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49、少し、話をしませんか?
しおりを挟む信じてくれる皇帝に、もう一度頭を下げる。
「本当にありがとうございます…。今まで、私が陛下に対して不快な思いを抱かせてしまう事が多々あったにもかかわらず、私を信じてくださって…」
感謝の気持ちを伝えれば、何故か皇帝は少し気まずそうに頬をかく。
「それは…その…。以前の貴女の言動については、私の言動にも非はあったと思うので、あれは貴女だけが悪いわけではないと思います」
「ですが、どんな理由であれ、陛下に対してくすり…」
「オホン…その話については、誰も居ない場所で話しませんか?その…あまり人に聞かれて良い話でもないですし…それに、以前の事については、私達は話し合う必要があると思うので。今度ゆっくり話しましょう」
確かに、今までの事については簡単に話をして終われるようなことでも無いので、ここは素直に頷く。
「分かりました。お気遣い感謝致します」
「いえ、私も貴女とは、1度しっかりと話し合う必要があると思っていましたので…。それより、もうそろそろ部屋に着いてしまいますね」
「そう、ですね。ここまで送っていただきありがとうございます」
もう数歩行けば部屋の前という所で皇帝にお礼を伝えるが、ふと、皇帝は私に対して聞きたいことがあると言っていた事を思い出す。
「あの、陛下」
「なんですか?」
「私に何か聞きたいことがあると言っていませんでしたか?」
「はい。ですが、もう夜も遅いですし、皇后も今日は疲れたでしょうから、また次の機会にでも聞かせていただきます」
私を気遣ってそう言ってくれる。だけど、今日はリアム様の事や、イザベラ様達の会話で眠れそうにない。
「あの…。ご迷惑でなければ、私の部屋で少し話しませんか?」
「…ですが、皇后の睡眠時間が減ってしまうのではありませんか?」
「今日は…眠れそうに無いので、話し相手になって頂ければ、私としては嬉しいのですが…」
「それならば…少しだけ、失礼します」
そう言って皇帝は遠慮がちに部屋に入ってきたけど、眠るアイリを見て少しだけ微笑む。
「よく寝ていますね」
そっとアイリの頬を撫でる皇帝の顔は、子供を愛する父親そのものだった。
最近の彼は、リアム様に対してもよくこういう表情をする。初めて会った時は、赤ちゃんの抱き方も、子供とどう接すれば良いのかさえ知らずにいたのに。今ではあの時とは違い、自然に子供にと触れ合えるようになっている。
「今日はいつもと違って沢山の方に会ったので、さっきまでは興奮して夜泣きをしていたのですが、外の空気を吸って落ち着いたみたいです」
「そうですか。アイリも今日は疲れたでしょうし、ゆっくりと眠ってほしいですね」
「そうですね」
アイリの寝顔を2人で見てから、マーガレット達にアイリをお願いして、室内のドアで繋がっている隣の部屋へと移動する。
「すいません。お茶くらいしかお出し出来るものがなくて…」
「いえ、お気遣いなく。それよりも、皇后自ら入れていただけるとは思いませんでした」
最近はリアム様が来られないかったため、茶請けを買っていなかったので出せるものが何も無い。だけど、皇帝はそんなことよりも、私が紅茶を入れることに驚いているようだ。
「あの3人にはアイリをお願いしているので、お茶くらいは私が入れます。ただ、美味しくなくても、目をつぶってもらえると嬉しいです」
冗談っぽく笑えば、皇帝も少しだけ口元を緩める。
「貴女に入れていただいたお茶ですので、どんな味だろうと残すわけにはいきませんよ」
「そんな!無理して飲んで頂かなくても大丈夫ですよ!お口に合わなければ残してくださいね!」
前世で紅茶を入れたりはしていたけど、高貴な方が飲んで満足してもらえるようなものではないはずだ。今更ながら、皇帝にお茶を入れた事を後悔する。
「あの、今からでも、ミリアナに入れ直してもらいましょうか」
「いえ、せっかく貴女に入れて頂いたのですから、そんな必要はありません」
そう言って、皇帝は紅茶を一口口に入れる。
「美味しいですよ」
「そう…ですか?それなら、良かったです」
気を遣われている気がしないでもないけど、皇帝がこう言うのなら信じるしかない。それに、ここに来てもらったのは、紅茶の話をする為でもないので、一旦紅茶については置いておこう。
「…それで、私に聞きたい事というのは、一体なんでしょうか?」
本題を切り出せば、皇帝は少し躊躇うように口を開いては閉じる。それを数回繰り返してから、決心したように話し始める。
「パーティで、貴女がアイリを連れて一時退席された時なのですが…なにか、ありましたか?」
「なにか…とは?」
もしかして、両親に会っていた事がバレた…?
私と両親が会えないようにしているのはイザベラ様なのだろうと思ってはいるけど、皇帝もイザベラ様に言いくるめられて、私と両親が会うことに否定的だったらどうしよう。
素直に、両親と会って話をしていた事を伝えても良いのかな…?
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