壊れた心を癒すには異世界で最強になることです!

Keina

文字の大きさ
11 / 12

11・りうちゃ

しおりを挟む
 レグルス~レグルス~!

 ・・・ん~?なあに~~?

 レグルス~あそぼ~ぞ~!


「ん~~~~~?」
眠い目をこすりぼんやりする目を開ける。

鳥の騒がしい朝の会議の話声がする。
この家は森が近いからか、毎朝鳥の声がうるさいくらいなのだ。

誰かに呼ばれたような気がしたのは、気のせいだろうか?

バタバタバタバタ!
廊下から盛大な足音がする。

「レグちゃん!」
「レグルス!!」

お父さんとお母さんが血相を変えた様子で、現れる。
「な、なに?!」

「「大変!!」」
まったく、こう言う時も息がぴったりだ!

僕はまだ寝ぼけ眼で、その上赤い髪は寝癖ですぴんぴん芸術的な形作っている。
僕だけが状況が分からず、呑気に答える。
「あにかあったの~?」

「りゅ、龍神さまが!」
「ま、窓の外!!」

窓?僕は緩慢な仕草で窓の外に目をやる。
僕の部屋に作られた、木目の可愛らしい小さな窓枠の中いっぱいに、龍神様の目が光っている。

?!?!?!?!?!!!!!

僕は声にならない声を上げた!

「ははは!なかなか気が付かんでな!顕現してしもうた!」

龍神様は面白そうに笑う。

「え?!」
僕は外がどうなって居るのか気になり、窓に駆け寄る。

「りうじんしゃま、ちょっとはなえて!」

「なんじゃなんじゃ?」
龍神様が窓から顔を離すと、小山のようにそびえる龍神様の巨体が、家の外にとぐろを巻いている。

「りうじんしゃま!
おにわでおおきくなったやダメ~!」

「ええ?!
なんでじゃ、なんでじゃ?!」

大きな体をくねくねして慌てる。
相変わらず格好に似合わず可愛い仕草なんだから。

「だいたい!おおきかったや、おうちはいえないよー!」

「あはははは!そうじゃな!」

「ちょと!まてて!
とうしゃ!おしょといこ!」

お父さんは、あ、ああ・・・なんて呆けた顔で言って寝間着姿の僕をひょいと抱えて、外にダッシュする。
お母さんも寝間着姿、お父さんも、朝日の感じから結構な早朝だ。

外に出ると龍神様の大きさがさらに大きく感じた。
僕の家ってこんなに小さかったかな?なんて思ったほどだ。
幸い僕の家の周りは深い森が広がるばかりで、民家は無い。
街中じゃなくて本当に良かったよ。

「りうじんしゃま!あしょびきたの~?」

僕の言葉に龍神様は頭をかがめ答える。
その顔はワクワクしていると形容してまったく間違えではないほどに嬉しそうだ。
「坊に会いたくなったのだ!」

「きのう、あたよ?」

「駄目であったかの?」
龍神様は相変わらずなかわいい仕草で首をかしげる。

「きょお、まちにいくよ!
あしょべない~」

お父さんとお母さんは慌てたようにビクッとする!
「ああ!ああでも!明日にずらしてもいいかもな?ミラ?」
「そ、そうよね?いつでも行けるしね?リゲル?」

「ええ!!やにゃ!きょおいくいったよ!」
今度は僕が膨れる番だ!
ほっぺは不満でパンパンだ!だって楽しみにしてたんだ!異世界初めての街!

「レグルス~」
お父さんは泣きそうだ。

「あはははは!心配するな!
坊!一緒に街に行って遊ぼうぞ!」

皆がその大きさでは無理!と心の中で思った。

「心配するな!ほれ!」

龍神様がそう言うとバシャンと水が弾け、辺りが雨のように水の降る中、白く美しい女性が目の前に現れた。
水のようにすんなりと伸びた虹色に輝く白い髪。
切れ長で美しい金の眼、顔の造作は涼し気で高貴さを讃える美人だ。
すらりと美しく足が伸び、くびれた腰に、形の美しい胸・・・・・裸だ・・・!!

「わ~~~~~~~!」
僕が慌てる。
お父さんはあまりのことに硬直して固まる。
お母さんは、あわあわと大慌てで何とか隠せるものは無いかと探す。
「龍神様裸です!人型で裸はいけません~~~!」

「ん?そうか?
ああ、この大きさでは坊と友達と言いにくいな?」
人間になることでさらに可愛く首をかしげて見せる。
困ったものだよ~~~!

龍神様が指を鳴らした瞬間。
また、パシャンっと音がし、水が弾けるとそこには僕と同い年くらいの小さな女の子が居た。

ほっぺはぷにぷにで、手足も小さい。
顔も幼くなって、金の目は切れ長と言うよりくりくりのまあるい目だ。

 可愛い~!

「とうしゃ!おろして~」

僕はお父さんの腕から降りると、龍神様の目の前に立つ。

「りゅうじんしゃま!かあいい!
ともらち!ぴったり!」

僕が嬉しくてきゃきゃと笑う。
龍神様は目を輝かせ、可愛いほっぺたがピンクに染まる。

「友達!嬉しいぞ!坊!」
そう言って、ワッと抱き着く。

「龍神様は堅苦しいな!りゅうちゃんと呼ぶがいい!許す!」
そう言ってギュッと僕を抱きしめて、頭をぐりぐりする。
龍神様は人型で人と話すことがあまりないのか、ずっと大はしゃぎしてるみたいに嬉しそうだ。

「うん!りうちゃ!ともらち!うれしい!」
もちろん僕だって、異世界初めての友達が同じサイズで遊べるのだ!すっごく嬉しい!

僕たちは顔を見合わせて、照れたみたいにへへへへっと笑いあった。
大好きな友達との楽しい未来が沢山広がった気がして、凄くワクワクする。


・・・・・お父さんとお母さんは、相変わらず固まっていたけれど・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...