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第3話 たゆたう恋心
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数日後、キャロライナの部屋をクリスティアンが訪ねてきた。
「アーヴィンに手紙を書くが、何か伝えることはあるか?」
「いえ、ございません」
「おやおや、あんなに楽しそうに話をしていたじゃないか」
「あれは一時の縁というものです」
「そうか。ふうむ……」
クリスティアンは物憂げに顎をさすった。
「お前ももう18才。俺が北の隣国の姫君と婚約しているように、そろそろ結婚相手を考える年頃だ」
「そう、ですね……」
「いいのか、本当に。そこら辺の貴族や隣国の王族に……好きでもない奴らに嫁いで、いいのか?」
「……そういうお兄様は、いいのですか?」
キャロライナは混ぜっ返した。
「俺はフローレンスのことを愛している」
クリスティアンは胸を張る。
「……ええ、わたくしもフローレンスお義姉様のことは好きですよ」
「そうだろう。愛する者と家族になれることは幸せだよ」
「愛する殿方なんて、私には……」
「ふうん」
クリスティアンはキャロライナによく似た漆黒の目で妹を見つめた。
クリスティアンはキャロライナがアーヴィン相手に見せた微笑ましい様子を忘れてはいなかった。
「……お前が望むなら、俺は父上に口添えをする。あいつはいい男だよ。キャロライナ」
キャロライナは曖昧に微笑んだ。
「なんならどこかの貴族の養子にでもしちまえばいいんだ。いつでも声をかけてくれ」
「……ありがとうございます、お兄様」
けれども、キャロライナは兄にそれを頼むことがどうしてもできなかった。
自分の思いは確かにあった。しかし、相手はどうだろう?
アーヴィンはキャロライナのことをどう思ったのだろう。
好ましい人物だと思ってもらえたのだろうか。
せいぜい友の妹くらいのものではないだろうか。
キャロライナは自信が持てなかった。
しかし、その日は唐突に訪れた。
「キャロライナ、アーヴィンがまた王都に来るぞ。一ヶ月後だ」
「えっ……」
「叙勲されたんだ。ちょっとした出世だね。嬉しい?」
ニヤニヤと微笑む兄にキャロライナは顔を赤らめた。
「お兄様の馬鹿っ!」
「やれやれ」
兄は妹の純情を可愛く思った。
アーヴィンが王都に戻ってくる日はあっという間にやってきた。
キャロライナはその日、朝から落ち着かなかった。
兄の口添えで、キャロライナはその叙勲式に列席することになっていた。
ドレスやアクセサリーで飾りつけられた自分を何度も鏡で確認する。
「とてもお美しいですよ」
そう侍女が囁いてくれるけれど、キャロライナはちっとも安心できなかった。
「アーヴィンに手紙を書くが、何か伝えることはあるか?」
「いえ、ございません」
「おやおや、あんなに楽しそうに話をしていたじゃないか」
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「そう、ですね……」
「いいのか、本当に。そこら辺の貴族や隣国の王族に……好きでもない奴らに嫁いで、いいのか?」
「……そういうお兄様は、いいのですか?」
キャロライナは混ぜっ返した。
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クリスティアンは胸を張る。
「……ええ、わたくしもフローレンスお義姉様のことは好きですよ」
「そうだろう。愛する者と家族になれることは幸せだよ」
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「ふうん」
クリスティアンはキャロライナによく似た漆黒の目で妹を見つめた。
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「……お前が望むなら、俺は父上に口添えをする。あいつはいい男だよ。キャロライナ」
キャロライナは曖昧に微笑んだ。
「なんならどこかの貴族の養子にでもしちまえばいいんだ。いつでも声をかけてくれ」
「……ありがとうございます、お兄様」
けれども、キャロライナは兄にそれを頼むことがどうしてもできなかった。
自分の思いは確かにあった。しかし、相手はどうだろう?
アーヴィンはキャロライナのことをどう思ったのだろう。
好ましい人物だと思ってもらえたのだろうか。
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キャロライナは自信が持てなかった。
しかし、その日は唐突に訪れた。
「キャロライナ、アーヴィンがまた王都に来るぞ。一ヶ月後だ」
「えっ……」
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