嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ

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79、リアム…

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リアム様にイザベラ様のことを話してもいいか、という質問に対しての返事は、皇帝自らがリアム様に話すと言うものだった。


「父上が僕と?」
「うん。とても大切なお話があるの」
「ルビア様はそれが何か知ってるの?」
「うん…」
「…わかった。じゃあ、父上の所へ行ってくるね」


リアム様にイザベラ様の事を話した方が良いと思う反面、今になって、まだ幼い子供に事実を話してもいいのかを悩んでしまう。


「リアム様」
「なぁに?」
「………ううん、なんでもない。気を付けて行ってらっしゃい」
「うん、いってきます!アイリもいい子で待っててね」


元気に返事をして出ていくリアム様の後ろ姿をアイリと一緒に見送る。


リアム様が戻ってくるまで、心を落ち着かせるためにアイリを抱きしめたり撫でたりを繰り返していると、1時間が経過しようという頃にリアム様が戻ってきた。


「ただいまっ」
「うわっ!おかえりなさい。どうしたの?」


床で寝返りを繰り返しているアイリの近くに座っていると、部屋に戻ってきたリアム様が挨拶とともに背中に抱きついてきた。


皇帝と話して落ち込んでいるのかな…。


やっぱり、母親が処刑されるのを知って悲しんでいるのかな…。


肩に顔を埋めたままじっとしているリアム様が心配で、頭に手を回して撫でてみる。


「嫌な話だった?」


そう聞けば、首だけを横に振る。


「イザベラ様の話を聞いたの?」


今度は縦に振る。


「やっぱり、母上と会えなくなるのは辛いよね」


そういえば、ぎゅっと強く抱きしめてくる。


「あのね…母上が悪い事をしていなくなるって聞いて、ここがちょっと痛くなった」


そう言って胸の辺りに手を持っていく。


「母上が居なくなるの悲しいよね…」
「うん……。だけど、父上がね」
「うん」
「僕が、これからルビア様の子供になる、って言った時の方が嬉しかった…」


皇帝がそんな話までしたんだ。リアム様と、皇帝にその話をするって約束してたから良いけど…その話をするなら一言言ってくれても良かったのに。


「父上が、ルビア様に良いか聞いてから正式に発表するって言ってたけど、ルビア様が良いって言ってたから、父上に良いって言ったんだ」
「そっかぁ。私の代わりに言ってくれたんだね」


それなら、皇帝から何も言われなかったのは仕方ない。だけど、やっぱり直接言ってもらえなかったのは寂しい、と思うのは私のわがままなのかな…。


「ルビア様…」
「なぁに?」
「母様、って呼んでも良い…?」
「良いよ」


そう言えば、未だに肩に顔を埋めたままのリアム様が小さく、だけどはっきりと聞こえる声で呼んでくれた。


「お母様…」
「なぁに、リアム」


そう答えれば、私に抱きつく腕の力が強くなる。


「っ、おかあ、さまっ、」


今度は涙ぐみながら大きな声で呼んでくれる。


「どうしたの、リアム」
「っ、お、かあ、さ、まっ、ぐず、」
「大丈夫だよ。お母様はここにいるよ」
「うっ、ぅぅ…おかぁ、さぁまぁあ」


泣きながら何度もお母様と呼んでくれるリアムに返事を返していると、いつの間にか背中にかかる重みが増したのを感じる。


後ろを振り向けば、泣き疲れて眠ってしまったリアムがいた。


「余程嬉しかったのですね」


リアムが部屋に入ってきてから空気を読んでアイリを抱っこしてくれていたマーガレットが、リアムの顔を見て微笑ましそうに笑う。


「そう思ってくれてるなら私も嬉しいよ」
「リアム様はルビア様の事を大変慕われていましたもの、本当の親子になれると知って嬉しかったに違いありません」


そう言いながらアイリを私に渡し、リアムをベッドに運ぶようにジェーンとミリアナに指示を出してくれる。


「着替えを用意致しますね。そのままではアイリ様を抱きにくいでしょうから」
「うん、ありがとう」


私の肩が濡れているのを見て、最近横抱きを拒否するアイリの事も考えて着替えを用意してくれるマーガレットは流石だ。乳母としても、メイドとしても、人としても完璧だ。


今のマーガレットを見れば、あの夜に大激怒していたのが夢だったんじゃないかと思ってしまう。


だけど、あんな内容を知ってしまえば、怒るのも無理はないよね。


「どうかされましたか?」
「あ、ううん。いつもマーガレットにはお世話になりっぱなしだなって思っただけだよ」
「そんな…私は大したことはしていません。むしろ、もう少し私達に任せて頂き、その間にルビア様がお休みになられると嬉しいと思っているほどですので」


朗らかに笑うマーガレットはいつも通りに見える。だけど、気の所為かもしれないけど、最近前にも増して仕事に熱心な気が去る。


「マーガレットは疲れてないの?」
「いいえ、これくらいなんともありません」
「そう…。だけど、無理はしないでね」


そう言えば、一瞬驚いた顔をしたと思ったら、すぐにいつもの優しい笑顔になりマーガレットが頭を下げる。


「…お気遣い、ありがとうございます」


マーガレットの表情に、やっぱり無理していたんだと確信する。


「イザベラ様からあんな話を聞いたから、気持ちが落ち着かなくなるのもわかるよ。だけど、たまにはゆっくり休んでね」
「はい…。ありがとうございます」
「もし、なにかしていないと不安なら……今すぐは難しいけど、ピクニックとか行ってみない?」
「ピクニック、ですか?」


私の提案が予想だにしないものだったのか、マーガレットは珍しく目を丸くして驚いている。


「息子も増えたから、お祝いに楽しい事をしたいなって思ったの。それに、庭は綺麗だし、外で食べるご飯も気分転換になっていいと思うんだ」
「そうかもしれませんが、どうして私も…?」
「マーガレットも大切な私の家族だって思ってるから、一緒に参加してくれたら嬉しいな。もちろん、ジェーンとミリアナもね」


そういえば、マーガレットが嬉しそうに笑ってくれる。


「私達のことをその様に思って下さりありがとうございます。その際は、是非参加させて下さい」
「もちろん。早くその日が来るように、私も仕事頑張るね」


皇帝が今日から仕事に復帰したとはいえ、城内の事は私の管轄なので気合いを入れて仕事をしないといけない。そろそろ休憩時間も終わるし、仕事に戻らないと。


「アイリ~寂しいけど、ママはまた仕事に行ってくるね。じゃあ、あとはよろしくね」
「かしこまりました。ルビア様もご無理なされぬよう」
「うん、ありがとう」



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