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公爵様は守りたい
しおりを挟む先日王宮で聞いた話は真実だったようで、どうやら学園ではわたくしと殿下の婚約解消の話が真実味を増したようだった。
長い夏季休暇を目前とした学園は話の行方を見失うまいと、さらに盛り上がっていった。
そして、テオドールは夏季休暇をセシールと過ごせることを楽しみにし、落ち着かない様子である。
「テオ様…私、友達も少なくて休暇中はとても寂しいと思うのです…」
放課後生徒会ではいつものように、エミリー嬢の悲劇のヒロイン劇が始まりかけていた。
クロヴィスとセシールは呆れたように席を立ち、バルコニーへ出て気分を変えようとしていた。
ーー室内
「ああ、そうだね…。ギデオンとダグは婚約者殿とどこかへ行く予定かな?」
「い、いえ…私は解消を申し立てられまして…。」
「俺は、特に予定はありません。」
(私が寂しいって言ってんのに、なによそのそっけない態度は、テオ様ったら様子がおかしいわ、、)
「ダグ、何があったの?話が落ち着いたらまた、ゆっくり聞かせてもらおうかな、相談ならいつでも乗るよ。」
「お心遣いに感謝します、殿下。」
「友人だろう、当たり前でしょ」と笑って言うテオドールにダグラスは、殿下が明らかに溺愛しているはずのセシールをなぜか悪女だと思い、貶めようとした自分を嫌悪し、罪悪感に苛まれた。
「ダグ、ギデオン、私は休暇中は少し王都を離れる。もし時間があれば、エミリー嬢の友人として気にかけてあげてくれるかな?」
とはいえ、やはり、可憐で純粋なエミリー嬢を任されるのは嬉しく二人は笑顔で了承した。
「テオ様も、帰ってきたら顔を見せて下さいねっ?」
「そうだね、早く帰ってこれたらそうするよ」
「滞在は長くなるのですか?」
「ああ、ギデオン、その間用があれば伝書鳩を飛ばしてくれ。」
「承知した」
(テオ様ったら一体どこへ行くというの?公務かしら?)
ーーバルコニー
「セシール、休暇はどこで?」
「殿下がエラサに誘って下さったわ、公爵領だということで父からも許可がおりたの。」
「偶然だね、マケール公爵閣下より、俺の一行もエラサに招待されているよ。」
友好関係を続けてきた三家は、公爵領である月の女神の聖地だとされている、エラサの中心の塔をを守るように、中心部から少し離れた所に別荘を持っていた。
王都からあまり離れていない、面する南側がノーフォード公爵の別荘であり、シンプルで品のある作りに見えるが、機能性豊かな立派な要塞でもあり、聖地を守る砦である。
そしてエラサの北側ランスロット辺境伯家の別荘があり、こちらもまた寒々しく質素に見えるが、強固なる立派な要塞であり、西の聖なる巨大樹の森の小さな洞窟に繋がる、秘密の地下通路と 緊急時に備えてある広い地下室と食糧庫が特徴である。
そして、東側にある魔女の別荘と呼ばれる塔も、同じく普通の別荘ではなく立派な要塞であり、魔法を得意とする一族らしく古い昔、魔塔と呼ばれたものを見本として作っている。現在も多数の魔法の使い手が研究と別荘の留守を守っている。
どうやらセシールの父マケールは、今のアルベーリアは危険だと判断し、いざと言うときの助けになるよう、領地に厳戒態勢を敷いたということだろう。
「では、時間がある時は食事でもしましょう」
「あぁ、エルサは外部の影響を受けないから、安心して通信具を使えるし、いつでも連絡してくれ。」
「ふふ、そうね。では、きっとマチルダも居るわね。」
「ああ。マケール様のことだ。休暇でもあるが、お父上の勘は当たるので準備だけは整えておくよ。」
「では、殿下には私から話しておきます。」
クロヴィスは幸せそうなセシールに心が痛んだが、愛しているからこそ、邪魔はできなかった。
(いつか、この気持ちを伝える日は来るのだろうか、
来なくても、きっと俺はセシールだけを死ぬまで愛してしまうのだろう。)
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