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17、楽しい時間だったのに
何故ここに皇帝が…。
いや、城の中なんだから皇帝が居てもおかしくないけど、広い城内で皇帝と遭遇するなんて、なんて確率なんだろう…。
数ヶ月ぶりの遭遇に、無意識に警戒してしまうけど、礼儀として挨拶はしておかないと…。
「皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「………はい」
私の挨拶する姿を見ずに皇帝は返信をする。まぁ、無視されなかっただけ良いとしよう。
私の挨拶以降、喋ろうとも去ろうともしない皇帝に、どうしたものかと考えていると、リアム様が私の前に出て皇帝に話しかける。
「今、ルビア様とアイリと一緒に散歩をさせていただいていたところなのですが、父上はどうされたのですか?」
「私も…散歩、の様なものだ。今、帰るところか?」
「はい、そうです」
前も思ったけど、親子の会話と言うよりは、上司と部下のようなやり取りにしか見えない。皇帝と次期皇帝なら、このくらいの距離感が普通なのかな。
父親と話しているはずなのに、ずっとアルカイックスマイルだ。私といる時は無邪気に笑ったり拗ねたり、コロコロ表情が変わるのに…。
アイリも皇帝に対してはこんな風になっちゃうのかな…。
一応毎日マーガレット達が皇帝に会わせてあげているから人見知りはしないと思うけど、私が皇帝に警戒心出しまくりだから、アイリも皇帝に懐かない可能性はあるな。
そうしたら、こんな風にアイリも父親とは距離が出来るのかな。でも、リアム様の母親のイザベラ様は皇帝と仲が良いはずなのに、どうしてだ?
そういえば、リアム様からはメリーの話はよく聞くのに、イザベラ様の話はあまり聞いたことがない。授業が終わってからすぐに私の所へ来てくれてるけど、今思えば母親の所へ何故行かないのだろう。
私としては、可愛いリアム様が会いに来てくれるのは大歓迎だし、アイリと戯れている姿は癒しだから嬉しいけど…。
リアム様はイザベラ様に対しても丁寧な口調で話しているし…。もしかして、リアム様とイザベラ様の親子仲はーー。
「今からルビア様と一緒に勉強させて頂くので、私はこれで失礼致します。行こうルビア様」
「え?ええ、そうね。それでは、失礼致します」
いつの間にか皇帝との話を終わらせていたリアム様が、いつも通りにこやかに話しかけてくれる。
「ルビア様、もうすぐお茶の時間だから、おやつ食べてもいい?」
「いいよ~。そうだ、昨日ミリアナがマフィンを買ってきてくれたから、それを食べようか」
「うん!食べる!」
皇帝との話は終わったので、リアム様はいつも通りの子供らしい姿に戻り、おやつの話になる。いつもはお茶の時間前に散歩を終わらせてしまうので、実はリアム様とお茶をするのは今日が初めてだ。
勉強や宿題で忙しいリアム様に気を使ってお茶の時間は誘ったことがなかったけど、今日は一緒に勉強するという大義名分があるので遠慮なく一緒にお茶が出来る。
リアム様とお茶が出来ることにワクワクしながら歩き始めると、数歩も歩かないうちに皇帝に呼び止められる。
「少し待て、リアム」
「はい、なんでしょう?」
全く、空気の読めない男だ。私たちの間に流れているこの楽しげな空気が感じられないのか。それに、アイリのオムツも心配だから、早く中へと入りたいのに。
「その…皇后からなにかされていないか?」
またか…また私を疑ってそんなことを言ってきてるのか。少なくとも、貴方といる時よりも私といる時の方がリアム様は楽しそうに見えるんですけど?
確かに前の私の態度はお世辞にも褒められたものじゃないし、その事を心配してるのは分かるけど、本人がいる前でわざわざ言わなくてもいいんじゃないかな。
それにリアム様は賢い子だから、私がリアム様にとって危険な存在だと思ったら近寄って来ないよ。子供って結構そういう所敏感だから、そこまで心配しなくても大丈夫だと思うんだけど…。リアム様を大切にしているメリーもちゃんと一緒に居るんだし。
なんというか…前回と同じことを言う皇帝に、怒りを通り越して呆れてしまう。
「ルビア様には大変良くして頂いておりますので、ご心配なさらないでください」
ハッキリとそう言い切るリアム様に、皇帝はピクリと眉を動かす。
「先程から気になっていたが、皇后の事を名前で呼んでいるのか?」
「はい、お許し頂けましたので。ね、ルビア様」
「うん。リアム様に呼んでもらえるならいつでも大歓迎だよ」
「えへへ」
頭を撫でれば嬉しそうに照れるリアム様がたまらん!本当に素直で可愛い子だなぁ。お願いだから皇帝なんかに似ないでほしい。
「皇后、少しいいですか」
「はい、なんでしょうか?」
今はリアム様の頭を撫でるのに忙しいんですけど。見て分からないんですか?そして何故また不機嫌そうなんですか?私は何もしてないはずなんですけど?
不機嫌そうに言われたので、こちらも少し不機嫌そうに返せば、気に食わなかったのか眉間のシワが深くなった。だけど、そんなこと知らないし、どうでもいい。
「あの、用がないのでしたらこれで失礼致します」
「いえ、あります。リアムに勉強を教えるというのは本当ですか」
いや、教えるじゃなくて、一緒に勉強するってリアム様も言っていたと思うんですけど。
「まさか、皇后の仕事も全う出来ないほど勉学が苦手な貴方がリアムに勉強を教えられると?」
うわー、久しぶりに聞いたよ、この皇帝の嫌味な言い方。流石に学がなかったとしても、小学校低学年くらいの勉強くらい教えれますけど?
それに、前の私が勉強苦手だったかどうかは知らないけど、今の私は大学までは一応出てるし、それなりに勉強は出来てた方だから、今のリアム様に教えるくらい難しいことではないんですけど。
「リアムに間違った知識を教えられては困るのですが?」
「そうですね。ですが、間違っていなければ問題は無いのでは無いでしょう?」
「貴女にそれが出来るとでも?」
なんだか、わざと人を怒らせる言い方をしてるのかなって思うくらい癪に障る言い方をしてくるな。これがもし産後すぐだったら確実にキレてたわ。
けど、今はアイリも夜に寝る時間が増えて、お世話も大分慣れたから、精神的にも体力的にも前よりは余裕がある。だから、こんな言い方をされても聞き流せるようになった。
「どうでしょうね。では、私達はこれで失礼致します」
流せるとはいえ、やっぱり嫌味な言い方をこれ以上聞きたくないし、リアム様とのお茶の時間が短くなるのも嫌なので早々に話を切り上げて立ち去ろう。
「まだ話は終わっていませんが?」
「その話はする意味があるのですか?何を言ったとしても、陛下は私の事を疑い、否定するだけでは無いのですか?」
「いや、そんなことは…」
あると思うんですが。口ごもっているのがその証拠じゃないんですか?
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