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パーティに参加します。
しおりを挟む私のせいでリックス様がご無理をされるのは本意ではありませんのに。
ですが、お義父様とお義母様はリックス様の愛を見守ってやれと言われて何も言えません。
私が出来ることと言えば、マッサージと休憩時の膝枕と書類仕事を少しお手伝いするくらいしか出来ませんでした。
パーティー当日までリックス様は本当に努力され、サイズが小さくて入らなかった服を着られる様になっていました。
「どうだ?変じゃないか?」
「はい、とても良くお似合いです」
思った通り、とても似合っていますわ!
それに、痩せられたことでカッコ良さも増して、おとぎ話の王子様が本からとび出てきたと言われても頷いてしまいそうなほど素敵ですわ。
「ですが…前髪をもう少し短くされても良いのではないでしょうか?」
「……これか」
目元まで伸ばした前髪をつまみながら、悩むような顔をされる。
「短いのは落ち着きませんか?」
前髪を短くすれば、リックス様の綺麗な顔がもっとハッキリと見えるようになると思ったのですが、リックス様が嫌なのでしたら無理強いはできませんわ。
「マルクス嬢は…短い方が好みなのか?」
「好みと言うよりは……短い方が、リックス様のお顔を見ることが出来ますので、そうして頂けると……嬉しい、です」
嘘偽りない言葉ですが、お顔を見せて欲しいと本人を前に言うのはとても気恥しいですわ。
顔も少し熱くなりますし、言葉も上手く出ませんし、鼓動も跳ねておかしくなりそうですわ…。
私の言葉で気分を害してしまったのでしょうか、リックス様は返事をして下さらないので、恥ずかしくて顔が上げられませんわ。
「……俺の顔が見られたら、嬉しい?」
長い沈黙の後、呟くように言われたリックス様の言葉に頷く。
「なんで…?」
頷けばすぐに疑問を返されてしまう。
ですが、この質問に私はすぐには答えられませんでした。
なぜリックス様のお顔を見たいのか。
それは、リックス様のお顔がとても綺麗だから。
ですが、顔だけはとても綺麗だった元婚約者のルーファス様にはこんな事を思った事はありませんでした。
それなら、なぜリックス様にはお顔を見せていただきたいと思ったのでしょうか…。
ルーファス様とリックス様の何が違うのでしょうか…。
「あ、そろそろ時間だな。悪いが先に馬車で待っていてくれ。少しだけ部屋に戻ってする事が出来た」
「あ…はい、分かりました。先に馬車で待っています」
リックス様の声に1度思考を中断しましたが、リックス様を待つ間ずっと頭の中で考えてしまう。
どうして、私はリックス様のお顔を見たいのか…。
「悪い、待たせた」
考えても出ない答えを探していると、リックス様が馬車へと入って来られたので顔をあげる。
「あ…」
そして息をのむ。
「なんだ?やっぱり変だったか?」
短くなっだ前髪を下ろすような仕草をするリックス様に釘付けになる。
なんて、美しい方なのでしょうか。
綺麗な顔立ちをされているとは思っていましたが、前髪を切っただけでここまで変わるとは思っていませんでした。
「とても、素敵ですわ」
他のご令嬢方に見られたくない程に…。
「!」
私は今、なにを考えたのでしょうか…!
他の方にリックス様を見られたくないだなんて、それはまるで、独占欲ではないですか…。
「どうかしたのか?やっぱり、似合ってないのか?」
「いえ…いえ、そんな事はありませんわ。ただ…」
「ただ…?」
「いえ、なんでもありませんわ。それよりも、パーティーに遅れてしまいますから、そろそろ出発いたしませんか?」
「ああ、そうだな。出してくれ」
自分の思考が信じられず、急かすように出発を促してしまう。
動き出した馬車の中で自身の気持ちを落ち着かせることに集中する必要があるわ。
そう思って胸に手を当てて息を吐き出せば、不意にリックス様が口を開く。
「言い忘れていたが……そのドレス、似合ってる」
「!!!」
いつもはそんな事を言わない方なのに、どうして今日は真っ直ぐ私の目を見てそんな事を仰るのですか。
よけいに心臓の音が煩くなって、全然気持ちが落ち着かないじゃないですか。
「あ、ありがとう…ございます」
日が沈みかけていて良かった。
きっと私の顔はトマトよりも赤くなっているでしょうから。
落ち着かない気持ちのまま馬車に揺られて、気付けば王城へと到着していた。
リックス様にエスコートされ、パーティー会場へと足を踏み入れる。
まぁ、どれだけお金を使ったのでしょうか…。
飾られている花々は異国でも珍しいものですし、テーブルにはこの国ではあまりお目にかかることの無い海鮮まで並んでいますわ。
私と婚約解消をしてから婚約パーティーを開くのに3ヶ月以上かかったのは、この花々や食材を集めるためでしたのね。
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