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part 15-8
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「私ども藤堂としては、清水さんとは関わりたくないという1点だけが希望なのですが聞き入れて頂けませんか?もちろん紗栄子も含めてです。いかがでしょうか?」
親父の言葉からしばらくして耕介が口を開いた。
「…あんな紗栄子に未練があるわけではない。でも紗…」
「あんな紗栄子とは、どんな紗栄子でしょう?」
俺のセリフを親父が口にする。
「いつも不機嫌な顔で…」
「ほう、楽しいことがなかったんでしょうな。それから?」
「つまらない口ごたえをす…」
「理不尽なことを言われれば誰でもするでしょうな。それから?」
「…婚家の親より、自分の母親のいるホスピス、ホス…」
「時間に限りあると分かっていれば余計に少しでも長く一緒に過ごしたいと思うものでしょうな。それから?」
親父が聞き返す度にうつむいていく耕介の髪をグイッと空雅が後ろから鷲掴みにした。
「こうしてお前は紗栄ちゃんを階段から引きずり落とした。そんな相手に誰が愛想よく出来る?」
空雅はそのまま耕介の頭を畳に打ち付ける勢いで前へ髪を引っ張った。ゴンッ…
「空雅」
「はい、若」
「手を出すのはそこまでだ、働けない体にはしたくない」
「承知」
俺が言うと、さっきよりも二歩下がって空雅が正座した。
「清水さん、いかがでしょうか?今後、紗栄子とも私達とも無縁に生きていって下さるとお約束いただけるなら、仕事をご紹介しますが?」
「あんたらヤクザの言うことは信用出来ないし、ロクな仕事じゃないだろ?」
「親父に“あんた”は控えてください、清水サン」
空雅の手を止めておいてよかった、口で済んだ。
「空雅」
「はい、親父」
「よそ者を正す必要はない。こうした態度の者が出来る仕事を用意するまでだ。うちも紹介者として恥をかきたくはないからな」
「はい」
親父は空雅だけでなく、他の組員の顔も見渡してから
「ロクな仕事じゃないとおっしゃいましたが、お二人は現住所が坂戸組にあり、前職も坂戸組の関係会社ですから就職において一般人とみなされませんよ。そこはお分かりですか?」
ゆっくりと清水親子を見た。
親父の言葉からしばらくして耕介が口を開いた。
「…あんな紗栄子に未練があるわけではない。でも紗…」
「あんな紗栄子とは、どんな紗栄子でしょう?」
俺のセリフを親父が口にする。
「いつも不機嫌な顔で…」
「ほう、楽しいことがなかったんでしょうな。それから?」
「つまらない口ごたえをす…」
「理不尽なことを言われれば誰でもするでしょうな。それから?」
「…婚家の親より、自分の母親のいるホスピス、ホス…」
「時間に限りあると分かっていれば余計に少しでも長く一緒に過ごしたいと思うものでしょうな。それから?」
親父が聞き返す度にうつむいていく耕介の髪をグイッと空雅が後ろから鷲掴みにした。
「こうしてお前は紗栄ちゃんを階段から引きずり落とした。そんな相手に誰が愛想よく出来る?」
空雅はそのまま耕介の頭を畳に打ち付ける勢いで前へ髪を引っ張った。ゴンッ…
「空雅」
「はい、若」
「手を出すのはそこまでだ、働けない体にはしたくない」
「承知」
俺が言うと、さっきよりも二歩下がって空雅が正座した。
「清水さん、いかがでしょうか?今後、紗栄子とも私達とも無縁に生きていって下さるとお約束いただけるなら、仕事をご紹介しますが?」
「あんたらヤクザの言うことは信用出来ないし、ロクな仕事じゃないだろ?」
「親父に“あんた”は控えてください、清水サン」
空雅の手を止めておいてよかった、口で済んだ。
「空雅」
「はい、親父」
「よそ者を正す必要はない。こうした態度の者が出来る仕事を用意するまでだ。うちも紹介者として恥をかきたくはないからな」
「はい」
親父は空雅だけでなく、他の組員の顔も見渡してから
「ロクな仕事じゃないとおっしゃいましたが、お二人は現住所が坂戸組にあり、前職も坂戸組の関係会社ですから就職において一般人とみなされませんよ。そこはお分かりですか?」
ゆっくりと清水親子を見た。
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