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王弟殿下は救世主
しおりを挟む(もう、本当に腹立つわ!早くテオ様を探さなきゃ!王妃様の言うことなんてきっと嘘よ!)
エミリーは王宮内を足音を立てて腹立たしげに歩いていた。その姿は淑女というには程遠いものであったが…
「噂通りの、可憐なレディだね。デボラ伯爵令嬢。」
テオドールより少し高めの声で名を呼ばれ振り返ると、銀髪の長身で逞しいというよりは中性的な、肩より少し短い毛先を真っ直ぐに切り揃えられ、前髪も同じ長さで切り揃えられて、前髪を左に多くかき上げている長身の男性がいた。
切れ長の目に綺麗な紫水晶の瞳をもつ彼はその瞳と髪色から王族であることは間違い無かった。
「へっ?…わ、私ですか!?ありがとうございます…」
「誰?って言いたげな目だね」
クスクスと笑いながらエミリーに言う彼は優雅でどこか女性的な雰囲気を合わせもつ人だと思った。
「テオドールの恋人のエミリー嬢だったかな?」
気を良くしたエミリーは瞬時にしてその彼に好感持ち、敵だらけのこの王宮での彼女の味方だと認識した。
「そんな、恋人だなんて…皆様に反対されて…テオ様のお気持ちだって、私の勘違いなのかなって…」
口角を上げ、獲物を見つけたかのような顔で笑う彼は少し怖かったが、敵意は感じられなかった。
「そんなことはないよ、テオドールが婚約者であるセシール嬢以外に興味を持つなんて初めてのことだからね、僕はすっかり真実の愛を見つけたのかと思ったんだが…」
「そうよ、私たち真実の恋なのよっ…」
「ん?なんだって?」
「いえ、なんでもありませんわ!」
慌てて誤魔化すエミリーを気にする様子もなく、彼は続けた。
「可愛い甥のためにも、僕も協力しないとね」
人好きのする笑顔でそう言った彼にエミリーは神が降りたのだと思ったのだ、
(甥ですって!?王弟殿下なのね!なんてツイてるのかしら!)
「では、レディに僕から些細なプレゼントを、」
「まぁ!素敵だわ!」
「テオドールと君の恋を叶えるためにはきっとこれが必要となるよ、これは不思議な魔道具でね、決して口外してはいけないよ?」
人差し指を唇にあて、いたずらな笑みでエミリーに言った彼は、名前と手紙の宛先、ある店の名前を書いたメモを不思議そうな表情でうなずくエミリーにこっそり手渡した。
「僕とまた話したくなったらここへ、」
小さな声でそう言って歩いて行った。
振り返ったエミリーに反して、彼が振り返る事はなかった。
だが、彼から貰ったネックレスをつけてから、エミリーは光魔法を開花させたのだ。
(嘘、そんなことがありえるの!?これで私も王妃になるに申し分はずよ!)
ここは王宮であり、わざと身を隠そうとしない限りはどこにいても人目につくので、エミリーが急に彼女の持つわずかな魔力ではあるが、確かに光魔法を発したのを多くのものが目撃した。
それからは、すぐに噂になり、王宮に保護され皆の前で小さな傷を魔法で治すと、周りのものが急に態度を変え、父にもそれは報告されたし、他国の王太子にから求婚をされた。
他国に光魔法を持つエミリーをやるくらいなら、王家の誰かに嫁がせてはどうかと、騒ぐものも出てきたのだ。
それの中には、テオドールも候補として入っていた。
王弟らしき彼のおかげでエミリーとっては良い方ばかりに話が進んで行った。
そして、すぐに聞きつけた国王、王妃によって、ノーフォード公爵、それに友好を結ぶメーベル侯爵、ランスロット辺境伯の元へをすぐに伝わることとなり、
王宮、月の女神の末裔であるディアーナとセシールを守る為の警戒をするように注意を促したのだった。
もちろん、セシールから聞いた話により、テオドールもすぐに知ることとなるのだが、
貴族派や、敬称争いも無いわけではないが、基本的に貴族も王家も団結力があり国内情勢は安定していることの方が多いアルベーリアにとって分裂が起きる前兆である事を意味していた。
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