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伯爵令嬢は断罪される
しおりを挟むそのまま場所に乗り王宮へ向かう。
浮かない顔をするセシールに、テオドールは眉尻を下げ
申し訳無さそうに言う。
「何度謝っても足りないが、あなたにはとても辛い思いをさせていた。私達の婚約は白紙となるだろう。それでも、私は貴方だけを生涯愛していると言うことを知ってて欲しい。」
最近のテオドールには驚くことばかりであった。
当たり前に婚約者であったし、テオドールからも直接愛を伝えられることは無かった。
セシール自身また未熟で、特に男女のことについては真っ新だったので、エミリー嬢と腕を絡めあうテオドールや、恥部に顔を寄せるテオドール、自分以外の女性を抱きしめ、その柔らかい部分に頬を染めるテオドールの婚約者ではない他の人に見せる生々しい、男性の顔を裏切りに感じ、忘れられずにいたがまさか、
「婚約が白紙に…?」
「あなたが私を生涯の伴侶と選んでくれるのならば、王家は喜んで再び受け入れる。」
セシールは考えこんだ。魅了にかかっていたのかもしれないとはいえ、愛してると言うその口で、見つめる瞳で彼女の名を呼び、目の前にいる自分に見せつけるように、見えていないかのように、見た事のない男性の顔でエミリーを見つめていたテオドールを許してはいるが、愛しているのか分からなかったからだ。
「分かりました。私も考える時間が欲しいの。貴方もこれだけは知っていて、私の5歳から今までの時間は全部、テオだけを愛し、テオだけに触れたいと思っていたわ。」
セシールの触れたいと、テオドールのそれとは全く意味が違うし、テオドールに比べ彼女はその方面は無知であったが、少なくとも男性としてテオドールを愛していたという事はテオドールにも伝わっていた。
「これ以上、あなたを引き止める権利がないのは分かっているが…セシール愛しているよ。」
愛してると繰り返し言い、セシールを抱きしめるテオドールにセシールの胸は切なさで張り裂けそうであった。
裏切られたように感じている自分、
彼を許しているのに不安で受け入れられない自分
彼女の十数年間の想いを穢されたように感じる自分
セシールは自分にも女性らしい魅力があったなら…それを武器にする程の自信があったなら、テオドールを満たすことができていたのかと後悔もしていた。
セシールはテオドールの胸で、綺麗な涙を流していた。
「ほんとうに、ほんとうにっテオを愛していたわ、ただ今は不安で、貴方をまだ信じられないでいるのっ」
「セシール、いいんだ、全部私の責任だ。お願いだから泣かないで、きっと貴女に選ばれる男になるよ。」
ふたりは婚約者として最後の刻を、馬車で、初めて婚約者らしくお互いを見つめあって過ごした。
それは切ないものであったが、本心を知れるきっかけとなり、これからを前向きに生きる為に必要な時間であった。
「私も悪かったの、女性らしく貴方を満たせていなかった、」
涙を流しながら悔いるセシールにギクリとした。
「ちがうんだ!セシールっ、私もただの男だ。貴女に触れたいと、その…そんな顔をさせたいと、その姿を…何度も想像した、」
セシールは顔を真っ赤にして驚きで涙は引っ込んでいた。
「ぇ…あの、」
「その美しい肌を、唇を、貴女をどう触れたら乱す事ができるのか…その声はどんな風に私を呼ぶのか、貴女の大切なところはどんな味だとか、どう言う貴方の姿を見たいか…」
「テオ!!もういいわ、…恥ずかしいの。」
何も知らないセシールにも、その熱っぽい視線は、その色めいた雰囲気は伝わってきていた。
「じゃあ、なんで私ではなく、彼女だったの?その目線は彼女へ向いたの?」
なんとなく、何がだめだったのかセシールは知りたかっただけの質問であって、テオドールを責めた訳では無かったが、
テオドールは金槌で頭を叩かれたような感覚だった。
そうだ、彼女を穢していけないと思っていた。
だけど彼女な婚約者だし、私を愛してくれていた。
何度もその唇で私への愛を囁いてくれたし、
ふたりになると、たどたどしく指先を軽く握って手を繋いで欲しいとねだった。
女性として意識するようになり、知識を身につけたテオドールは正しく、セシールと距離を縮めていけば良かったのに。
精一杯、歩み寄ってくれている、何も知らない彼女をもどかしく感じ、我慢をできないからと、その欲をどうでもいい手っ取り早い所で処理したいという気持ちがあったのかもしれない。
テオドールは改めて自分の愚かさに気付いた。
そして彼女を穢さない代わりに、彼女を傷つけ、別の女性を利用しようとし、魅了に惑わされたのだと。
なんて、愚かだろう。
愛する人と、少しずつ触れ合っていくのならば、
彼女だけを心から愛して、彼女の身をも愛したのならばそれは穢したとは言わないのに。
自分の邪な想いが瞳を曇らせて、
結果、次期王妃として王太子妃としての彼女の努力の日々を、彼女からの純粋な愛を、裏切り穢していたのだと。
「セシール、ほんとうにすまない。貴女を穢してしまうような気がしていた。愛し合っていたのに…邪な考えばかりする自分の心が貴方を傷つけてしまったのだ。彼女にも申し訳ないことをしたよ。」
「いいえ、これは私の幼さ故なのねきっと。テオこれ以上は謝らないで私達はまだゼロになるのね。」
テオドールはそっと顔を上げて、窺うようにセシールを覗き込んだ。
「私達はまだ今は婚約者かな?」
「ええ、そうね」
切なく微笑んだセシールの唇にそっと、そっと口付け、「ごめん」というテオドールに一瞬目を開いて止まって、首をゆっくり左右に振った。
セシールは赤く頬を染め、恥ずかしそうにしたが、馬車でなんて、はしたないとテオドールを咎めることは無かった。
「きっと貴女の心を取り戻すよ、」
「私は…」
「いい。貴女の気持ちは理解している。」
そっと頷き目を閉じたセシールとテオドールは王宮まで、それ以上もう何も話さなかった。
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