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三章
当時のスイ① スイ視点
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雛姫麻乃は、栗色の髪に緩やかにウェーブのかかった髪をしていて、大きな丸い目は両親のどちらにも似ていない。
どうしてもどちらかに似ていると決めろと言うのなら、確実に母親似ではないだろう。
母親の小百合は勝ち気で目は涼やかでキリッとしている。
父親は少し垂れ目がちで、優しくいつでも笑っているような人物だ。
(まぁ、性格は難ありだが)
四聖獣は生まれる時、樹と共に生まれる。
その樹は、聖獣の存在そのものであり、白虎の星夜にもその樹はあった。
「こんな枝樹が……そんなに、大事な物だろうか?」
「あー、スイ! ソレ、大事だからね! 下手に折らないでよ?」
「そこまで乱暴には扱ってはいない」
「スイは割と乱暴だからね。僕は心配だよ」
星夜はそう言いながら、少しだけ苦笑いして自分の樹を見つめる。
彼のこの表情の理由は分かり切っていた。
彼の妻、小百合が彼の子を身篭っているが、白虎の能力のない子供だという事だ。
聖獣の数は少なく、ましてや他種族同士の妖の子供では、聖獣が生まれる確率はずっと下がる。
それは仕方がない事だ。
妖自体が不確定な要素の元で生を得るのだから、子供ができただけでも奇跡に近い。
「どんな子供が生まれるんだろうね?」
「さあな。小百合に似たら、目も当てられないな」
「ハハハ。それは、元気がいいという事に、しておこうよ」
小百合という妖は人魚の妖でありながら、人魚特有の儚さの無い女で、凶暴な女なのである。
見た目だけは美しい。ただそれだけだ。
口を開くと「ビールが飲めない!」と、騒ぐような妊婦だ。
やれやれだ。
星夜が認めた女性だから、文句は多少あれど、仲良く? しているつもりだ。
____そして、桜の舞う季節。
小さな女の子が生まれた。
星夜は勿論大喜びしていたが、一番喜んだのは、オレだったかもしれない。
小さな女の子は、生まれた瞬間、オレの愛しいお姫様になった。
この絶望しかない世界で、この子だけが輝いて見えた。
そして、不思議なことに、この子が生まれてしばらくして、小さな木の芽が聖獣の樹に生えた。
これに関しては、この子が聖獣なのか? とも思われたが、この子は聖獣の能力より人魚の能力を色濃く持っていた。
彼女の成長が嬉しかった。
少しずつ大きくなって、オレの後ろを「スイ」と名を呼びながら、ついて回る姿はヒヨコのようで可愛らしかった。
彼女は、子供ゆえの刷り込みからか「スイのお嫁さんになるんだもん!」と、事あるごとに言っては、両親を困らせていたが、この子が大人になっても変わらない気持ちなら、それもそれでいいだろうと思っていた。
この小さなお姫様には、それだけの価値と心の安らぎがあったのだ。
どうしてもどちらかに似ていると決めろと言うのなら、確実に母親似ではないだろう。
母親の小百合は勝ち気で目は涼やかでキリッとしている。
父親は少し垂れ目がちで、優しくいつでも笑っているような人物だ。
(まぁ、性格は難ありだが)
四聖獣は生まれる時、樹と共に生まれる。
その樹は、聖獣の存在そのものであり、白虎の星夜にもその樹はあった。
「こんな枝樹が……そんなに、大事な物だろうか?」
「あー、スイ! ソレ、大事だからね! 下手に折らないでよ?」
「そこまで乱暴には扱ってはいない」
「スイは割と乱暴だからね。僕は心配だよ」
星夜はそう言いながら、少しだけ苦笑いして自分の樹を見つめる。
彼のこの表情の理由は分かり切っていた。
彼の妻、小百合が彼の子を身篭っているが、白虎の能力のない子供だという事だ。
聖獣の数は少なく、ましてや他種族同士の妖の子供では、聖獣が生まれる確率はずっと下がる。
それは仕方がない事だ。
妖自体が不確定な要素の元で生を得るのだから、子供ができただけでも奇跡に近い。
「どんな子供が生まれるんだろうね?」
「さあな。小百合に似たら、目も当てられないな」
「ハハハ。それは、元気がいいという事に、しておこうよ」
小百合という妖は人魚の妖でありながら、人魚特有の儚さの無い女で、凶暴な女なのである。
見た目だけは美しい。ただそれだけだ。
口を開くと「ビールが飲めない!」と、騒ぐような妊婦だ。
やれやれだ。
星夜が認めた女性だから、文句は多少あれど、仲良く? しているつもりだ。
____そして、桜の舞う季節。
小さな女の子が生まれた。
星夜は勿論大喜びしていたが、一番喜んだのは、オレだったかもしれない。
小さな女の子は、生まれた瞬間、オレの愛しいお姫様になった。
この絶望しかない世界で、この子だけが輝いて見えた。
そして、不思議なことに、この子が生まれてしばらくして、小さな木の芽が聖獣の樹に生えた。
これに関しては、この子が聖獣なのか? とも思われたが、この子は聖獣の能力より人魚の能力を色濃く持っていた。
彼女の成長が嬉しかった。
少しずつ大きくなって、オレの後ろを「スイ」と名を呼びながら、ついて回る姿はヒヨコのようで可愛らしかった。
彼女は、子供ゆえの刷り込みからか「スイのお嫁さんになるんだもん!」と、事あるごとに言っては、両親を困らせていたが、この子が大人になっても変わらない気持ちなら、それもそれでいいだろうと思っていた。
この小さなお姫様には、それだけの価値と心の安らぎがあったのだ。
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