10 / 69
前皇后と皇帝陛下の闇
しおりを挟む前皇后は心優しく、美しい人だったと聞く。
彼女は不貞によってシエラを産んだが、それは元婚約者との子供であった。
前皇后にの美しさと、総てを受け入れるような温かい心に触れ当時の皇帝はその美しさからひくて数多であったにも関わらず、
すでに婚約者のいる前皇后であり、後のシエラの実母と無理矢理結婚した。
だがこれも、皇后の友人であったある人達と皇帝にしか知られていない事実である。
社交会の華であった前皇后はいつも人に囲まれており、彼女にとって皇帝ですらもその中の友人のひとりであった。
そう。ただの友人である。
にも関わらず日に日に、執拗なまでの執着を見せ貧乏な伯爵家の皇后の恋人では彼女を不幸にすると、無理矢理自らに嫁がせたのだ。
それでも諦めきれない二人は隠れて逢瀬を繰り返した。
二人を不憫に思う友人や、一部の使用人が協力した。
いつか離縁するのだと、前皇后はいつも言っていた。
「陛下は、悪い人ではないけれど…私は彼の元へ戻りたいわ。」
けれども皇帝の執着は溺愛というにしても過剰なものであった。
前皇后はだんだんと気力を失い、最後の手段で皇帝ではなく恋人の子を産むという一か八かの賭けに出たのだった。
皇帝との閨は断り続け、あからさまに産まれたらおかしい状況を作った。
そして、お腹が大きくなったのもバレないよう病を装い隠れて過ごした。
懐妊の際には、そそっかしい新人メイドに伝えに行かせるという作戦でバレた状況を誘導した。
「殺されるかもしれない、でもこの子だけはあの人の元へ…」
そう言って信用していた侍女に預けると言って、産後の疲れで眠ってしまった後、到着した皇帝は産まれたてのシエラを見てニヤリとした。
「…ほう、私と同じ髪と瞳。レイラにそっくりな顔立ちとなるだろう。」
「伯爵と、この件に関わった使用人を全員殺せ。」
「ひっ!陛下!!お助け下さい!」
使用人達が命乞いをする中、侍女はシエラを抱いて走った。
走って、走って、斬られても走った。
だが城から出る前にはもう、その命は尽きそっとシエラを抱き上げた皇帝は悲しそうな顔をして、目撃した者たちに言った。
「全員、死刑、頭から3つ程の高位貴族のみ集めよ。レイラにそっくりだな…子に罪はないだろう皇女として受け入れる。」
次に前皇后が目を覚ました時には、皇女として取り上げられたシエラと、
変わり果てた伯爵の姿。
居なくなった侍女や、一晩ですっかり変わった皇宮の使用人達や友人。
蔑むような高位貴族達の視線があった。
「あの子は…!シエラは貴方の子ではありません!!」
「なにを、子に罪はない。一度の過ちを許そう。」
「あの人を…殺したのね!」
「誰だったか?もう忘れなさい。」
「…!!貴方を愛する事はないわずっと!!!!!」
そう言った前皇后は、心の休養だと別宮へと移されたがそれは事実上の監禁であり、皇帝は彼女が自害するまで、
シエラを人質に、好きなように抱き、好きなように操った。
そして、対面上の公式のパートナーが必要となり今の皇后が側妃に召し上げられ、前皇后の死後、うまく皇帝の心を掴み皇后となったのだった。
マッケンゼン公爵の母はまた、シエラの母の親友であったがその地位と父が母の命を守り抜き、口を閉ざすことでその生を許された人物であった。
だからリヒトにとって噂などはどうだってよかった。
だが、無理矢理に婚約者になったシエラのやり方はまるで皇帝のようではないかと嫌悪していたのだった。
(だが、実際のシエラは傲慢でも強引でもなくまるで私しか頼る者が居ないというような縋り方であったな….)
分かっていても、一度感じた嫌悪は拭えなかった。
ある日突然、この世の全てを拒絶したかのような瞳で彼に微笑み、婚約解消を申し出るまでは…。
(あの小さな身体に、これ以上の何があったというのだ…)
33
あなたにおすすめの小説
若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。
愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。
ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。
ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。
二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。
時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し……
全ては、愛する人と幸せになるために。
他サイトと重複投稿しています。
全面改稿して投稿中です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
さこの
恋愛
婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。
そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。
それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。
あくまで架空のゆる設定です。
ホットランキング入りしました。ありがとうございます!!
2021/08/29
*全三十話です。執筆済みです
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる