちの子供達に変な遊びを教えているのは誰なのやらである。
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