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公爵令嬢は喜べない
しおりを挟む「ええ…分かりました。」
エイダ、エイミー達がやっと帰ってくるというのに、セシールは王宮への支度をしなければならなかった。
マケールとディアーナは一足先に王宮へ行くとのことで、別の馬車で行くこととなった。
セシールは追悼なのか、今日はタートルネックの黒のスレンダーなマーメイドドレスに、黒のレースの肘までの手袋、髪はキチンとまとめてあり、黒のベールがふわりと花のようにかかっているトークハットをかぶっていた。ヒールは低めのレース生地のものを履いてアクセサリーはパールで統一されていた。
「迎えの馬車はこないはずよ?」
セシールが表へ出ると、王宮の馬車が停車している。
「セシール、急ですまなかった。母上から言われていて今日は先に付き合ってもらう所があるんだ。」
「あら、殿下。ご機嫌よう。ご足労頂き感謝いたしますわ。
ところで、王妃様からとは一体何処へでしょう?」
「全員の処分が決まった、エミリー嬢については、私には見届ける義務があると仰った。セシールにはその権利があるとも…」
セシールは分かったような、なにか意味を含むような違和感を感じたが、王妃がセシールを貶めることは絶対にないと、セシールは知っているので、大人しく着いていくことにした。
「他には何か?」
「セシールの事だから、決して喜ばないでしょうと。」
王妃はセシール以上にセシールを想い、憤慨していた。
息子を惑わせたのはそのテオドールの若さと、その愚かさ故なので、腹は立つが、セシールへの仕打ち以上ではなかった。
入学早々に、幼い頃から彼の為に努力し、愛している婚約者をそそのかされ、つきまとい、人々の視線というナイフに刺されていたセシール。
噂や言葉というのは時に暴力よりも痛く、また感染病のように人々に広まりセシールを突き刺した。
そんな中でもただ静かに耐え、命を狙う者にも、嫌がらせをする者にも、愚かな婚約者にも決して同じ目線で戦うことなく、
公爵令嬢としての振る舞いを徹底していた。
よく見知った領民を殺されたと知った時も、領地を危険に晒されたときも決してエミリーや敵を責めるのではなく守りきれなかった自分を責めたセシール。
幼い頃からセシールの努力を側で見てきたし、そのノーフォードとしての気位をも知っていた。
それを穢らわしい、くだらない理由でセシールを傷つけ、その周りの者達を傷つけたエミリーの穢らわしいやり口にも、怒り心頭していた。
そして、彼女の欲望はついにこの国を窮地に陥れるきっかけとなった。
王妃はアルベーリアを愛していたし。国民、家族、そして元より親友であったディアーナの家族であるセシール達も愛していた。
死刑よりもっと、彼女のその欲にまみれた考えを、行いを、その自己中心的な世界を壊して、後悔させる方法を考えたのだった。
「着きました。」
「ああ、ありがとう。」
「ありがとう、」
ふたりはそこを見て驚いていた。
そこは、アルベーリア監獄の奥、その一棟だけは牢ではあるが、精神の治療の為比較的自由もあり、売店があり、医者が常在していた。
「この、精神棟にエミリー嬢は刑務として生涯をここで奉仕し過ごし、人の為になる人となり反省して償うことを刑として言い渡されました。」
王宮から一緒にきた執事が、礼をしながら言った。
「これは…ここで彼女はどんな業務を?」
セシールは絶句したが、すぐに執事に業務内容を問う。テオドールは黙って、その成り行きを見ていた。
「主にはカウンセリングです。掃除や雑用もする事になっております。本日こちらにいらしたら、まず面会し、それから彼女の牢へ案内する予定です。」
間もなくしてエミリーがやってきたと報告があり、応接室で対応することになった。
「なっっ!なんでアンタがここに居るのよ!!!」
セシールを見たエミリーは激怒していた。今にも掴みかかりそうな勢いで看守達を振り払おうと暴れたが、テオドールの制す声に、コロリと声色が変わり、泣き出した。
「テオ様…助けき来て下さったのね…!そうよね??」
と、久しぶりの淑女の顔で縋りつく様に、地面に膝をつき拘束された手を地面について、テオドールを見ていた。
「エミリー嬢、君は…僕を飼うといっていたそうだね。セシールを殺してやるとも。」
「そ、そんな事言ってません!誰が…」
「叔父上が証言したよ。」
「嘘よ!」
「ギデオンや捕らえた残りの兵達からも沢山君の事を聞いたよ。君はなんと言ったらいいか…とても、残念だよ。」
「なによ!テオ様だって私の美しさに骨抜きだったでしょう。」
「私はセシール以外を美しいと思った事はない、君もだよ。
セシール以外を愛した事はないし。セシール以外との
未来を考えたこともない。」
「弱い君を助けているつもりだった。その色香に惑わされたのは心の幼さと弱さ故。決して君自身を魅力的に思ったことはないよ。まして、誰とでも寝る女なんて….。」
「なにを、この女が悪いのよ、全部、私は使える全てを使って生きてるだけよ!!!!快楽を求めて何が悪いの!!気持ち良くって、思い通りになるなら最高でしょ!!!」
テオドールは完璧な淑女なセシールしか知らず、顔を真っ青にして、化け物を見るかのように額に手を置きもう話す事はないという素振りを見せたが、セシールがその後を続けた。
「貴方、表向きを本当に信じているの?」
「なに?どう言う意味!?あんたにカンケーないでしょ!」
「奉仕という事の意味よ。私閨の授業は少ししか受けていなくて、具体的には分からないのだけど。きっと酷い目にあうわ。」
「絞首刑より、ヤる方がましよ!私好きだしね。」
セシールはエミリーが何を言っているのかわからなかったがテオドールには分かった。
そして、ここに入ると言うことはどう言うことかを説明し、テオドールは手をシッシと合図し。連れて行かせようとした。
「そんなの嫌よ!!!ここから出しなさいよ!!!離して!!!やめてっ、お願いだから!!!」
叫びながら牢へ連れて行かれたのだった。
そしてすぐに、その断末魔は聞こえた。
「やめろよぉぉぉ!!!キャーーーー!!!!」
セシールは難しい表情で馬車まで歩いて、乗った。
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