暴君に相応しい三番目の妃

abang

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悪女の手下?出世馬?

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皇妃宮から本城へのお使いの帰り道、ララは新しい側妃がくるという噂を耳にする。

(側妃……?念の為に調査しておくべきね……)

詳しく調べてみるとまだ年端もいかぬ頃に放浪の旅に出た皇帝の友人が帝国に戻ったとのことだった。
どうしてそれが新しい側妃という話になるのか?
それは容姿や性別の所為だとすぐに分かった。

そしてララから件の報告が終わるや否や、ドルチェはすぐに彼女と遭遇することになった。

   
翌日、皇帝への謁見を門前で派手に志願している女性に遭遇する。いつもは厳格な衛兵達が心なしか困っているようにも見えたのでリビイルに止められたものの、その女性に声をかけた。

「なにか問題が?」

「はっ!皇妃殿下!それが……」

「貴女がヒンメルの奥様ですね、初めてお目にかかりますわ」

「……で?」

やけに堂々と、無礼なほどの自信に満ちた態度でドルチェに声をかけたその女性の声色は柔らかくて落ち着いているが、ドルチェは特に返事を返すことなく、当初声をかけた衛兵から視線を逸らさずに彼の返事を待った。


「そ、それが……皇帝陛下の幼馴染だと仰られていまして」

「事実なの?」

「帰還のお噂もございますので、只今確認中です」

「いいわ、私が確かめてきましょう」

「まぁ!とても親切な方ですのねっ!」

「……」


相手の態度に違和感を感じつつも、いつもの笑顔だけを向けて本宮へと入るとドルチェはすぐに当初の目的の執務室へと向かい、彼女の素性をレントンに確かめた。


「ミルクティー色の髪に同じ色の瞳の小柄な女性ですか……」

「ええ。門の前が動かないらしいわ」

「確かに……容姿は似ていますが、陛下の確認が必要ですね」


そうこうしている間にヒンメルが来て、さほど興味も無さそうな様子で魔道具に映し出された彼女を指して「間違いない」とだけ返事をした。

彼女、ティアラ・フリンは皇帝の知り合いで幼少期の当時はヒンメルと同格にやり合うほどの実力者だったという。
大きな家門の出ではないが、実力を買われ皇宮で魔法騎士団への入隊が約束されていたが、彼女は様々な自然に触れ、魔法の根源を辿りたいと放浪の旅に出たらしい。


「陛下、どうなさいますか?」

「入隊希望か?」

「いえ、それはまだ何も……」

「謁見を希望していたわよ、その人」

「……分かった。ドルチェも来てくれ」


まるで潔白を証明する普通の夫のようだとレントンが内心で考えていることをドルチェが知る由もなく、ただ微笑んで頷いた。


「会えてうれしいです、ヒンメル!」

「そうか。よく戻ったな」


前髪を綺麗に切り揃えられ、髪が緩く巻かれて愛らしい印象の小柄なその友人はおっとりしている風でヒンメルの琴線をうまく避けて会話をする。

だからか、いつもより柔軟な態度のヒンメルにドルチェは少しチクリと胸を刺すような気がするも深く考えなかった。


「ご友人だと聞いたわ、ティアラと呼んでも?」

「ええ、もちろんですわ!」

「……」

嫉妬一つしない様子のドルチェが気になるヒンメルは気付いていないが、あからさまな好意が見え隠れするティアラにレントンはあまりいい印象を抱いていない様子だ。

「そういえば、旅先でヴァニティ伯爵家の方々を知りました」

「そうか」

「まさか、妃殿下は違うと思いますが……ヒンメルが心配になりました。妃殿下があの愚かな家門の出だなんて……」

「何が言いたい?」

「わ、悪気はないのです!ただ私は愚かに身を滅ぼしたヴァニティの血筋を持つ妃殿下が不憫で……」


俯き涙を拭く姿を見せるが、レントンの角度からはきちんと口角が少し緩みかけているのが見えた。


「そうね、けれどヴァニティを堕としたのは私だもの」

「えっーーー」

「ふふ、だから安心して頂戴」

意外だったのか、その程度も予想していなかったのか、ティアラは相当驚いた様子で言葉を失った。


「くっく……ドルチェ、来い」


楽しそうに笑うヒンメルにドルチェは首を傾げながら指示されたとおりに彼の膝に座る。

ティアラは笑顔をヒクつかせてヒンメルの初めて見る穏やかな表情に内心で悔しくて仕方がない。



(噂ほど強そうに見えないわね)


それもそうだ、ヒンメルとて幼い頃から成長しているし努力もしている。ドルチェもまた成長を遂げても努力を怠らない性格。

自信過剰で、ヒンメルの幼馴染だと謳って楽に旅をしてきたティアラとは過程もなにもかも全てが違った。


ヒンメルの膝に座るドルチェに仕えるリビイルやレンを見渡したティアラはドルチェに「奔放なんですね」といかにもヒンメルを心配するかのように言った。


それを見逃さないのが覗き見をしていたレイとフィアで、出てくるなりララやライアージェ、ジェシカを指さす。


「見えてないみたいだね、フィア」

「嫉妬ってやつかな?ドルチェ様美しいから」

「そうだよね、じゃ敵わないよね」

「な、なんですか!?この子達は……!」

「ごめんなさいね、ウチの子達なの」

「ヒンメル、この子達を正当に罰して下さい!」



けれど、ティアラはヒンメルの冷ややかな目に見下ろされた上に、ドルチェの魔力で威圧され萎縮する。



「何故、俺がそんなこと?」

「え……でも私たち、幼馴染じゃ……」

「友人だったが、ドルチェは妻だ」

「ウチの人間に手を出すつもりなら歓迎はしないわよ」


ドルチェの悠々とした様子とは違う刺すような魔力と言葉。
そんなドルチェしか写していない金色の瞳にティアラはただ力なく引き下がった。


「申し訳ありませんでした、旅の帰りで気が立っていたようです」

「別宮の来賓室を用意したわ。ゆっくりして頂戴」

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