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6、皇帝視点
皇后の部屋から執務室へ戻ってきたが、先程の皇后の変わり様に驚きを隠せない。
「あれは本当にあの皇后か…?」
誰にともなく呟けば、私の補佐兼、乳兄弟のアレックスが答える。
「まぁ、かなり変わってましたけど、皇后陛下だったとは思いますよ」
「だが、あの変わり様はなんだ。全く別人ではないか」
「母さんが良く、子供が産まれると女は変わるって言ってましたよ」
私の乳母であり、アレックスの母のマーガレットが言っていたならそうなのかと納得してしまうが。それにしても変わり過ぎでは無いか?
子供が生まれる前は、鬱陶しい程私に付きまとい、側室であるイザベラに嫌味を言ったり、使用人達にも横柄な態度を取っていたのに。
さっきの姿はなんだ。似合わない厚化粧どころか、化粧すらしておらず、鼻についた香水も付けず、石鹸の匂いをさせていた。
そして極めつけは、私に嫌がらせのように媚びを売ってきた口から、おおよそ令嬢とは思えない言葉を使って説教をしてきたのだ。
「だが、皇后がこんなにも変わっていると誰が予想できる…。ただ、私は自分の子を守ろうとしただけなのに…」
「だとしても、皇后陛下が言ってたことが正論過ぎてルミリオ様の行動は擁護できかねますね~」
私と二人きりだからと、アレックスは軽い口調で話してくるが、アレックスの言っている事が正しいので、悔しいが何も言えなくなる。
「あれは相当怒ってましたよ。最後なんて、出ていけ!って、言ってましたし、謝った方がいいんじゃないですか?」
確かに私にも非はあるが、今までの皇后の姿を見ているので素直に謝罪をしようとは思えない。
「あれもまた、私の気を引こうと言っていたのかも…」
「んな訳ないでしょ!皇后陛下に謝りたくない気持ちは分かりますよ?けど、あれは絶対ルミリオ様が悪かったですって」
「そうだが…」
「ああ言うのは早めに謝っといた方が良いですよ。一応夫婦なんですから」
夫婦と言っても、無理矢理婚姻を結ばされた仲だ。なので向こうが私の事を嫌いになろうと別に構わない。
構わないが…。
どうしてこんなにも、子供のために激怒した皇后の姿が目に焼き付いて離れないのだろうか。
「それにしても、皇后陛下って、結構物知りな方だったんですね。うえるしゅ菌?なんて、俺初めて聞きましたよ」
「そうだな…」
私も初めて聞いた。皇后のことなのでデタラメな事を言っている可能性もあるが、あの言い方に嘘があるようには見えなかった。
「それに、結構子煩悩な方なんですね。この報告書に、皇后が自ら子供の世話を全て見ているって書いてますよ」
「……それは本当か?」
「はい、ご自分で読みますか?」
アレックスに手渡されたマーガレットからの報告書には、確かに皇后が今まで子供の世話を見てきたことが事細かに書かれていた。
子供に吐瀉物をかけられても怒るどころか、子供の服をすぐに着替えさせ、心配しながら抱き上げてずっと背中を撫でていた、だと?
ありえない。自分の事が最優先の皇后がそんなことをするはずがない。
「あの~皇后陛下の事が気になるのは分かるんですけど、それより先に、溜まった書類を片付けてもらえませんか」
子供が産まれてからの報告書を端から読み進めていると、アレックスから机の上に積み重ねられた書類を指さされる。
「わかっている…」
皇后の事は気になるが、それはこの書類を処理してからだ。私の子供に危害を加えなければ、マーガレットもいる事だし、放っておいても良いだろう。
それに、今まで鬱陶しい程に追いかけていた人物が居なくなって逆に良かったでは無いか。
頭を悩ませる皇后が大人しくなれば、私も仕事に専念出来るーーー。
「あの、書類を片付けて欲しいって言ったのに、なんでまた皇后陛下の部屋の前まで来てるんですか!」
気付けば、私は翌日に皇后の部屋を訪ねていた。
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