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些細な変化と、戸惑い
しおりを挟む抽象的な表現だが近頃、自分で自分がおかしいと思う。
おかしくなってしまったのはすぐに胸が大きく波打つ身体か、それとも頭だろうか?
エイヴェリーの距離が近いかどうかなんて考えた事もなかったのに、肩が触れそうな距離でソファに並ぶ彼との距離が何故か落ち着かない。
エイヴェリーの静かな息遣いにさえ緊張して顔が火照ってしまう。
「リベルテ、何かあった?」
「えっ……どうして?」
(もしかして私どこか変だったかしら?)
近頃どこかよそよそしく避けられているように感じるリベルテにエイヴェリーは不安を抱えていた。
勿論彼はリベルテのことをただの親友というにはあまりにも熱い視線で見ているし、日に日にただの親友ではなくもっとリベルテの心に触れたいと願ってしまっている。
そんな欲深い自分の思考が洩れてしまっているのか?
リベルテがどうしても自分と距離を置いているように感じて寂しさからつい強引に尋ねてしまった。
彼女も無意識のうちにエイヴェリーを意識してしまっている気持ちを持て余しているのだが、互いにどこか「いつもと違う」という違和感だけを感じているままの曖昧な状態だった。
自覚してしまっている分、エイヴェリーの不安はリベルテのものより具体的で「自分の所為か?」と自答自問する中でエイヴェリーはリベルテという人柄を信じることにした。
正直に寂しいと話してしまえばリベルテが自分を避ける理由がよほど深刻なものでない限り話し合って解決できるはずだ。そう信じると決めたのだ。
リベルテもまたエイヴェリーにどう説明すれば自分でもよく分からない感情や行動が伝わるのかと自分の中で消化しようとしているところだった。
「エイヴ」
「リベルテ」
くすくすと額をひっつけて笑い合う、そんな行動にもリベルテの心臓はうるさくなってしまう。
「あなたからどうぞ」
「じゃあ、僕から」
エイヴェリーは素直に伝えた。
「僕がこれほどまでに気の置けない人はリベルテだけなんだ」
「ええ、嬉しいわ」
「だから君に何かしてしまったのなら謝りたいし、君が僕を避けると心が張り裂けそうなほど辛い」
エイヴェリーの言葉を聞いてリベルテはハッとする。
彼に対しての今までとは違う感情に戸惑ってたったひとりの親友にひどい対応をしてしまったと。
「ごめんなさい。私どうしてもエイヴと居ると近ごろおかしい気がして」
「おかしい?」
「心臓が早くなったり、貴方と触れあった所が熱いの」
「それって……」
(いや、自覚するのを待とう。彼女の気持ちを急かしてはいけないな)
「それって?」
「ううん、じゃあこれは嫌?」
リベルテの手をそっと取って握ると彼女は頬を染めて俯くが、頭を左右に振った。
「ううん。けど心臓がうるさいわ」
「そっか、リベルテは僕が居なくても平気?」
「そんな!エイヴが居ないと毎日つまらないわ」
「僕も同じだよ」
「あっ……、ごめんなさい。もう避けたりしないわ」
「いいんだ。これからもそばに居てくれる?」
「もちろんよ」
リベルテは気付いていないだろうが、真っ赤な顔で変わらずエイヴェリーのそばにいることを誓った。
エイヴェリーは王家に次ぐ家門の公爵、リベルテ自身以外に他に求めるものなどない。
ただ彼はリベルテ自身と酒を酌み交わし、身を寄せ合ってウトウトするあの幸せな時間を求めているだけ。
彼に思惑なんてなく、彼は純粋にリベルテとの時間を大切にしているのだ。
(私、エイヴに悪い事をしたわ……)
心から思い合える親友とただそばに居たいと思ってくれている。
自分だって同じ気持ちだし、エイヴェリーに求めるものはない。
ただ彼とーー……
「エイヴ、私はただ貴方と居られればいいの」
「うん」
「何も求めてないわ、たったひとりの親友の存在感以外は」
「僕も、こんなこと初めてなんだ。リベルテの隣に居たい」
「もう黙って離れたりしないわ」
「今日こそは、一杯付き合ってくれるよね?」
「もちろんよ!!」
話さなかった時間を埋めるように一晩中語り尽くしたふたり。
喧嘩でもしたのか?と伯爵家と公爵家を騒がせた二人の騒動はたったの数日で二人の仲をさらに深める形となって終幕した。
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